相続対策は誰のためのもの?子を想った相続対策とは

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自分でやってみる相続対策」セミナーに参加して

今年5月に某証券会社で行った『自分でやってみる相続対策』セミナーに参加したAさん(杉並区在住の男性75歳)からのご相談。

セミナーから2ヶ月後の7月上旬、証券会社の担当者を通じて、Aさんから個別相談を申し込みたいとの連絡があった。どうやらセミナーを聞いた後、実際に自分で相続対策をやってみて相談したいことができたようだ。

面談初日、Aさんは挨拶もそこそこに、かばんから書類をどさっと取り出し、机の上に置いた。「この間のセミナーに参加してよかったよ。実際に自分で相続対策を考えてみて、分かったこと、分からないことがハッキリしたよ!」とうれしい言葉。そして「実は今まで相続対策関連の書籍を読み漁り、様々なセミナーに参加して、節税や遺言といった対策の知識はついたけど、それらが自分たち家族にとって良いのかわからなくて。どこから手をつけるべきか途方に暮れていたんだ」と、パラパラと書類をめくりながら話し始めた。

自ら気づいた相続対策のポイント

話を聞くとAさんは、セミナー受講後すぐに自分の資産を把握するために必要な書類の収集、整理を行ったとのこと。

【Aさんが行った資産の現状把握の一例】
不動産:登記簿謄本や名寄せ帳(所有不動産が一覧表になっているもの)の取得等
生命保険:保険内容の確認等 
預貯金:通帳の残高確認等 
金融資産:株や債券の金額確認等

Aさんは「少し手間取ったけど、財産の確認をすることで頭の中が整理されて、相続について考えがまとまってきたよ。松尾さんがセミナーで言っていた“相続対策するうえで、まず始めにすべきことは、自分のことをちゃんと知ること”が大切なんだね。やってみてよくわかったよ!今まで何でやらなかったのか…相続税対策、相続税対策という言葉に気を取られ過ぎたのかな。」と、資産把握をするだけでも気持ちや意識が変わり、漠然としていた相続について考え出すキッカケになったようだ。

家族への想いが相続対策の柱になる

肝心のAさんからの相談内容は、次のとおり。
① 相続させる資産について、今後問題となる部分があるのかどうか知りたい。
② 自分(Aさん)が考えた分割や納税方法(相続対策)について意見が欲しい。
③ 実行するには次に何をすればいいのかアドバイスがほしい。
というものだった。
Aさんが自分の資産などのことを纏めたという資料を手渡され、目を通した。

鉛筆で書いては消して、を繰り返した跡が残っていて、悩み考え抜いてきたことを感じさせる資料だった。
Aさんの声のトーンが急に下がり「一番の気がかりは、次男の今後の生活です。生まれつき体が弱く働けない状態で、私の死後は長男に任せるしかありません。この対策案はどうでしょうか…」と不安そうに話した(上記『○遺産の分け方』参照)。私は「Aさんがお子様のことを想って考えた案、気持ちも伝わる素敵な案だと思います。」と伝えた。加えて「しかし、気になることが3つあります。」

① 100坪の自宅、固定資産税負担や植栽管理など含め維持し続けられるのかどうか
② 今後の修繕補修費増によるアパートの維持・管理ができるのかどうか
③ 納税のため自宅かアパートを手放した後、次男の居所・生活費等はどう確保するのか
さらに、この対策案についてお子様達がどう思うか、次男さんにも万一のことを考え安定収益源は必要ではないかなどを伝えした。

Aさんは「アパート収入で、次男の生活費などやりくりできると思っていました。しかし、修繕や賃料の下落も考慮すると、管理が大変ではなか?息子たちはどう考えるか?確かに気になる。」と腕組みをして考え込み始めた。「Aさん、対策案は色々考えられますが、まずはお子様たちと話してみませんか?Aさんの気持ちと考えた対策案を伝えて、皆の気持ちを聞きましょう。」Aさんは「そうですね、相続する子供たちの気持ち、意見を聞くこと、それを反映させることも大事ですね!」と笑顔が戻った。

Aさんはお子様たちと話すことを決心し、後日その結果を連絡してもらえることになった。

相続対策は残す側、残される側、どちらのためのものなのか?

個別相談から2週間後、Aさんから連絡がきた。「子供たちへ自分の想いや対策案等を伝えて、そして子供たちの考えも聞くことができました。ありがとうございます。」どうやら長男・次男と長男の奥様も同席してもらって話をしたようだ。
「自宅やアパートについては、松尾さんの指摘の通り、今後維持していくのは難しい、私(父)が生きているうちに何とかしてほしいという意見でした。長男からは、『親父、考えてくれて、話してくれてありがとう。相続税対策も大事だけど、弟のことを第一に考えよう』と言われました。」と声を少し震わせていた。

続けて「相続対策は残す側の私が考えるべきだとずっと思い込んでいました。プロサーチさんのセミナーを聞いて、相続対策とは誰のためのものなのか、誰と進めるべきなのかを考えさせられました。それを気付かせてくれてありがとう、感謝しています。そこで松尾さんに相談なのですが、ここから先の相続対策について手伝ってもらえませんか?子供たちも是非にと言っています。」うれしい言葉を頂戴し、もちろん快諾した。

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス

個別相談のとき、「相続で、良い節税方法はないか?争族にならないようにするにはどうしたらいいか?」など手法に関する相談を多くいただきます。相続対策手法に興味を持ち調べることは大切なことだと思いますが、夢中になりすぎて「なぜ、その対策をするのか?誰のためにするのか?」という根本的なことが頭の中から抜けてしまうことも見受けられます。「何をしていいのか分からない!家族のためになっているのか?」という悩みや不安も、実は良く自分や家族のことを振り返り考えてみると案外とそこに答えがあるのだと思います。相続対策を考える時、対策を進めている最中にも、頭の中(できれば家族共通認識として)『相続の目標(ゴール)』を意識しておくことが、相続成功の大きなポイントになると思います。(記:松尾企晴)

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