親から相続対策を託された!そのとき子は何を考える?

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親から相続対策を託された!そのとき子は何を考える?写真

相続税対策のために二世帯住宅への建替えを検討

いまから1年ほど前に、税理士の甲さんから「私の顧客で、畑など複数の不動産について相続で悩んでいるお客様がいるのだけど、相談に乗ってもらえないかな?」との相談をいただいた。相談者は武蔵野市在住の佐野武さん(仮称)83歳(奥様他界)で、家族は息子の悟さん(仮称)51歳と、悟さんの奥さんの知恵子さん(仮称)48歳、お孫さん2人の5人だ。

武さんの資産背景は、自宅300坪と自宅前に生産緑地1,500坪、他に畑を300坪所有していて、その生産緑地で農業を親子で営み、知恵子さんが家計を切り盛りしている。専業農家として代々続いてきているようだ。

相談内容は、『相続税の納税手段が知りたい』『現在は、農業で生計を立てているが、子供や孫の今後を考えると安定した収入を残してあげたい』『そろそろちゃんと子供と話したい。しかし、何を話せばいいかわからない』などなど。

農家を続けるかどうか、子の判断にゆだねる

武さんは、自分の資産がどこに何があるかについては知っていたが、財産評価、権利関係、問題点と解消方法、不動産時価などの現状把握を今まで行ったことがなかった。そこで、当社オリジナルの相続対策レポートを作成し、それを基に息子さん夫婦と話してみては?と提案したところ、ぜひお願いしたいとのことだった。併せて、自分だけでは息子に詳しく説明できないから同席して説明してほしいとの依頼も受けた。もちろん快諾し、家族を集めてレポート報告会を開くことにした。

ご依頼から数週間後悟さん夫婦同席のもと、中間レポートの報告を行うことになった。なぜ悟さん夫婦も同席かというと一家の対策上、悟さんが将来、生産緑地を残し農家を続けるか否かという希望を聴く必要があったからである。

生産緑地を継続して相続税の納税猶予を受けると、悟さんは自分が亡くなるまで農業を営む必要がある。(※生産緑地や納税猶予の適用には各種要件があります。)その代わり相続税が大幅に軽減されるため、悟さんの選択によって節税対策や納税対策が大きく変わることになる。

(納税猶予適用する⇒畑300坪の売却で納税でき、数千万円を手元に残せる)
(生産緑地解除/納税猶予適用しない⇒畑300坪では不足、生産緑地だった畑も売却)

父から子へ託された資産・想い

財産評価や相続税額(当社提携税理士試算)、不動産の調査結果やマーケット、問題点と解決方法などの資産現状についての説明を終えると、武さんは「松尾さんありがとう。我が家の現状が少し理解できたよ。」そして、息子の悟さんに向かって「話を聞いてどう思った?」と問いかけた。悟さんは少し間をおいて「うちのことはだいたいわかった。畑のまま残して農業をするかどうかで大きく未来が変わるのも理解できた。それで父さんはどうしてほしい?」と聞いた瞬間、「すべてをお前に任せることに決めている。一度しかない人生好きなように生きたらいい」と少し強い口調で言った。静まりかえったリビングに「そういわれても困る、代々続いてきたんでしょ?こうして欲しいとか、正直な親父の気持ちを聴かせてよ」と返しても、「私は何も言わない。ただお前に決めてほしい。それだけだ」と言い、それ以上何も言わせない。そんな雰囲気のまま中間報告会を終えた。

我々は、後日、武さん・悟さん夫婦と単独での面談の予定を入れていた。なぜなら親子だから話せない内容をそれぞれから聴くためである。我々の仕事の一つは家族だから話せない、話しにくい話をちゃんと聴き、皆が納得できる対策を模索し提案することである。全員が100満足とはいかなくても80程度満たされる対策を必死に考えるのである。

子が自分で考えて気付いた親の気持ち 

後日、個別で武さんと面談した際、息子さんにすべて任せようとした理由を聞いたところ「松尾さん、私は息子が農家を続けようが続けまいが、それはどちらでもいいのです。松尾さんも言っていたけど、相続って子が受けるものだし、子供が幸せになるのが一番だから。少し無責任かもしれないが、息子の決断を尊重したいと思っているよ。」とのことだった。

次に悟さん夫婦と面談した。悟さんは「正直、親父から今後のことを任せられるとは思っていなかったんですよ。今までは相続や農業のことってどこか他人事でしか思えなくて。今回親父に判断を任されて、自分事として家族も交えて考えました。私は、やはり父親と一緒に続けてきた農業を引き継ぎたいと思っています。」とのことだった。すると知恵子さんが、「私からもいいかしら?松尾さん。私は最初反対しました。農業収入も減ってきたし、いつまでも農業だけで暮らしていけないと、家計を預かっている側からすると、続けていくことが不安でもあるの。」「農業以外で、安定収入があれば、いいのだけど…」と素直な気持ち、不安などを話してくれた。

お二人の話を聞いて、農業を続けながら、他に安定収入が見込める対策プランを考えることになった。

それから2週間後、一家の想いを織り込んだレポートを作成し、いざ報告会へ。武さんは、息子がどう考えてきたのか落ち着かない様子だ。私は対策レポートを話す前に、悟さんから『農家』についての考えを武さんに伝えてもらった。「親父、死ぬほど考えたよ。本当に。」と笑顔で話し始め、「親父や亡くなった母さんへは感謝しかない。相続は財産をもらうだけじゃなくて、想いや生き方、歴史も引き継ぐことなのだと思った。」と前置きし、「俺、農業を続けるよ!」」と宣言した。武さんを見ると、うんうんと下を向いたまま頷きながら「お前の考えを尊重する。大変だったと思うけど、ありがとう!」と言い涙ぐんでいた。そして農業を続けていくことを前提に、家族皆で相続対策を進めていくことになった。

なお、知恵子さんが心配していた安定収入については、私から武さんへ農業収入だけでは今後不安な部分もあるようだとお伝えし、当社の推奨プランとして、畑300坪の半分を売却し、その売却代金で残りの半分の土地にアパートを建築して家賃収益を得るという対策を提案した。武さんも心配していたことだったので反対することは無く、悟さん夫婦のためにぜひ行ってくれとのことだった。

知恵子さんは、農業を続けていくことへの不安がなくなり、収入をあまり気にせずに、安心して農業を続けていけると仰っていた。

現在、月に1度、悟さん夫婦を中心に武さんと私とで相続対策を進めている。最近では、農業のことについて武さんからの指導が一層厳しくなったと悟さんが嘆いていたのが、どこか微笑ましかった。

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス

当初のご相談は、親だけ若しくは子だけという場合が多いです。親は子供や相続のことが心配、だけど何て話していいか?子供は親になかなか相続のことを切り出せない…こんな家族が沢山います。しかし、互いにいきなり相続のことを切り出すのは難しいでしょう。私は、『家族とのコミュニケーション』の重要性を伝えています。日ごろから、互いに興味を持ち、対話をする。相続という大テーマをいきなり話だすのではなく、「親の歴史」「子供の夢」などを知ることから会話を始めてみるのも良いかもしれません。つまり急がば回れです。当社では大切な人とのコミュニケーションきっかけシートを用意していますので、ご興味ある方は当社HPを覗いてみてください。(記:松尾企晴)

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