「家族信託は高い」とお客様に言われたら?家族信託を受任するための2つの秘訣

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「家族信託は高い」とお客様に言われたら?家族信託を受任するための2つの秘訣写真
2021.4.15

 
「専門家に払う家族信託報酬って高くない!?」
「家族信託って本当に必要?高いお金を払ってまでする必要性を感じない」

 
こんなことをお客様から言われた経験はありませんか?
確かに、東京都内にある土地30坪くらいの一戸建てでも家族信託の組成には数十万円もかかりますし、これがアパートだったり、ビルだったり、何棟もあったりとすると、200万円以上かかることも。
金額だけを見ると、家族信託報酬は高いと感じるのかもしれません。
 
しかし、報酬が高いと感じて家族信託をやめる方がいる一方、高額な費用を支払ってでも家族信託をする方がいます。さて、両者の違いは何でしょうか。
 
本記事では、家族信託をした場合としなかった場合を比較し、将来どれだけ費用に差が出るのか?お客様に「家族信託は高い」と言われたとき、どのように話を切り返すのか?についてお伝えいたします。
 
本記事のポイントはこちら

・家族信託の報酬体系は、コンサルティング報酬と信託契約書作成報酬の2つで構成されている。
 
・2021年現在、専門家に支払う家族信託報酬の相場は、相続税評価額3,000万円の実家を信託した場合で総額70万円~80万円ほどかかる。
 
・家族信託をせず意思判断能力喪失・相続発生してしまうと、家族信託をした場合と比べ、税金や費用に数百万円も差がつく場合もある。
 
・家族信託は保険のようなもの。早めの対策と長期的な視点で検討することが後々の後悔を回避するポイントである。

 
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 家族信託の報酬

報酬
 
家族信託を取り扱う専門家が増え、やっと“報酬の相場感”が掴めるようになってきましたね。
本題に入る前に、報酬体系を確認しましょう。
 
報酬体系は、大きく2つで構成されています。
 

1.コンサルティング報酬
2.信託契約書作成報酬

 
 
 

1.コンサルティング報酬に含まれる内容
・家族関係、信託する財産の確認
・信託目的の確認
・家族信託の制度設計
・法律専門家への説明、指示

 

2.信託契約書作成報酬に含まれる内容
・上記情報について確認
・契約書作成
・関係者への契約内容説明
・公証人への説明(公証契約とする場合)
・契約締結

 
 
気になる報酬金額は次のとおり。
※弊社が聞き取りを行った専門家の金額です。異なる報酬体系の専門家もいますので、あくまでご参考値としてください。
 

1.コンサルティング報酬(税理士、司法書士等の専門家、FP、不動産コンサル等)
・最低報酬額 10万円
・財産額3,000万円~1億円の場合 報酬額30万円~50万円
・財産額1億円~2億円の場合 報酬額70万円~

 

2.信託契約書作成報酬(司法書士、弁護士)
・最低報酬額 30万円
・財産額3,000万円~1億円の場合 報酬額30万円~50万円
・財産額1億円~2億円の場合 報酬額70万円~

 
 
例えば、相続税評価額3,000万円の実家を家族信託する場合は、1と2の報酬を足して30万円+30万円の合計60万円くらいになるでしょう。これに別途、公証役場への報酬や登録免許税等がかかるので、総額70万円~80万円ほどかかります。

 
最近では「家族信託パック商品」が流通し始め、上記1.2の業務報酬を総額30万円(税金等は別途)で提供するところも出てきました。お客様にとっては良い傾向ですが、それでも最低30万円はかかるというのが現状のようです。
 
 

 家族信託を受任するためのポイント1
 ~信託をした場合としていない場合の費用を比較する~

比較"
 
一戸建てのみを家族信託するだけでも、およそ70万円かかる…。報酬額だけ聞くと高く感じて、私なら躊躇してしまいます。
 
しかし、70万円と聞いて家族信託の検討をやめるお客様に伝えていただきたいことがあります。
 
それは、早めの対策と長期的な視点で検討することが、後々の後悔を回避するポイントだということです。
 
ここでは、家族信託の目的によく挙げられる「親が認知症になって施設に入所したら、空き家になった親名義の一戸建て(実家)を売却する」ということを前提にお話ししていきます。
 

<前提条件>
・空き家状態の、昭和60年築の一戸建て。
・母が一人暮らしをしていたが、介護施設へ入居した(父は数年前に他界)。
・子は、施設入居金や月額賃料支払いのため、実家を売却して資金を捻出したい。
・母は施設入居後に認知症発症。その時から相続発生までの期間は10年間。
・子は実家から離れて暮らしているため、実家の管理は空き家管理会社に月1万円で委託。
・譲渡税の計算に使う“実家購入時の売買価格などが分かる資料がない”とします。
 それら資料がない場合は、計算上、概算取得費として譲渡価格の5%を経費にいれます。

 
元気で健康なときに実家を売却できれば問題ありませんが、認知症等で意思判断能力を喪失してしまうと、実家を売れなくなるなど大きな問題へ発展することがあります。
 
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それでは、“お金”にスポットを当ててこの事例を説明します。
 
≪家族信託をしていなかった場合≫
前提条件のまま、家族信託をせずにお母様が意思判断能力を喪失すると以下のようになります。
 

1.実家を売れなくなるので保有継続する。
2.お母様のご相続発生後に、実家を売却する。

 
1.保有継続の間、固定資産税や維持管理費などを負担・・・相続発生まで10年間保有
・固定資産税:年間10万円×10年で100万円
・維持管理費:年間12万円×10年で120万円
・火災保険料:年間6万円×10年で60万円
 ⇒合計280万円・・・①
 
2.実家の売却(相続発生後)・・・価格3,500万円で売却完了した場合
価格3,500万円
経費▲500万円(仲介手数料や概算取得費等で500万円とします)
利益3,000万円(価格-経費)
 
この利益に対して、譲渡に対する所得税等(約20%)がかかるので、3,000万円×20%=600万円・・・②
この600万円を税金として支払う必要があります。
 
以上のことから、①280万円+②600万円=合計880万円が維持管理や税金でかかってくることになります。
 
なお、相続後の空き家の実家売却で税金が安くなる特例がありますが、この事例では使えません。その理由は家の築年数です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
 
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早くしないと損するかも?相続空き家の3000万円特別控除をつかって空き家の実家を賢く売却する方法

 
 
≪家族信託をしていた場合≫
それでは、家族信託をした後にお母様が意思判断能力を喪失した場合はどのようになるでしょうか。
 

1.売却するまでの間だけ保有継続する。(税金・維持管理費)
2.ご相続発生前でも、実家を売却することができる。

 
1.固定資産税や維持管理費などの負担・・・認知症発症から半年後に売却完了した場合
・固定資産税:年間10万円×半年分(50%)=5万円
・維持管理費:年間12万円×半年分(50%)=6万円
・火災保険料:年間6万円×半年分(50%)=3万円
 ⇒合計14万円
 
2.家の売却・・・価格3,500万円で売却完了した場合
価格3,500万円
経費▲500万円(仲介手数料や概算取得費等で500万円とします)
特例▲3,000万円(※居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除)
利益0万円(利益0のため、税金の支払いはなし)
 
 
表にまとめるとこのようになります。

 
家族信託しなかった場合
家族信託した場合
家族信託費用
0円
70万円
維持費用負担
280万円
14万円
売却税金負担
600万円
0円
負担総額
880万円
84万円

 
この結果をみると、家族信託をしていれば、約800万円も総合的に支払うコストが安く済みます。家族信託報酬の70万円を高いと言えるでしょうか。
 
(※ただし、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の適用要件の一つに、住まなくなってから3年を経過する日が属する年末までに売却するという条件があるので注意が必要です)
 
 

 家族信託を受任するためのポイント2
 ~保険など身近にイメージできるものに置き換えて説明する~

保険
 
この事例で取り上げたような実家の売却については、親の意思判断能力が喪失し、すでに手遅れになっている状態でのご相談が多く、「もっと早く相談に来ていただければ…。家族信託をもっと早くご存じだったら…」と思うことがあります。
 
本記事をご参考に「万が一のときのために家族信託をしておくと、実家の売却で数百万円もコスト減になる」と、皆様のお客様へお伝えいただき、ぜひ一日でも早く検討していただければと思います。
 
もちろん、実家の売却だけではなく【遺産分割、相続税の納税、相続税節税】などの相続対策で不動産を売却したり購入したりする方も同等以上の金銭的効果を得ることができますし、何より、親の意思判断能力が喪失したとしても、相続対策を子や家族で続けることができます。
 
このように家族信託は親の意思判断能力が喪失しても財産管理が出来るのが特徴ですが、当然ながら、高い報酬を支払って家族信託組成しても親の意思判断能力が喪失せず、ずっと元気なままということもあり得ます。
 
自分が認知症になるなんて思いたくもないから
「家族信託しなくてもいい。私はボケないよ」とお客様は言います。
しかし、これを自動車保険や生命保険に言い換えると…。
 
「自動車保険加入しなくてもいい。事故しないから」
「生命保険加入しなくてもいい。暫く死なないから」

 
このように言うお客様は少ないのではないでしょうか。
 
“万が一の時に、家族がお金で困らないように”
 
このような“万が一の心配”が理由で自動車保険や生命保険に加入していますよね。
家族信託も考え方は全く一緒です。
もしかしたら意思判断能力を喪失しないかもしれないけど、“財産価値が減る”ことや“お金が引き出せない”などで、家族が困らないようにすべきだと思います。家族信託とはこれら保険の意味合いと似ています。
 
実際に私もお客様に保険のようなものと伝えます。
そして、家族信託を組成したお客様も「結局、母は認知症にならなかったけど、母の体調を気にして焦ることなく安心して不動産相続対策を進められた。保険のようなものだね」と仰っていました。
 
身近な例で伝えることで、“言われてみたら確かにそうだな”という気づきを得て、それをキッカケに、財産のことで配偶者や子どもが困らないようにするためには?と、お客様ご自身にちゃんと考えてもらうことが大切ですね。
 
 

 遺産相続コンシェルジュより

 
本記事のポイントはこちら

・家族信託の報酬体系は、コンサルティング報酬と信託契約書作成報酬の2つで構成されている。
 
・2021年現在、専門家に支払う家族信託報酬の相場は、相続税評価額3,000万円の実家を信託した場合で総額70万円~80万円ほどかかる。
 
・家族信託をせず意思判断能力喪失・相続発生してしまうと、家族信託をした場合と比べ、税金や費用に数百万円も差がつく場合もある。
 
・家族信託は保険のようなもの。早めの対策と長期的な視点で検討することが後々の後悔を回避するポイントである。

 
生命保険に加入する理由の代表的なものは、「家族が生活費や学費など金銭的なことで困らないように、自分の万が一のときは○○万円を家族に遺せるようにしておきたい」ということだと思います。具体的な問題点と叶えたいことが明確なので、高い保険料を支払ってでも加入するのです。
 
家族信託も、「家族が金銭的な負担などで困らないように、家族の判断で家を売って資金確保したり金融機関から自由にお金を引き出せたりできるようにしておきたい」など目的が明確になっていて、「70万円の家族信託報酬はかかるが、組成しておけば800万円も負担減になる」のように、『やることの価値や効果』が分かっていれば、必要性を感じてお客様ももっと前向きに検討できるのではないでしょうか。
 
私たち専門家は、認知症になったら資産凍結されて大変だ!とただ不安を煽るだけではなく、本記事でお伝えしたとおり、それぞれのお客様の金銭的な負担減や効果を検証し、『家族信託報酬を支払ってでも組成するメリット(費用対効果)がある』とお伝えすることが大切だと思います。(記:松尾企晴)


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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から信頼を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

 

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