相続税納税のための「不動産売却」はなぜ時間切れになるのか?活動期間「4.5ヶ月」の衝撃と対策

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相続税納税のための「不動産売却」はなぜ時間切れになるのか?活動期間「4.5ヶ月」の衝撃と対策写真

2021.6.29
更新 2025.12.31

 
相続税は、相続発生の翌日から起算し10ヶ月以内に原則現金一括払いで納めます。
 
潤沢な現預金があれば問題ありませんが、資産の多くが不動産である場合、その売却代金を納税資金に充てるケースが多々あります。
 
「10ヶ月もあれば間に合うだろう」と考えがちですが、実務の現場では、事前の準備がゼロであれば、実際に売却活動に充てられる期間はわずか4.5ヶ月しかありません。
 
本記事では、納税期限に間に合わせるための不動産売買スケジュールを徹底解説します。専門家の皆様が、お客様(親世代)に「元気なうちの準備」を促す際の指針としてご活用ください。
 
今回のポイントは以下の通りです。
 

実質の活動期間:10ヶ月のうち、売却活動に使えるのは約4.5ヶ月
 
遅延のリスク:財産調査や分割協議の滞りが、即「納税遅延(延滞税)」に直結
 
生前対策の重要性:確実な納税には、生前の財産目録作成と不動産の問題解消が不可欠

 
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 相続での不動産売買スケジュール

カレンダー
 
相続の申告期限は、相続発生日の翌日又は相続があることを知ってから10ヶ月です。
 
不動産を売却する時間はどのくらいあるのか、不動産売却や相続の準備をしてきていないご家族の相続発生から申告期限までのスケジュールを確認してみましょう。 
 
(例)
1月1日相続発生
相続人2名以上
不動産(土地)を売却して納税する
 


 
※相続発生からの不動産売却のための一般的なスケジュールです。この他に、準確定申告等の手続きが必要です。
 
この表の通り、どの不動産を売却するのか、誰がその不動産を相続するのかを決めてからスタートするので、不動産売却に使える時間は、6月1日から9月15日までのおよそ4カ月半です。
 
相続発生した日からすぐ着手できるわけでありません。
 
相続で不動産を売却するためには大きく4つのパートに分かれます。

(1)財産調査・相続税計算
(2)遺産分割協議・相続登記
(3)不動産調査・売却活動
(4)不動産の売買契約・決済

それぞれの検討事項や諸々手続きがあるのです。

 
以下ではパートごとに行うことをお伝えします。

 

 パート1:財産調査、相続税計算

〔必要期間〕(2ヶ月~)
 
不動産、通帳(現預金)、有価証券、家財、生前贈与、生命保険金などあらゆる財産を調査し目録を作成します。遺言があれば家庭裁判所での検認等の作業も必要です。
 
そして、不動産など全資産の相続税評価算出し、相続税が課税されるか確認します。
 
税理士の選定・依頼だけでも1ヶ月程度かかるケースは珍しくありません。
 

 パート2:遺産分割協議を終え相続登記(2.5か月~)

 
不動産を売却するには、相続登記が完了していることが大前提です。
※2024年4月1日より相続登記が義務化されました。戸籍謄本の収集や分割案の合意がスムーズに進んで初めて、最短2.5ヶ月で完了します。
 
遺産分割協議は個人でも用意できますが、”決められた書き方“がありますし、被相続人の戸籍謄本などの収集も必要ですから、司法書士等の専門家に依頼したほうが確実ですね。
 
 

 パート3:不動産調査と売却活動(2か月~)

〔必要期間〕不動産調査/価格査定から買主を決定するまで、最短で2ヶ月
 
・不動産会社による価格査定:1週間
・売却のための詳細調査、各種準備(入札、測量など):1週間
・不動産売却活動:1ヶ月半
 
確実に期限内に成約させるには、一般的な仲介(一般媒介)だけでなく、限定入札などの検討も必要です。また、以下の資料の有無が成約スピードを左右します。
 

1.土地測量図
2.隣地や道路との土地境界確定書
3.樹木やブロック塀などの越境物の有無
4.(前面道路が私道の場合)私道の通行や掘削の承諾書面
5.建物の竣工図面
6.最新年度の固定資産税納税通知書
7.近隣住民の方との取決め書(あれば)
8.購入、建築時の契約書や重要事項説明書、パンフレット等
9.管理規約、修繕計画書(マンションの場合)
10.増改築や修繕履歴の書類(あれば)

 
※アパートなどの収益不動産は、これらの他に、賃貸借契約書や管理委託契約書、修繕履歴などを求められます。
 
「不動産会社がやることだろう」と思わずに、お客様の納税までのサポートと捉えて事前準備についてお知らせしましょう。
 
不動産会社が登場するのは“売却の意思が決まったとき”が多いため、生前から携わることはほとんどありません。つまり、不動産仲介会社以外の専門家の皆さまのサポートが必要になるわけです。
 
不動産会社との媒介契約の選び方や、売却方法についてはこちらの記事をご覧ください。
 
不動産の3つの媒介契約とは?お客様に今すぐお伝えできる、相続した不動産を売るときに最適な契約方法
 

 

 パート4:不動産の売買契約、決済(1か月程度)

 
買主が見つかっても、決済(引渡し)条件として「境界確定」や「越境解消」を求められると、そこからさらに2〜3ヶ月を要します。これらが未了のまま活動を始めると、納税期限に間に合わないリスクが激増します。
 
大切なポイントとして、『契約条件』をしっかりと理解することです。分からないことは分かるまで何度も不動産会社に説明を求めましょう。必要に応じて条件交渉も必要です。
 
不動産売却に慣れている方は少数ですから、売買条件が自分にとって有利なのか不利なのか、売買契約書を見ても見慣れない言葉が並んでいるので理解までに時間がかかるのではと思います。
 
 
さて、売買条件が成就していれば、不動産の引渡し(決済)ですが、以下の条件が付いていると売買契約から1ヶ月では終わりません。

 

・土地境界確定(通常、着手から2~3ヶ月かかる)
・越境物の解消(軽微なものでも1ヶ月以上かかる)
・私道の通行掘削承諾書の取得(1.5ヶ月以上かかる)

 
これらは売買の引渡し条件になる項目になることが多いです。

 
遅くとも売買活動を始めるころ(パート3)にはこれらの項目に着手していて、売買契約時点からあと1ヶ月以内に作業が終わる目途がついていなければなりません。

 
契約条件が一つでも成就しなかったり、作業が長引いたりすると相続税の申告期限に間に合わないこともあるので要注意です。
 
 

 売却活動中に起こる思いがけないトラブル

リスク・トラブル
 
相続発生日から申告期限までの相続と不動産売買スケジュールをお伝えしました。しかしこれは『すべてが順調に進んだ理想のスケジュール』です。
 
相続や不動産の現場では次のような思いがけないことが起こります。
 
 

「財産調査が終わらず、その他の手続きがストップする」
 
書類があちらこちらに散らばっていて、財産把握が進まないことがあります。
書類が整わないと相続税の計算すら正しくできないことや、遺産分割の話し合いもできません。相続税や財産状況が分からないと、納税のための財源が足りているのかどうかさえ分からないままです。

 

「相続人間の遺産分割協議がまとまらず(争族)、売却が進まない」
 
誰が相続するのか遺産分割協議が終わらないと、不動産の相続登記ができません。そして、この相続登記ができていないと不動産の売却はできません。

 

「土地の境界確定測量など条件が成就せず、決済できない」
 
不動産の売買条件が成就しないと決済できません。(引渡し日の延長又は契約解除)

 
これら一つでも停滞すれば、申告期限を過ぎてしまい、「延滞税」が発生します。 (※令和8年度の延滞税:期限後2ヶ月以内は年2.8%、それ以降は年9.1%)
 
参考:国税庁HP

 
定められた期限までにきっちり納付して、延滞税は払わないようにしたいですね。

 
専門家がアドバイスすべき「生前準備」の三原則

 
お客様に「延滞税」を払わせないために、専門家として以下の3点を提案しましょう。

 
財産目録の作成(パート1の短縮) 「何がどこにあるか」を書き出しておくだけで、死後の調査期間を数ヶ月短縮できます。

 
相続税の概算把握(納税額の可視化) 「いくら売る必要があるのか」を事前に知ることで、売却対象物件をあらかじめ特定できます。

 
不動産のリーガルチェック(パート3・4の事前着手) 境界未確定や越境、私道承諾などは、親が元気なうちに解消しておくのが最もスムーズです。
 
 

 まとめ

 

・実質の活動期間:10ヶ月のうち、売却活動に使えるのは約4.5ヶ月
 
・遅延のリスク:財産調査や分割協議の滞りが、即「納税遅延(延滞税)」に直結
 
・生前対策の重要性:確実な納税には、生前の財産目録作成と不動産の問題解消が不可欠

 
専門家の皆様もご経験があるかと思いますが、相続発生時に準備が100%整っているお客様は極めて稀です。
 
お客様は「何をすればいいか分からない」という状態です。まずは**「パート1:財産目録の作成」**から着手するよう促してみてください。市販のエンディングノートでも構いません。書き出すことから全てが始まります。
 
不動産売却を伴う相続対策は、スケジュール管理が全てです。 プロサーチでは、全国の不動産を対象に、相続発生前の現状分析から、発生後のスピーディーな売却支援まで幅広くサポートしております。

 
「この物件、期限内に売れるだろうか?」
 
「クライアントの不動産、今売却したらいくらになる?」

 
無料査定・スケジュール診断も承っております。お気軽に本メールへご返信ください。
 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)


20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナー(年100回)などで情報を発信している。
 
・公社)全日本不動産協会東京都本部千代田支部教育研修等の副委員長
・国土交通省・公社)不動産流通推進センター 良質な不動産コンサルティングの普及・定着に向けた検討委員会(2025年~)実務委員着任
・不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士の資格講師等を歴任
・司法書士会、税理士事務所、不動産会社、相続診断士会各支部、金融機関等での講師等
 

 

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