空き家によって本当に困ることはコレ!売れない貸せないまま固定資産税が6倍に!?

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空き家によって本当に困ることはコレ!売れない貸せないまま固定資産税が6倍に!?写真

2020.8.25

 

2015年5月に【空家等対策の推進に関する特別措置法】(以下、「空家対策法」)が施行されました。
 
これは年々と増える空き家を適切に管理する目的で施行された法律です。
 
核家族化により1家族に1つ家を持つ時代に突入しており、極端な言い方をすると、夫婦それぞれの親に相続があると、夫側と妻側で合計2つも空き家が発生することとなります。
 
現代の社会的要因から、そのように空き家数が爆発的に増えることは容易に想像ができますね。
 
そこで今回は、弊社がご相談を受けたお客様を事例に、空き家を放置するとどのような罰則などがあるのか、そして放置し続けた結果本当にこまってしまう状態とは何かをお伝えします。
 
 
今回の記事のポイントは以下のとおりです。
 

・空き家を放置し、特定空家等に認定されると管轄行政から家屋の撤去や修繕などの指導を受ける。
 
・指導を受けて改善しない場合、【勧告】が出されると固定資産税減免が受けられず、いままでの固定資産税額の6倍になる。
 
・勧告も従わなかった場合、過料の請求や強制撤去などの罰則もある。
 
・空き家によって本当に困ることとは、放置し続けた結果「所有者が認知症等になり、空き家のまま誰も動かせなくなる状態が続くこと」である。

 

空家対策法によって固定資産税が6倍になる可能性がある


 
空家対策法で、特に注目すべき点は

「地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす【特定空家等】は、固定資産税・都市計画税の軽減措置から除外する」

ということです。
 
※特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態や衛生上有害となるおそれのある状態、景観を損なっている状態の空き家を指します。
 
現在の固定資産税・都市計画税の軽減措置の内容は下図の通りです。
 

 
今現在皆さんが住んでいる土地に関する固定資産税は、200㎡以下の部分は6分の1、200㎡を超える部分は3分の1、税負担を軽くしてもらっている状態です。
 
つまり更地にすると『人が住んでいない状態』になるため固定資産税の減免が受けられません。
 
ですので、未利用の建物だとしても、解体してしまうと上記の軽減措置を適用できなくなるため、たとえ管理状況の悪い空き家だとしても、そのまま放置されてきたのが現状です。
 
そこに「空き家対策法」というメスが入りました。
 
特定空家等に該当し、管轄行政から家屋の撤去や修繕などの指導を受けて改善しない場合、【勧告】が出されます。
 
この勧告が出されると、固定資産税・都市計画税の減免が受けられず、固定資産税は今までの税額の6倍、都市計画税は3倍になってしまうのです。
 
さらに改善命令に従わなかった場合、50万円以下の過料や、強制的に撤去(行政代執行)されてしまいます。もちろん解体費等は所有者の負担です。
 
 

空家問題は、他人ごとではない身近な問題


 
ここで「相続した空き家をどのようにすればよいか」悩んでいたお客様の事例を紹介します。
 

【お名前】Aさん(女性 当時70歳)
【来社のきっかけ】生命保険会社の方からのご紹介
【お悩み】10年前にお母様から相続した空き家を今後どうしたらよいか
【家族構成】
・Aさん(70)、娘(47) ※ご主人は2年前に他界、長女は結婚して持ち家あり
【保有資産】
・自宅:Aさんが居住中
・空き家状態の実家:神奈川県 土地200㎡(10年前母親の相続で取得)※木造築59年

  
Aさんは、実家への思い入れが強い様子で、人に貸したくないし、売るという決断もなかなかできず、娘に遺してあげたいとも考えていたとのことでした。
しかし、空き家に関するニュースを見て不安になり相談してきたとのことです。
  
  
Aさん「母から相続した実家についてなのですけど、どうしようか迷っていまして。両親との思い出の詰まった場所だから、簡単に売りたくないし、できれば娘にも残してあげたい。でも、ニュースでは空き家にしておくと固定資産税が高くなるって言う話も聞いたし、もし人に貸すとなれば、古いからリフォームなどでお金がかかるしできれば貸したくない。ずっと考えてきたけど、答えが出なくて。」
 
そこでまずは、不動産調査(現地確認、建築基準法上、不動産マーケットなど)、有効活用の方法に関する現状把握レポートをご提案。Aさんは売却だけではなく有効活用など様々な視点からアドバイスをぜひ受けたいとのことからご依頼をいただきました。
 
そして、さっそく現地調査へ。
 
実家の状況は以下の通りでした。
 

物件の状態
・庭は草木が生い茂り、ブロック塀は傾き、隣地に越境している
・敷地内に不法投棄されたタイヤや庭石等が残っている
・外壁、一部窓ガラスにひびが入り、屋根瓦が落ちている
・床材が腐り沈む場所や柱が一部朽ちている場所がある

 

※写真はイメージです。

 
調査の最中、お隣りの方から声を掛けられました。どうやら、ずっと空き家のまま管理もされていない状態のため、地震等による倒壊や、放火などの防犯上も心配で、最近ニュースでも度々報道されているから、とても不安になっていたとのことでした。
 
Aさんの物件は、このままでは数年以内に特定空家等に該当してしまう可能性も考えられ、注意が必要だと感じました。
 
後日、Aさんと娘さんに調査内容の報告とご提案を行いました。
 

主なご提案内容
1)最低限の清掃と見回りで現状を維持し、保有し続ける
2)現状のまま簡易リフォームして賃貸する
3)建物を解体し、一部土地売却。その代金で残りの土地に収益不動産を建設し有効活用する
4)建物を解体し、土地全体に収益不動産を建設し有効活用
5)売却して他の資産に組み換える

 
調査結果と各プランにかかる費用と賃料のイメージをまとめて、空家対策法と合わせてなるべくAさん達がわかりやすいように、図や絵を中心にした資料を作成してメリットと留意点を説明しました。
 

 
 
仮に特定空家等に該当した場合、Aさんの税金負担は概算で以下のように変わってしまいます。
 

<固定資産税評価額(軽減前):2,300万円>
・現   状:約8.0万円(固定資産税約5.5万円、都市計画税約2.5万円)
               ↓
  特定空き家等に該当すると、固定資産税6倍!都市計画税3倍!
               ↓
・特定空家等:約40.5万円(固定資産税約33万円、都市計画税約7.5万円)

 
※簡易計算のため実際の税額とは異なります。
 
Aさん「持ち続けるにも維持するのにお金がかかるし、今後、特定空家等の認定で固定資産税もあがってしまったら、何のために家を持っているかわからなくなってしまいますね。本当に困るわ。」
 
娘「私は今住んでいる家もあるし、お母さんの気持ちは嬉しいけど、将来古い家で残してもらってもどうしていいかわからないよ。同じように管理できなくて困ってしまうわ。有効活用して賃貸運営もしたくないし。」
 
Aさんは、娘のために残すという想いがありましたが、娘にも自分と同じ悩みを残してしまうだけだということに気付いたのです。これまで一人で悩んでいたAさんでしたが、娘の言葉にハッとさせられ、遺すのではなく、今のうちに売却することを選びました。
 
Aさん「実家に対する思いはあります。ただ、この家を遺すことで、これから先、娘の負担が増えてしまったり、お隣さん方々へ不安を与えてしまったらいけないと思ったのです。」
 
進むべき方針が決まった後、戸建て売却の方法などをご提案し、売却活動もお手伝いさせていただきました。
 
それから3か月後、周辺の住環境などを大変気に入ってくれた買主さんに、無事に希望額で売却することができました。思い出のある不動産を売却するにはAさんにとっては大きなご決断ではありましたが、娘さんのことや、抱えていた悩みから解放されることで、次のステップに進むことができたようです。
 
さらに、手元に残った売却代金を使って、ご自宅の不動産活用、年金型保険などの金融資産運用や、教育資金などの生前贈与の検討し、実行されました。
 
 

空き家問題が顕在化する前に

 
・古くなって貸すのにリフォーム費用がかさむため、入居募集せず放置している貸家
・相続で取得したが、誰も使用せずそのまま放置している住宅
・老人ホーム入居しているが、自宅を空き家のまま所有し続けている
 
このような空き家を所有している方は今後増え続けていくと考えられます。
 
冒頭にお伝えした通り、空き家のまま放置し何ら対策をしないままですと空家対策法の施行により税負担が増えたり、近隣の方からのクレームが入ったりすることもあるでしょう。
 
事例のAさんは元気で健康であったので、自らの意思で売ることが出来ました。
 
もし、Aさんが認知症等で意思判断能力が喪失していたら?
 
残念ながら、Aさんの本人確認が取れないため不動産は売却することができません。
 
つまり、娘さんはAさんが亡くなるまで空き家のまま何もできない状態が続くということになります。
 
(法定後見制度を利用することで売却可能ですが、家族以外の第三者(後見人)に財産管理を託しその後見人の判断が必要、毎月後見人への報酬が発生するなどがあるため、検討を考えたい方は、一度、お近くの専門家や弊社までご相談ください)
 
よって、空き家によって本当に困ることとは「所有者が認知症等になり、空き家のまま誰も動かせなくなる状態が続くこと」だと弊社は考えます。
 

まとめ

・空き家を放置し、特定空家等に認定されると管轄行政から家屋の撤去や修繕などの指導を受ける。
 
・指導を受けて改善しない場合、【勧告】が出されると固定資産税減免が受けられず、いままでの固定資産税額の6倍になる。
 
・勧告も従わなかった場合、過料の請求や強制撤去などの罰則もある。
 
・空き家によって本当に困ることとは、放置し続けた結果「所有者が認知症等になり、空き家のまま誰も動かせなくなる状態が続くこと」である。

 

すでに空き家を持っている方や、将来的に誰も使う予定が無い家がある方は、ご自身や親が元気で健康なうちから、所有者が認知症等になっても対策が打てるように、財産管理方法について検討し準備していく必要があります。
 
弊社ではこのような『相続した実家(空家)の持ち方』についてのご相談が年々増えており、空き家の現状把握から、財産管理方法(成年後見制度や、家族信託など)について、相談者ご家族とってより良い手段についてアドバイスさせていただいております。
 
空き家になった実家について、『売る』『貸す』『管理』といった不動産サービスを謳う業者が増えてきましたが、相続や税、次世代への遺し方まで総合的にアドバイスしてくれる専門家へまずは相談することをお勧めいたします。それが弊社であれば幸いです。
 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 


 

 

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