【令和4年最新版 相続土地国庫帰属法】相続の専門家なら知っておくべき、売れない貸せない不要不動産を処分したいときの2つの方法

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【令和4年最新版 相続土地国庫帰属法】相続の専門家なら知っておくべき、売れない貸せない不要不動産を処分したいときの2つの方法写真
2021.9.15
更新 2022.10.31

 
いよいよ来年、令和5年4月27日より『相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下、「相続土地国庫帰属法」という)』がスタートします。
 
これは、相続した不要な不動産を国が引き取りますよ、という新しい法制度です。
 
「相続したものの使う予定がない山林を処分したいのですが、どうしたらいいですか?」
「子に相続させたくないのですが売れないみたいです。手放す方法はありませんか?」

 
このような“不要な不動産の処分”のご相談、相続や不動産に携わる専門家の皆様は受けたことありませんか?
 
欲しい人がいる不動産なら、さほど困ることはありません。
しかし、山林や原野商法で購入してしまった土地など、売れない貸せないなど一筋縄では処分できない不動産(以下、「不要不動産」という)は一体どうしたらいいのでしょうか。
 
国の制度として、『相続放棄』の他に新たに『相続土地国庫帰属法』が創設されますが、どうやらこの制度を利用するためには、非常に厳しい条件があるようです。
 
今回は『相続土地国庫帰属法』の概要とあわせて、専門家の皆様が知っておくべき不要な不動産の処分方法、そして今からできる準備についてお伝えいたします。
 
本記事のポイントはこちら。

・現在日本には、九州本島の面積をも上回る広さの所有者不明土地があり、それを解決するために『相続土地国庫帰属法』が公布された。令和5年4月27日に施工される。
 
・『相続土地国庫帰属法』が適応されるには、「建物がないこと」や「境界が明確」などの厳しい条件がある。
 
・宅地や山林の負担金算定式などが決まり、Excelの計算シートも提供されている。
 
・不要な不動産を処分する方法は、『相続放棄』や『相続土地国庫帰属法』の他に、『業者による引き取り」などがある。

 
 

 『相続土地国庫帰属法』とは

土地
『相続土地国庫帰属法』は、日本全体に九州本島の面積を上回るほど存在すると言われている所有者不明土地の問題を解決するため、相続で取得した土地を国が引き取るという目的で創設されました。
 
一例ですが、所有者不明土地によって下記のような問題が起こります。
 

・所有者が不明のため、固定資産税が徴収できない
・土地を有効活用したいが所有者に連絡が取れない
・土地所有者を探すコストがかさむことにより財政が圧迫される

 
『相続土地国庫帰属法』は、すべての財産を放棄しなければならない『相続放棄』制度とは異なり、相続した土地だけを国に引き取ってもらえます。
つまり、土地以外の他の資産まで手放す必要はないのです。
 

いつ施行されるか 令和5年(2023年)4月27日
どのような不動産が対象か ・土地のみ
・建物は引き取らない
・施行前に相続した土地も引き取り対象
申請ができる人 ・相続で取得した人
・相続した共有者全員で申請する
・相続した人と売買等で取得した人とが
 混在していてもその全員で申請可能
相続した土地のみが対象か 相続又は相続人が遺贈で受けた土地のみ
費用 ・審査手数料
・土地管理費相当額の費用(※本記事で後述)
引き取れない土地 土地境界が不明な土地など

 
 

 『相続土地国庫帰属法』を利用するために

チェック
 
引き取り不可となる不動産の条件①~⑩(下図参照)のうち、どれかひとつでも該当していたら国に引き取ってもらうことができません。
 
 

 
率直に申し上げて、発表された要件からは、引き取ってもらうのは相当厳しいというイメージを持ちました。
日本一条件の厳しい買主(引き取り手)と言っても過言ではないでしょう。
 
皆様のお客様がお持ちの不要不動産も、引き取り不可の条件①~⑩のいずれかに当てはまるというケースがほとんどなのではないでしょうか。
 
もし当てはまっていれば、『相続土地の国庫帰属を申請できる状態』まで土地を整備する必要があります。
申請ができる土地とは、国が引き取れる完璧な土地とも言い換えられます。
このように整備することによって、国庫に帰属しなくても買い手が現れたり、引き取り業者から引き取ってもらいやすくなったりするかもしれません。
 
 
では、そのためには最低限どんなことをしなければならないのでしょうか。
 

1) 建物や構築物の解体(実家建物や倉庫など全て)
2) 土地の境界確定測量
3) 収益を目的とした使用を止める(資材置き場や駐車場など)
4) 土壌汚染や地中埋設物の有無を調査する(地歴などの情報収集)
5) 隣地との揉め事を解決

 
隣地との紛争がない状態にする必要があることから、樹木の枝葉やブロック塀などの(被)越境物の解消も必要でしょう。
 
一番困るのは、国の引き取りの条件のひとつである『土地の境界を明らかにする』という点です。
宅地なら測りようがありますが、山林となると土地面積は広大ですし、その労力や費用は大変なものです。
 
国は、労力と費用を掛けてまっさらで綺麗な土地にしなければ引き取ってくれませんが、整備には相当な時間や労力を要します。
取りかかるのであれば、少しでも早く始める必要があります。
 
この制度を利用するためにどのくらいの費用や労力・時間がかかるかを、専門家である皆様がお客様に情報提供し、慎重に検討していただくよう促すべきでしょう。
 

 土地整備作業の目安

前述した通り、国に引き取ってもらうためには建物を解体して更地にしたり、境界が明らかではないときは土地境界確定測量をしたりしなければなりません。
 
土地整備の例をお話ししましょう。
 

【建物の解体費用】
木造2階建て建物だと1㎡当りの単価は2万円~、鉄骨系で1㎡5万円~。
仮に木造の一戸建て3LDK(90㎡)を解体するとなると、解体費は180万円ほどになります。
 
※土地の形状や、鉄筋や木造など建物の構造・面積によって変わります。

 

【土地の境界確定】
土地の境界確定測量は土地面積や土地の数、接している隣地の数などによって変わりますが、30万円~としている土地家屋調査士が多いです。
 
参考価格として、横浜市内の一般住宅地(土地90㎡、接している隣地の数が5宅地)の土地確定測量で、60万円くらいかかりました。

 
 
つまり、上記例の「建物があり、境界が明らかではない土地」の『相続土地国庫帰属法』を申請するためには、家を解体して土地の境界確定測量をするだけで、約180万円+約60万円=約240万円の負担が発生することになります。
 
当該制度を利用するにしても、土地整備だけで相当費用がかかりそうですね。
 

 手続き

法務省から、申請から負担金納付までのフローが開示されました。
 

 
審査フローは以下をご参照ください。
 

 
法務省:相続土地国庫帰属制度の概要より抜粋
 

 負担金

国が土地を引き取ってくれる制度と言っても、無料というわけではありません。
新たに開示された負担金情報をお伝えいたします。
 

 

 
法務省:相続土地国庫帰属制度の負担金(moj.go.jp)より抜粋
(負担金額の自動計算シートあり)
 

負担金計算例

引き取り時の負担金について、例を挙げて計算してみましょう。
 
 

【市街化地域にある宅地 土地面積300㎡】
負担金は、200㎡超400㎡以下ですから、(300㎡×2,250円/㎡)+343,000円の計算式を当てはめます。計算すると、1,018,000円です。

 
 

【山林 土地面積2000㎡】
負担金は、1500㎡超3000㎡以下ですから、(2000㎡×17円/㎡)+248,000円の計算式を当てはめます。計算すると、588,000円です。

 
国に対して支払う負担金は、土地の種別やエリア、管理状況によって変わるようですから、事前にしっかり調べておきたいですね。
 
また、この他に審査手数料、さらに前述した土地境界確定費用や、建物があれば解体費用もかかります。
 
 

 不要不動産の処分方法

渡す
「使う予定がない」「売れない・貸せない」「相続もしたくない」という不要不動産を手放すためには、これまで説明した『相続土地国庫帰属法』以外に、主に次の2つの対応策があります。
(なお、地方自治体や財団などへの寄付という方法もありますが、とくに地方自治体が不動産の寄付を受け付けるケースがほとんどないため、本記事では割愛します)
 

 
期限
かかる費用
留意点
相続放棄
相続開始3ヶ月以内
印紙等3,000円
遺産すべて放棄
事業者による引き取り
いつでも
引取料15万円~
信ぴょう性、有料

 

 相続放棄

相続人が遺産を相続したくないときは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に裁判所に相続の放棄の申述をする必要があります。
この手続きをしない限り、放棄することはできません。
 
参考:相続の放棄の申述(裁判所HPより)
 
 

<主な留意点>
・不要な不動産のみの相続放棄はできない。
・相続放棄者は最初から相続人ではなかったとして、他の相続人間で遺産分割協議する。
・相続放棄しても管理責任を負う。

 
被相続人の財産を相続時に放棄できる制度ですが、不要な不動産を含む被相続人全ての財産を放棄することとなります。
 
不要不動産以外にどのような財産があるのか調査したうえで、当該制度を利用するのか否か、お客様に慎重にご判断いただくべきでしょう。
 

 事業者による不要不動産の引き取り

所有者が引き取り事業者に対し費用を支払うことで、不動産を引き取ってもらうことができるというサービスです。
 
『相続放棄』は他財産もすべて放棄しなくてはいけないため、不要な不動産だけを処分したい人には向きません。
そこで注目すべきがこの方法です。
 

引き取り料金
土地1筆15万円、地続きの場合は2筆以降5万円
建物が使える場合は50万円/棟
引き取れる不動産
全国の土地、建物、共有持分も可能
引き取れない不動産
農業のみの利用に制限された土地、抵当権付き
土地の境界確定
不要
費用の支払い時期
所有権移転後

 
参考:引き取り会社 Land Issues株式会社
(※プロサーチ株式会社・松尾が代表を務めています)
 
『相続土地国庫帰属法』とは異なり、建物の解体や土地の境界確定を不要としている事業者もあります。
ただし、固定資産税や別荘管理費等がある場合は、20年分超がかかるなどの条件があります。
 
詳しく話が聞きたい、見積もりを作ってほしいなどのご希望がありましたら、ぜひプロサーチ・Land Issuesの松尾までご連絡ください。
(見積もりは無料で作成させていただきます!)
 
 
【引き取り会社等を装った詐欺に注意!】
売れない貸せないと悩んでいる高齢の不動産所有者を狙った詐欺犯罪が起こっています。
 
不動産ブローカーなどと名乗る者から、
「買い手がいるから、調査料をください」
「この土地を欲しい人が測量をしたいと言っているので、測量費をください」

といった連絡が来て、先にお金を支払ったが最後、そのまま連絡が取れなくなるという手口です。
 
不動産の所有者に先にお金を要求してくる業者の場合は、売れなくて困っている方の弱みに付け込んだ詐欺である可能性が高く、くれぐれもご注意いただくよう、皆様のお客様にもお伝えください。
 
お客様から「こういう業者から先に費用を支払えという連絡があって…」といったご相談があった場合は、すぐにプロサーチもしくは信頼できる不動産会社などにご連絡ください。
 
 

 遺産相続コンシェルジュより

 
本記事のポイントはこちら。

・現在日本には、九州本島の面積をも上回る広さの所有者不明土地があり、それを解決するために『相続土地国庫帰属法』が公布された。令和5年4月27日に施工される。
 
・『相続土地国庫帰属法』が適応されるには、「建物がないこと」や「境界が明確」などの厳しい条件がある。
 
・宅地や山林の負担金算定式などが決まり、Excelの計算シートも提供されている。
 
・不要な不動産を処分する方法は、『相続放棄』や『相続土地国庫帰属法』の他に、『業者による引き取り」などがある。

 
今回は、来年施行される『相続土地国庫帰属法』についてお話しいたしました。
 
ひとつご注意いただきたいのは、『相続土地国庫帰属法』は「相続後に不要な不動産を国に引き取ってもらう制度」ですから、いくら不要な不動産であったとしても一度相続する以上、その不動産に対しても相続税がかかるという点です。
これに対して事業者の引き取りは相続前でも可能なため、被相続人の生前に処分することで、不要な不動産を相続税の対象から外すことが出来ます。
 
お客様にとって、不要な不動産をどうしたらいいのかというお悩みは非常に深いものです。
売却や賃貸が困難な不動産の場合、『相続土地国庫帰属法』の利用や不動産引き取りサービスなどの選択肢を提供することで、お客様のお悩みの解決へと繋がるでしょう。(記:松尾企晴)
 
 

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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から信頼を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 
 

 

 

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