新たな相続対策の選択肢「家族信託」

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新たな相続対策の選択肢「家族信託」写真

家族信託シンポジウム開催!

2014年10月21日に「家族信託を組成する実務フローとビジネスモデル」というタイトルで専門家向けに家族信託普及協会主催のシンポジウムを開催した。
(主催は弊社代表の芳屋が代表理事を務める一般社団法人家族信託普及協会)
費用をかけて広告を大々的に行ったわけでもないのに、参加者はなんと460名となり、いかに「家族信託」が今注目されているかを物語っている。

そこで今回のメルマガでは盛り上がりを見せる「家族信託」について改めてご紹介する。

現在主流の相続対策はというと、
 1.節税対策(相続税額を減らすこと)
 2.納税対策(相続税を納めるお金等を準備すること)
 3.争族対策(残された家族の関係を壊さないように分割を考えること)
上記の3つの対策だと思い浮かぶ人も多いのではないか?

私は「家族信託」の出現により、上記の3つの対策に加え「隠居対策(後継者を育てること)」という対策方法も、新たにできるのではないかと思う。

相続発生前に認知症や病気で意思判断ができなくなるというリスク

「親父が相続対策に前向きになってくれない」と相談に来られたAさん。相談を受けた後、Aさんの承諾を得て、後日お父さんに直接話を伺った。お父さんは、
「相続対策をしなければいけないのは解ってはいるが・・何から手を付けたらいいかわからないし、あまり早いうちから子供たちにお金や資産を渡すとろくなことがないからな。」と話していた。
実は相談を受けていると、このお父さんのような想いを持っている親が少なくない。

では、もしも何も対策をしない状態で突然相続が発生したら、残された相続人はいったいどうなってしまうのか?

・突然、築年数の古いアパートや、管理の大変な不動産のオーナーになる
・突然、親の会社の大株主になる
・相続税がいくらかかるのかもわからない。どうしていいのかもわからない・・・。

突然相続が発生し、このような立場になった場合、残された家族は対応することができるのだろうか?

ただ、相続が起きればまだ資産の移転を含めて手も打てる。しかし、認知症や病気、事故で資産の所有者が意思判断能力を喪失すると、相続対策はもちろん積極的な資産活用や組換えなど何も出来なくなってしまい、それこそ家族の負担は計り知れない。

では、認知症などで意思判断能力が無くなった状態になり、その後10年間生き続けたらどうなるか。次の行為は実際どうなると思うか?

・預貯金の管理・解約
・不動産の賃貸や売買。もちろん資産の組換え
・賃貸物件の大規模修繕や建替えや売却
・遺言書を書く
・株の売買
・保険の加入
上記の行為は原則全て行うことが出来なくなる。

必要に迫られ「成年後見制度」を利用すると、生活費の捻出のためにやむを得ない場合には自宅などを売ることはできることもあるが、積極的な資産活用や相続対策を目的とする不動産などの資産を売ることは出来ない。

つまり、いくら素晴らしい相続対策を提案しても、本人が意思判断できない状態になったらすべてが「絵にかいた餅」になり、家族は指を咥えて見守るしかない。

こんなに大変な事態になるにも関わらず、一般の方はもちろんのこと、資産や相続のプロと言われている専門家も、認知症や病気などの相続前の大きなリスクに対して、対策または提案している人が少ないことに驚く。

隠居しながら適正に資産を守る仕組み「家族信託」

ではどうすればいいのか?家族のために何をすればいいのか。

子供にまだお金や資産は渡したくはないけど、その資産を守っていく、育てていく方法を自分が生きているうちに家族に託したい、自分に意思判断能力が無くなった場合でも安心して家族が生活し、適正に自分の資産の管理ができるようになってもらいたい。その願いを叶えてくれる方法の一つが「家族信託」なのだ!

今回の相談にあてはめると、資産やその資産による収入はお父さんのままで、資産の管理や運用はAさんが行う。Aさんはお父さんが元気なうちは、お父さんの意見を聴きながら運営できるので安心感もある。またお父さんが意思判断できない状況になっても資産管理や継続的な相続対策が行える。さらに将来、相続が起きてもAさんは自ら資産の管理や運用を行っていける自信がつくことになるだろう。お父さんは資産が手元から無くなることもなく、自分が資産を託した人に元気なうちに自分の経験を伝えることができる。そしてお父さんは資産の管理を信頼する子供に全て任せて、残りの人生は悠々自適な生活を送れることになるかもしれない。

これが「隠居」の極意。歴史を振り返ってもテレビで話題の黒田官兵衛や徳川家康は自分が元気なうちに家督を子供に相続し、隠居しながら世の中を眺めている。そして、子供が間違った道に進みそうなときは修正し、正す。これが永く家を守る秘訣になっている。

自分の資産を次の世代へ渡すことに抵抗を感じている方、築年数の古い不動産をお持ちの方、自分はまだ元気だから相続対策をしなくても大丈夫だろうと思われている方。次の世代の勉強のため、安心安全な家の繁栄と思い「家族信託」を使ってみるものも選択肢の一つかもしれない。
また目の前にそういったお客様がいる専門家の方は、ぜひ一度お客様に「家族信託」のお話をされてみてはどうだろう。

専門家向け 家族信託普及協会のご案内はこちら
(家族信託普及協会 : http://kazokushintaku.org/

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス

まだまだ世の中に普及していない「家族信託」ですが、これからの相続対策では重要な選択肢の一つとなることでしょう。しかしながら、家族信託の内容をしっかりと理解し、実行出来る専門家はまだ日本全国でも数十人程度です。専門家の皆様においても今後、相続対策を提案するにあたっては「家族信託」という制度を知っているか知らないかでは大きな差が出てくるでしょう。当社では家族信託普及協会を通じて、家族信託という制度を正しく広めていくお手伝いもしており、興味をお持ちの方はぜひご相談ください。また、被相続人となる方が認知症等により意思能力が無くなってしまうと家族信託の契約すら出来ない状態になります。相続は人生の大きなライフイベントの一つです。何事も早めの対策が一番のポイントとなるのではないでしょうか。(記:中田千太郎)

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