賃貸経営しているアパートを家族信託する前に知っておきたい5つのポイント

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2021.5.11
更新 2022.5.10

 
「相続対策のために家族信託を考えたいけど、子がしっかり財産管理できるか不安がある。」
 
家族信託の相談でよく聞く悩みです。
 
たしかに、自分(親)が築き上げてきた財産を子に任せることに不安を感じるのは当たり前かもしれません。
 
家族信託をせず自分で管理し続ける選択肢もあるでしょう。
 
しかし、認知症等で意思判断能力が喪失してしまうと、途端にアパートの経営は立ち行かなくなります。賃貸契約や修繕などすべての契約行為ができなくなるからです。
 
空室があっても賃貸募集できない、建物を改修したくてもできないなど、どうすることもできないアパートがあることで配偶者や子が大変な思いをするかもしれません。
 
そこで本記事では、アパート経営を託しても子が困らないために家族信託する前にしておきたいことをお伝えします。
 
今回のポイントは以下の通りです。
 

・財産の管理に必要な情報をしっかりと子に伝えて引き・子がアパート経営で困らないようにするには、アパートの入居者や賃貸収支などの状況や、建物の改修計画といった経営に欠かせない情報をしっかりと子に伝えること。
 
・賃貸募集や物件管理など実務上のサポートが必要なときは不動産賃貸管理会社に委託すること。
 
・相続対策としてアパートの建て替えや売却などの判断については相続に精通した不動産コンサルティング会社に依頼する。
 
・家族信託をする前に親(委託者)と子(受託者)で話し合い、アパートの状況の共有やサポート体制などをあらかじめ整えておくことが重要。

 
 
■関連記事■
相続対策に成功する家族と失敗する家族の違いとは?ゼロからわかる相続対策の進め方
 
 

 アパートを信託する方法

握手
 
アパートを家族信託で子に託すには、次のことが必要です。
 

・所有者(親:委託者、受益者)と託される者(子:受託者)とで信託契約書を締結する
 
・法務局で信託登記の手続きをする

 
この2つをもって子が親に代わってアパート経営をすることができます。
 
より詳しく家族信託を知りたい方は「家族信託ってなに?概要や仕組みをわかりやすくイラスト解説!」をご覧ください。
 

 誰にどのような権利を持たせるのか決める

家族信託するときは、まず託す相手(受託者)やどのような権利を持たせるかを決めなければなりません。
 
受託者には本人(親)の財産の管理や処分の権限を持つわけですから、できれば安心して託せる人が好ましいですよね。
 
家族信託
 

誰に託すか

赤の他人に託すのはさすがにちょっと不安でしょう。家族や親族内に信じて託せる人がいれば最適です。
 
親よりも若い方の方が認知症や死亡リスクが低いので、受託者になるのは子であることが多いです。また、当社の経験上、受託者になっている方の基準として次のことが挙げられます。
 
・子の中での年長者(長男、長女)
・親の生活のサポートをしている
・親の近くに住んでいる
・時間的な余裕がある
・不動産の専門的な知識を有している など
 
親や家族がひとりにすべて託すのは大変、少し不安もあるというときは、受託者を2人にしたり、信託監督人というサポート役をつけることがあります。
 

どのような権利を持たせるか

家族信託では、アパートの管理、処分といった権限を子(受託者)が持つことになります。
 
もしアパートを売却して欲しくないのなら処分権限は外さなければなりません。
 
処分権限をどうするか判断基準の一例
(1) 相続人の子たちでアパートをどうするか決めていい
(2) アパートの資金繰りが悪化、建て替えが困難などのとき
(3) アパートがあることで遺産分けが難しくなる
(4) アパートを欲しいと言っている子がいない
 
など、「このようなときには売却してもいい」というお考えでしたら、処分権限は外さない方が良いでしょう。
 
子がアパートは必ず欲しい!と希望してその意思が変わらないのであれば処分権限を外してもいいかもしれません。
 
なお、この処分権限は、親の意思判断能力があるうちなど一定条件のもと、契約した後に外すことも、契約後に追加することもできます。
 

 家族信託する前にしておくべき5つのこと

チェックリスト
 
家族信託さえすればアパート経営は大丈夫でしょうか。
 
これは大丈夫な面もあれば、家族信託しただけでは大丈夫ではない面もあります。
大丈夫な面は、オーナー(親)の意思判断能力が喪失しても子(受託者)がアパート経営を続けられることです。
 
一方、大丈夫ではない面は「親がおこなってきたアパート経営を子も同じようにできるのか?」ということです。
 
アパート経営に関係することを子に伝えておかなければ、うまくいくとは言い切れません。
 
これからアパートを家族信託する前にやっておきたい5つのことをお伝えします。
 

 1.アパートの現状を伝える

当たり前のことですが、アパートがどこにあって部屋数や賃料収入、建物の状況などを受託者である子に伝えることが必要です。
 
そして、これまで起きた問題とその解決方法、いま抱えている問題なども詳しく伝えることが、より重要です。
 

賃料収支などに関する情報

収入と支出などは、大雑把にではなく事細かに伝えましょう。
 

収入の例
□ 貸室ごとの賃料、管理費
□ 月極駐車場の賃料
□ トランクルームや専用庭など付帯設備の利用料
□ 水光熱費(オーナーが集金し、オーナーが水道局等へ支払うケース有り)
□ コインランドリーなどの利用料
□ 電柱の設置料(NTTや東京電力から支払われる地代)

 

支出の例
□ 固定資産税、都市計画税
□ 借入金の総額、毎月の返済額
□ PM費用(いわゆる入居者管理で、賃貸管理会社に支払っている)
□ BM費用(建物の保守管理費用で、エレベーターや清掃の会社などに支払っている)
□ インターネットやCATVなどの回線料の負担
□ 町内会などの組合費
□ 火災保険料
□ 所得税、住民税(直近3年分程度の確定申告書で確認)
※PM=プロパティマネジメントの略で、一般的に賃貸管理会社のことを指します。
※BM=ビルメンテナンスの略で、清掃会社や建物修繕をおこなう会社を指します。

 
管理会社に管理を委託していたら毎月の収支報告書に記載があるのでそれで確認できます。確定申告書が手元にない場合で顧問税理士がいれば取り寄せましょう。
 

土地や建物などの問題点

土地や建物、入居者とのトラブルなども共有しておきましょう。
現状起きている問題点の他に、これまでの問題点とその解決方法について子と共有しておくと、同じようなことが起きたときの対処方法が分かります。
 

土地の問題例
□ 土地の境界で隣地と揉めている
□ 隣地の水道管などがアパートの地中を通っている(被越境)
□ 敷地にあるブロック塀が隣地に入っている(越境)
□ 地中に廃材やガラ、汚染物質などが埋まっている
□ 大雨が降ると敷地が水浸しになる。水害エリアである
□ 崖下、崖上に土地があるが、擁壁が古くなっている など

 

建物の問題例
□ 天井や窓枠から雨漏りがある
□ 壁などに亀裂がある
□ 外壁塗装や防水、給排水管などが耐用年数を超えている
□ アスベストが含まれている
□ 耐震性に問題がある など

 
問題ではありませんが、入居者の入れ換えの度にリフォームが100万円以上かかるなどコスト負担が大きいものも伝えておきましょう。
 

入居者との問題例
□ 入居者同士の騒音トラブルがある
□ 滞納の常習犯がいる
□ 賃料増減の請求で合意できていない
□ 更新料の支払いがなく、法定更新になっている
□ アパートの敷地や貸室で過去に事件や事故があった
□ 設備交換などを必要以上に求めてくる など

 
このような問題点をしっかり共有しておくと、いざという時の対応が後手に回らず、これまでのやり取りの情報があるため、入居者や関係会社の言いなりにならず、素早く対応できるようになります。
 
「あなたの親のときはちゃんと対応してくれていた」なんて相手方に言われたときに、親がどのような対応していたかを子が知っておくだけでもだいぶ対応が変わります。
 

 2.アパートの関連書類を整える

アパートの現状を伝えるときに、口頭でなく書面があったほうがいいですよね。
代表的な書類をお伝えしますので、ご用意ください。
 

・売買契約書(アパート購入)
・建築時の請負契約書(アパート建築)
・建物竣工図面
・建物の確認済み証、検査済み証
・土地測量図、隣地の方と締結する境界確認書
・物件の告知書
  近隣の方とのトラブルの有無(土地境界点を巡る紛争、ゴミ出し問題など)
  不動産の問題点(土壌汚染、アスベスト、塀や樹木の越境物の有無など)
・賃貸レントロール(収支表)
・賃貸借契約書、賃貸申込書、入居者情報(身分証など)
・滞納やクレームの履歴
・過去の修繕履歴書や、今後の修繕計画書
・管理会社との管理契約書、担当者 など

 
このような情報があることで不動産の状況をより正確に把握できます。
 
もし、これら情報が手元にない場合は、
(1)管理会社に請求する
(2)不動産会社等に情報収集と問題点の把握を依頼する
などで対応しましょう。手元にないからと言ってそのままにしておくと、いざ管理を託す時に子が困ってしまいます。
 

 3.アパート経営のTODOリストを作成する

物件の情報があるだけでも子はずいぶんと助かりますが、アパートであればクレームの対応方法など実務的なことについても伝えられるようにしましょう。
 

 
これまでどのような対応をしてきたのかを伝えると、子はそれを基準にしっかりと対応できるようになります。
 

 4.専門家にアパート経営の相談ができる環境をつくる

アパートを今後どのようにするのか、重要な決断に迫られたとき専門家から公平なアドバイスがもらえる環境があるほうがいいでしょう。
 
まずは家族信託契約を組成してくれた司法書士などの専門家がパッと思いつきますね。
そしてその専門家から、不動産と相続に精通した不動産コンサルティング会社を紹介してもらうことでもいいでしょうし、インターネットで【不動産 相続 家族信託 プロ】のように検索して連絡してみてもいいでしょう。
 
『家族信託したアパートの実務上や相続のことを専門家に相談できる』環境を作ることで、親としても安心ですし子も不安が減ることでしょう。
 
実際に私たちも親や子の相談役として相談を受けアドバイスしています。
 

専門家選びの注意点

・家族信託と信託財産に詳しく公平なアドバイスをしてくれる専門家かどうか。
・不動産にも精通していることが好ましい。
 もし詳しくないようであれば、相続不動産のコンサルティング会社を紹介してもらえるか確認しましょう。
・報酬がかかる。

 
このようなことを加味して検討しましょう。
 
そして
□ 相続対策(分割、納税、節税)を立てることができる
□ 相続税評価額と税額を算出できる
□ アパートを残したほうが良いのかどうか客観的な判断材料を用意できる
など、家族でできること、できないことを明確にし、依頼内容を決めましょう。
 
専門家を頼って得られる価値は、適切な選択肢・情報の提供があることだと考えています。
子の財産管理に不安があるときは、これらの提供がある環境を作っていくことが、不安を取り除く方法でしょう。
 

■関連記事■
家族信託の相談は誰にする?あなたが安心して任せられる専門家を見極める3つのポイント
 

 5.名義変更の手続き

家族信託を組成したら、賃貸借契約やライフラインなどの名義変更をします。
 
詳しくは、「家族信託契約後に不動産で必要な手続きとは?忘れがちなポイントをやさしく解説」にまとめましたのでご覧ください。
 
賃料振込先が親名義の口座のままだと、振り込まれた賃料を子(受託者)が管理する口座へお金を移動する手間が発生するので、早め早めに準備しておくことを推奨します。
 
本記事を読んでいただいた方へ、プロサーチ株式会社では、アパートを家族信託したほうがいいのか、信託見積もりが欲しい、信託後の注意点や、いますべきことなどについて無料相談をお受けしています。
 
アパートを家族信託するときの信託組成サポートや、実務上のアドバイスや、各種手続きをいたします。お気軽にお問合せください。
 

 

 
 

 まとめ

 

・子がアパート経営で困らないようにするには、アパートの入居者や賃貸収支などの状況や、建物の改修計画といった経営に欠かせない情報をしっかりと子に伝えること。
 
・賃貸募集や物件管理など実務上のサポートが必要なときは不動産賃貸管理会社に委託すること。
 
・相続対策としてアパートの建て替えや売却などの判断については相続に精通した不動産コンサルティング会社に依頼する。
 
・家族信託をする前に親(委託者)と子(受託者)で話し合い、アパートの状況の共有やサポート体制などをあらかじめ整えておくことが重要。

 
 
自分(親)が築き上げてきた財産を子に託すことは勇気や覚悟が必要でしょう。不安があるのも当然だと思います。
 
しかしそれは子にとっても同じかもしれません。
しっかりと財産管理するためには、親が知っているアパートの情報をすべて子に伝えることや、専門家に相談できる環境を整えるなどが必要だと考えています。
 
このような不安がある方は、家族信託と相続、不動産に詳しい専門家に相談することをお勧めします。

 
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不動産を家族信託する方法と信託後の売却方法とは?不動産のプロが徹底解説

 

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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

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