相続した土地は問題だらけ!?事例から学ぶ安心して不動産相続を迎える3つの下準備

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相続した土地は問題だらけ!?事例から学ぶ安心して不動産相続を迎える3つの下準備写真

2020.7.28

 
今回は、見たこともない、縁もゆかりもない土地を相続したご兄弟のお話です。
 
ご相続人は相続発生までその不動産の存在すら知らず、慌てて駆け込みで相談に来る方が多くいらっしゃいます。
 
ここで紹介するのは正にその実例です。
 
 
今回の記事のポイントは下記の通りです。
 

・事例:相続した縁もゆかりもない不動産を売却しようと現地調査をすると、荒れ放題の崖地・ライフライン未整備・埋蔵文化財包蔵地・・・。問題だらけの土地は売れるのか?
 
・資料だけでは不動産の実態はわからない。
 
・相続税評価額と時価に大きな乖離がある場合は、評価方法に問題がある可能性がある。
 
・不動産相続にはそれぞれ物語がある。家族ごとに資産内容はもちろん環境や悩みも異なるので、自分の状況や問題や状況をよく理解し、解決方法を示してくれる専門家が必要。

 
 

現地調査で判明した問題だらけの相続財産

弊社の不動産相続セミナーに参加され個別相談を希望された長男Aさん。
 
お話を聞くと、
「先日、父が亡くなり相続した土地があります。でも、一度も見たこともないですし、住む予定もないため、土地を売って、そのお金を弟と分けたい。弟もこの土地の売却には賛成しているので早々に売却したいのですがどうしたら良いのでしょうか。」
とのこと。
 
土地は未利用地であるため収入もなく、持っているだけで固定資産税を負担しなければならないので、できるだけ早くこの土地を処分したいとのことでした。
 
そして、顧問税理士による財産評価は4,000万円とのことで、できればその評価額程度での売却を希望していました。
  
ご相談を受けた後、手元にある地図と公図を頼りに早速現地へ調査に向かいました。地図や公図を見る限りごく普通の土地であり、角地という利点もありました。
 
しかし現地に到着と同時に、愕然…!

 
なんと、その土地は道路から最大で6mほど切り立った崖地になっていたのです。
近くには何カ所も『危険!がけ崩壊の恐れあり!』の警告看板も立ち、その土地には太い木が何本も生えています。崖地には擁壁はあるものの老朽が進んでおり、やり直す必要がありそうです・・・。宅地として売却するには難しい状況なのは一目瞭然でした。
 
それだけではありません。この土地には、上下水道やガスなどのライフラインの管も一切埋設されていませんでした。また、埋蔵文化財包蔵地内(縄文や弥生等の旧時代の生活跡が埋まっている可能性がある土地)にも指定されていたのです。
  
調査を進めるにつれて、書ききれないほどの様々なリスクがあることや、売るためには多額の費用が掛かることが浮き彫りになってきました。
 
 

現地調査を終えて

不動産調査報告書を作成し、この状況を全く知らないAさんに早速報告しました。Aさんは「そんな崖があるの!?売れるの!?お金かけてまで売りたくないし…」と困惑の様子でした。
 
現状を踏まえ、個人へ売却するには難易度が高すぎることを説明し、プロである戸建分譲業者に絞ってこの土地の販売活動を行うことに決定しました。
 
まずは販売価格を決定するために、建設会社などにもこの土地を見てもらい、見積もりを取得しました。
 
その結果、擁壁や造成費やインフラ整備、樹木の伐採抜根などに約3,000万円の費用を要することが判明。本来であれば、崖倒壊などを考慮すると価格を付けることすら難しい不動産です。
これらの結果から、売却価格は1,000万円を切る可能性もあるとAさんに説明した上で、売却活動を開始しました。
 
信頼できる戸建て事業者を10社ほどピックアップし、1社1社、当該地の情報を記した書面で説明しながら紹介しました。しかし一週間もすると、造成費の問題や倒壊のリスク、開発から販売開始まで時間がかかるなどの理由で検討することができないという回答が続々と入ってきたのです。気が付くと検討できるのは地元密着の不動産会社1社のみになってしまいました。
 
その1社も「本来購入はしない難しい土地であるが、地元なので」と回答を出してくれました。思わず「ありがとう!」と声が出そうでしたが、少しでも価格が伸びるように交渉し、最終的には「ここまでしか出せない」というぎりぎりの600万円という数字をご提示していただけました。
 
 

相続税評価と時価の大きな差

今回の土地の財産評価額は4,000万円。売却価格の600万円とは3,400万円もの乖離がありました。
 
崖地とはいえ、価格に乖離が大きすぎる…、現地を見たうえで当該宅地をどのように評価しているのか、確認したくなりました。
 
そして、税理士から相続税評価についてどんな説明があったかAさんに話を聞いたところ、「いや、税理士先生からは、特に詳細な説明を受けた覚えはないですし、そもそもいつも専門用語ばかりで難しいから…」と、よく分かっていない様子でした。
確かに限られた時間で且つ不慣れな専門用語が出てきますから、分からないのも仕方がありません。
 
Aさんに許可を得て、財産評価を行った顧問税理士へ確認を行いました。
話を聞くと、当該評価はほぼ地図上で得られる情報をもとに、つまり、現地を見ずに地図だけを見て、崖地であることも考慮せず当該評価を行ったということを聞き、税理士へ「もう一度調査して評価をし直してもらえませんか」とお願いしました。
 
すると税理士は「調査をし直して万一評価が下がらない場合、だれが責任をとるのだ」「税務調査がきたらどうする」とまくし立てるように反論してきました。
「依頼者の理解を得て、依頼者のために合法的に最大限評価を引き下げることの方が普通では」という私の言葉にも耳を傾けてもらえません。
 
Aさんとプロサーチとでこの財産評価をどうするかについて協議のもと、不動産鑑定士に当該評価を依頼し、それをもとに更生の請求(相続税申告後に修正すること)を行うことにしました。
 
鑑定結果は1,000万円。実際の売買価格まで引き下げることはできなかったものの、当初4,000万円の評価額から3,000万円も低く見直すことができました。
そして、Aさんから税理士へ「この鑑定結果で進めてもらいたい。もし評価が下がらなくてももとの評価にどもるだけです。責任は先生ではなくもちろん私が負います」とお伝えいただきました。
結果は、このまま更生の請求がとおり、約900万円もの相続税が還付されることになりました。
 
Aさんから「税金は納めなければなりません。ですが、今回はこのように素人には一見わからないようなことがあり、改めて不動産の評価について怖さを知りました。プロサーチさんのアドバイスのおかげで兄弟も納得して進めることが出来ました。ありがとうございました」との言葉をいただきました。
 
不動産コンサルタントであるプロサーチの立場であれば、不動産を扱う以上必ず現地に行き確認します。しかし、多くの税理士は個人の確定申告、会社など法人税に関する業務を中心としているため、年に数件しか相続税申告の業務はしないという税理士もたくさんします。そういった税理士は不動産の実態を知らないので、机上だけで資料を作成してしまうということもあります。まだまだ少数ですが、相続税申告専門に多数の申告実績がある税理士であれば、現地に行き調査をしています。
 

この事例から学ぶこと

1)焦って相続税申告をするような状況を作らないこと
相続税申告時に十分に調査や適正な評価をする時間がないなど、困らないように、
生前に資産等を整理しておくことです。
 
2)相続に詳しく経験がある専門家に相談すること
病院に専門科があるように、全ての税理士が相続に強いというわけではありません。
相続に精通した、税理士等の士業、不動産会社のパートナーを見つけておくことが
大切です。
 
3)不動産の現状を把握しておくこと
問題のない不動産の方が圧倒的に少ないです。解決できる問題もあれば、できない
こともあります。それらの実態を把握し、問題点は生前に解消しておくことが重要
です。

 
不動産や相続の問題は奥が深く、知らないと損をしてしまうこともあります。今回は無事に解決できたものの、知識や経験がなければ評価の引き下げや税金の還付まで行うことはなかったと思います。
  

相続をした不動産の売却に伴うトラブルとその解決策については、下記の記事でも詳しく解説していますので、興味ある方は下記リンクより確認してみてください。
 

相続した物件をすぐには資金化できない!?私が経験した思わぬ隣地トラブルとは!!

 
 

まとめ

・事例:相続した縁もゆかりもない不動産を売却しようと現地調査をすると、荒れ放題の崖地・ライフライン未整備・埋蔵文化財包蔵地・・・。問題だらけの土地は売れるのか?」
 
・資料だけでは不動産の実態はわからない。
 
・相続税評価額と時価に大きな乖離がある場合は、評価方法に問題がある可能性がある。
 
・不動産相続にはそれぞれ物語がある。家族ごとに資産内容はもちろん環境や悩みも異なるので、自分の状況や問題や状況をよく理解し、解決方法を示してくれる専門家が必要。

 
不動産や相続の案件はそれぞれに物語があり、似たものはあっても、一つとして同じものがありません。不安に感じていることや解決方法をインターネットで検索すれば、「こうすれば解決できる!」と謳われたものが目につきます。
 
しかしそれは「ただの情報」でしかなく、お客様自身の問題を解決するものではありません。事情も資産や家族背景も違いますし、そもそもそれが正しい解決方法とも限りません。
 
病気になった時の診察を想像してみてください。
自分の調子をインターネットで調べて『私は●●という病気だから、この薬を処方してください!』といきなり医者に言いませんよね?相続や不動産も同じように、まずはじっくりと話を聴いてもらったあとに(問診)、どんなことが問題となりそうなのか、どうしていきたいか(診察)をみてしてもらうことが必要です。
 
その上で、対策案(処方箋)がでます。不動産や相続の相談については、トータルで相談できる専門家に相談しながら対策をとっていってくださいね。
 

 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

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