空家相談急増!相談のきっかけとなった『空家対策法』とは

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今回のお客様は、生命保険会社の営業の方からのご紹介で、お母さんから相続した空家を今後どうしたらいいか迷っているとのことで相談に来られた。

 

 

【家族構成】

・Aさん(70)、長女(47) ※ご主人は2年前に他界、長女は結婚して持ち家あり

 

【保有資産】

・自宅(Aさんが居住中)
・空家の戸建(10年前に母親の相続で取得)※木造築59年
 現在は空家だが、Aさんが小さいころ住んでいた実家で、思い入れがある様子

 

最近、当社ではこのような『相続した実家(空家)の持ち方』についての相談が増えている。というのも、今年5月に【空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、「空家対策法」)】が施行され、テレビやセミナー等で空家関連のニュースを目にする機会が増えたことが要因の一つかもしれない。

 

今回のお客様もニュースを見てご相談に来られたようだ。

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空家対策法(概略)とは?

この空家対策法で、主に注目すべきは「地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす【特定空家等】は、固定資産税・都市計画税の軽減措置から除外する」という点にある。現在の固定資産税・都市計画税の軽減措置の内容は、以下の通りだ。

 

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つまり、200㎡以下の土地だったら、住宅が建っていると固定資産税は1/6(都市計画税は1/3)になる。これが特定空家に該当すると軽減措置適用から除外されてしまうというのだ。ちなみに特定空家等とは住環境や周辺住民などに悪影響を及ぼしかねない住宅をいう。

 

地価の高い地域では、未利用の建物だとしても、解体してしまうと上記の軽減措置を適用できなくなるため、たとえ管理状況の悪い空家だとしても、そのまま放置されてきたのが現状だ。

 

そこに今回メスが入った。

 

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 ※写真はイメージです。

 

 

特定空家等に該当したのち、管轄行政から家屋の撤去や修繕などの指導を受けたにも関わらず改善しない場合、【勧告】が出される。この勧告が出されると、固定資産税の優遇措置が適用されなくなり、さらにその命令に従わなかった場合、50万円以下の過料や、強制的に撤去(行政代執行)されてしまう。もちろん解体費等は所有者の負担だ。

 

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空家問題は、他人ごとではない身近な問題

Aさん「母から相続した実家について、どうしようか迷っていまして…。両親との思い出の詰まった場所だから、できれば娘に残してあげたい。でも、ニュースでは空家にしておくと固定資産税が高くなるという話も聞いたし、もし人に貸すとなれば、リフォームなどでお金がかかる…。ずっと考えてきたけど、答えが出なくて。」とため息をつきながらAさんは語った。

 

 

そこでまずは、この家を活用した場合の活用方法に関する簡易レポートをご提案し、正式に依頼を受けた後、さっそく私は現地調査をすることにした。

 

 

現地の調査結果は以下の通りだ。

 

<物件の状態>

・庭は草木が生い茂り、ブロック塀は傾き、隣地に越境している

・敷地内に不法投棄されたタイヤや庭石等が残っている

・外壁、一部窓ガラスにひびが入り、屋根瓦が落ちている   

・床材が腐り沈む場所や柱が一部朽ちている場所がある

 

 

調査の最中、お隣りの方から声を掛けられた。どうやら、ずっと空家であまり管理もされていない状態なので、地震の際の倒壊や、放火などの防犯など、空家に関するニュースを度々見て不安になっていたのだという。

 

Aさんの物件は、すぐに特定空家等に該当することはないと思うが、このままの状態にしておいたら、特定空家等に該当してしまう可能性があり、注意が必要だと感じた。

 

提案内容とAさんの決断

後日、調査結果についてAさんと娘さんに時間をとっていただいて報告会を行った。

 

検証の結果、提案した活用内容は以下の通りだ。

 

<主な提案内容>

1.最低限のリフォームをして現状維持

2.現状のまま簡易リフォームをして賃貸

3.収益不動産に建替えして有効活用

4.売却してほかの資産に組換える

 

私は、調査結果と各プランにかかる費用と賃料のイメージをまとめて、空家対策法と合わせてなるべくAさん達がわかりやすいように、図や絵を中心にした資料を作成してメリットと留意点を説明した。

 

仮に特定空家等に該当した場合、Aさんの税金負担は以下のように変わってしまう。

 

 

<土地面積180㎡、固定資産税評価額(軽減前):2,300万円>

・現   状:約8.0万円(固定資産税約5.5万円、都市計画税約2.5万円)

              ↓

  特定空き家等に該当すると、固定資産税6倍!都市計画税3倍!

              ↓

・特定空家等:約40.5万円(固定資産税約33万円、都市計画税約7.5万円)

 

 

 

Aさん「持ち続けるにも維持するのにお金がかかるし、今後、特定空家等の認定で固定資産税もあがってしまったら、何のために家を持っているかわからなくなってしまいますね…。本当に困るわ。」

 

娘「私は今住んでいる家もあるし、お母さんの気持ちは嬉しいけど、将来古い家を残してもらってもどうしていいかわからない…。お母さんと同じで困ってしまうわ。」

 

Aさんは、娘のために残すという想いがあったが、娘にも自分と同じ悩みを残してしまうだけだということに気づいたのだ。これまで一人で悩んでいたAさんだったが、娘の言葉にハッとさせられ、残すのではなく、今のうちに売却することを選んだ。

 

Aさん「実家に対する思いはありましたが、この家を残すことで、これから先、娘の負担が増えてしまったり、お隣りの方々へ不安を与えてしまったらいけないと思ったんです。」

 

進むべき方針が決まった後、売却の方法などをご提案し、売却活動もお手伝いさせていただいた。その3か月後、周辺の住環境などを大変気に入ってくれた買主さんに、無事に希望額で売却することができた。思い出のある不動産を売却することは、Aさんにとって大きな決断ではあったが、同時に娘さんのことや、抱えていた悩みから解放されたようだった。Aさんは現在、手元に残った売却代金を使って、ご自宅の不動産活用、年金型保険などの金融資産運用や、教育資金の生前贈与の検討など、次のステップに進んでいる。

 

 

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス

今回は、空家で困っているお客様の一例に過ぎません。世の中には様々な空家が存在しています。例えばこんな不動産をお持ちの方はいませんか?

 

・古くなって貸すのにリフォーム費用がかさむため、入居募集していない貸家
・相続で取得したが、誰も使用せずそのまま放置している住宅
・老人ホームに入居しているが、自宅を空家のまま所有し続けている

 

空家対策法の施行により、空家のまま放置して何も対策しないと、税負担の増加に繋がる可能性があります。また行政からの指導があってから慌てて検討すると、思考が固まり、結果としてその家族にとって良い選択ができないかもしれません。空家問題は今後もクローズアップされていくでしょう。すでに空家を持っている方や、将来的に使う予定がない家がある方など、今のうちから検討し、より良い選択ができるように準備していく必要があると思います。(記:友重孝一朗)

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