いらない山林の相続税を払う前に!プロが伝える5つの山林処分方法

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いらない山林の相続税を払う前に!プロが伝える5つの山林処分方法写真

2021.3.30
更新 2024.2.20

 
山林を相続すると、例え使い道がなくても相続税・固定資産税といった税金の負担や、山火事や崖崩れのときの所有者責任を負うなど、相続人に大きな負担がのしかかります。
 
このような負担を感じるご家族から、相続前に山林を処分したいというご相談が増えてきました。
 
どのような経緯で山林を所有するに至ったかを訊くと、昭和バブル期に宅地開発を期待して購入したり、先祖の代から山林を相続したり、など取得経緯は様々です。
 
とくに、山林や原野を所有している方で、宅地化による価格高騰を見込んで購入したけど、不動産開発会社の倒産などで頓挫し、そのまま放置されていることが多いようです。
 
その中には『原野商法』と呼ばれる土地バブルを謳った詐欺被害もありました。
 
山林は、宅地と比べると欲しい人が少ないので、売却したり賃貸したりといったことが難しく、手放せずに困っているご家族が非常に多いです。
 
本記事では、山林の相続税評価額の求め方や、処分したい場合の方法についてお伝えいたします。
 
ご自身やご家族が山林を所有していてお困りの方は、ぜひ読み進めてください。
 
本記事のポイントは以下の通りです。
 

・山林を次世代へ残すときの税金や、管理責任の負担を把握しておくことが重要。
 
・山林の主な処分方法は5つある。
 ①近隣の山林所有者への売却
 ②林業事業者への売却
 ③森林組合に売却先をあっせんしてもらう
 ④相続土地の国庫帰属制度を利用する
 ⑤引き取りサービスを利用する
 
・買い手がいない場合は、事業者による引き取りサービスを検討する。
 
・2023年4月27日に施行された「相続土地の国庫帰属制度」も選択肢の一つ。
 
・遺産分割で兄弟等の共有とすると、後々の処分に困ることになる。
 
・相続登記の義務化により、いらない不動産でも費用を支払って登記することになる。

 
 

 山林の相続税の計算方法

お金と電卓
『山林』は、大きく3種類に分けられます。
 

1)純山林:人が住んでいない山林
2)市街地山林:周辺に住宅がある山林
3)中間山林:純山林と市街地山林の中間

 
まずは、自分や親が持っている山林がどの種類になるのかを確認してみましょう。
所在地番が分かれば、国税庁ホームページ(相続税路線価)からどの種類に分類されているのか調べることができます。
 
山林の相続税評価方法は宅地とは異なり、下図の倍率表を基準に求めます。
 
国税庁ホームページ(相続税路線価) ⇒ 調べたい地域⇒ 評価倍率表(一般の土地等要用) ⇒ 調べたい市区町村をクリックすると、下記のような倍率表を確認できます。
 
山林の列にある略字は、純=純山林、中=中間山林、比準=市街地山林です。
 

 
上記は栃木県那須塩原市の倍率表です。
 
例として、『那須塩原市折戸の「分譲地、別荘分譲地内及び県道沿」以外の地域に山林を所有している』と仮定し、相続税評価額を求めてみます。
 
仮に、固定資産税評価額が1,000,000円とします。
 
山林の縦列に『中5.1』と書いてありますよね、この『中』は『中間山林』の略です。
そして『5.1』が相続税評価額を求める際に使う数字です。
 

固定資産税評価額1,000,000円×倍率5.1=相続税評価額5,100,000円
 
もし相続税率が40%であれば、ざっくりいいますと、この折戸の山林を相続するために5,100,000円×40%=2,040,000円の相続税を負担することとなります。(基礎控除などの計算は考慮外)

 
純山林も同様の計算方法です。
 
市街地山林(倍率表では『比準』)は、宅地とした場合の相続税評価額から『山林を宅地に変えたときの造成費』を控除して求めます。
 
※相続税評価額や相続税の計算は、必ず税理士へ相談してください。
 
 
■関連記事
その不動産、子にとっては不要かも!?相続か処分かの判断方法と今からできる対策!

 
 

 山林所有者の管理責任

山林
山林を所有している方の管理責任として、崖崩れ、落石などで通行人等に怪我を負わせてしまったときに損害賠償責任を負うことになります。
 
山林を相続した方にこのことを伝えると「そんなこと知らなかった」とよく驚かれますが、土地の所有者である以上、管理責任がついて回ってしまうのです。
 
しっかり管理する必要があるため、土留めや擁壁などの万が一のときの予防策を講じるなどが必要でしょう。
その施工費用は広さなどにもよりますが100万円以上かかることもあります。
多額の費用負担が生じるため、なにもせず放置しているケースが多いのも実情です。
 
管理責任は嫌だからと相続のときに山林だけを相続放棄することはできません。
相続放棄するときは全ての遺産を放棄することになるので、山林だけなど、特定の遺産だけを放棄することは認められていないのです。
 
 
■関連記事
空き家を放置すると固定資産税が6倍?!いま知っておくべき相続空き家にまつわる税制度

 
 

 5つの山林処分方法


それでは、山林を処分したいと考えたとき、まず初めにどのような方法を検討すればよいのでしょうか?
 
山林を処分するためには、下記の5つの手段を検討しましょう。
 

処分方法
①近隣の山林所有者への売却
②林業事業者への売却
③森林組合に売却先をあっせんしてもらう
④『相続土地の国庫帰属制度』を利用する
⑤引き取りサービスを利用する

 
買い手の条件によっては、土地境界や樹木の種類の明示などを求められますので、売却するためにかかる費用を確認しておくことが必要です。
 
山林は土地面積が広大であるため、土地境界を明らかにする費用は百万円単位でかかるしょうから、境界明示が購入条件にあるのかどうかよく確認するようにしましょう。
 
上記①近隣の山林所有者への売却は、一番手軽にあまり費用がかからずに手放すことができる手段です。
 
ステップ1 法務局で公図を取得し隣地の登記簿を取得
ステップ2 登記簿に書かれた所有者へ山林を買い取りしないか手紙を出す
ステップ3 買い取りの意思があれば、売買条件を話し合いして売却
 
上記②や③の林業事業者への売却や森林組合を頼ることもやってみましょう。
不動産仲介会社は山林取引が苦手なところばかりです。
病院と同じように、それぞれの専門分野がありますので、山林は林業や森林組合へ相談してみることがいいでしょう。
 

 注目される、国と事業者の引き取りサービス

特に、売れない、貸せない山林を手放せずに困っている方に朗報なのが、上記の④と⑤です。
 
④「相続土地の国庫帰属制度」を利用する
2023年4月27日から施行した「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下、「相続土地の国庫帰属制度」という)」を利用して、国にお金を支払って(負担金)土地を引き取ってもらう。
 
⑤引き取りサービスを利用する
山林の所有者が引き取り料金を支払って、不動産引き取り事業者に引き取ってもらう。
 
この2つの方法の登場によって、売れなくて困っている、いらない不動産を手放せる可能性がぐんと高くなりました。
 

引き取り事業者による引き取り

売れなくて困っている不要な不動産を有料で引き取ってくれる事業者がいます。
 
■参考企業
遊休資産0へ。売れない土地の引き取り(Land Issues株式会社)

 
事業者によって引き取り料金は異なりますが、土地1筆(地番1つ)あたり15万円+所有権移転登記料等の低価格で引き取っている企業もあります。
 
引き取り料金を支払うことで、所有者の管理責任や相続での遺産分けや相続登記などの負担から解放されます。
 
しかし、所有者がお金を支払ってまで山林を処分するなんて……と思いますよね。
 
相続税負担がある方は、一度検討してみたほうがいいかもしれません。
 
 
先程の那須塩原市折戸の山林を例に見てみましょう。
 

【相続する場合】
相続税2,040,000円を負担する
 
【引き取りサービスを利用する場合】
・折戸の山林は5筆
・1筆150,000円(+地続きの土地は50,000円/筆)

 
引き取り額は、150,000円+(4筆×50,000円)=350,000円+α(別税)
※+固定資産税や所有権移転費用等(+αと表記します)です。

 
つまり、相続する前に引き取ってもらうことで、負担する予定だった相続税が無くなるため、相続税2,040,000円−350,000円(+α)=1,690,000円も財産を多く残せることになります。
 
実際、引き取りのご相談が後を絶ちません。
売れない時の最後の砦として、引取料金の見積もりを取っておくことも必要でしょう。
 
LandIssues株式会社では無料見積りもしてくれるようなので、お問い合わせしてみてはいかがでしょうか。
 
不動産引き取りサービスで相続問題の不安を解消しませんか?
引取り事業説明(LandIssues株式会社)
 

相続土地の国庫帰属制度

一定要件を満たせば、有料ではありますが国が引き取ってくれます。
全ての財産を放棄しなければならない相続放棄と異なり、“山林だけ”、“畑だけ”など、相続人が手放したい土地を選ぶことができます。
 
売れない不要な土地で悩んでいる方にとっては朗報ですね。
 
要件は、⑴ヒト⑵モノ⑶おカネの3つあります。
 
ヒトは、相続や遺贈で取得した相続人であること
モノは、10の要件をクリアしていること
おカネは、最低20万円からの負担金を支払うこと(土地の種類ごとに計算式がある)
 
詳しくは、関連記事:『どうなる土地問題?相続した土地を放棄できる制度が創設。売れない貸せない不動産の処分方法も解説!』をご覧ください。
 
たとえば、モノについての要件は、更地であること、土地の境界を明示することなどが求められ、竹林や管理費負担のある別荘地はNGなどがあります。
 
国が引き取ってくれない10の条件も、上記の関連記事にて図を用いて分かりやすく説明しています。
 
どうしても売却できないようであれば、引き取りサービスや「相続土地の国庫帰属法」利用も視野に、手放す方法を検討することが必要でしょう。
 
相続土地国庫帰属制度を分かりやすく解説したページはこちら
 

 相続登記で気を付けること

注意点
最後に、『相続した不動産を登記する際に気を付けたいこと』についてお話しいたします。
 

 共有名義での登記は避ける

 
遺産相続の現場では、山林は誰も欲しがらないからと、仕方なく『共有』で済ませてしまうケースがあります。
しかし、処分を考えているのであれば、兄弟姉妹間での共有は避けたほうがいいでしょう。
 
その理由は、共有者に相続がある度に不動産の所有者の数が増えていき、売却するときの手続きがどんどん難しくなるためです。
 
中には連絡も取れない人がいると、売却先を見つけられたとしても、所有権移転手続きができずに売買の話が破談になることもあり得ます。
 
特定の相続人に相続させる場合は、前述した相続税や管理責任の負担があるので、管理相当額をその相続人に渡しておくなど、遺産分割時にその点も考慮して話し合いをしましょう。
 

 相続登記義務化

相続で受け継いだ不動産の登記申請が、2024年4月1日から義務化されます。
 
相続で不動産を取得することが分かった日から3年以内に相続登記をしなければなりません。
 
留意するところは、2024年4月1日以前の相続で取得した不動産にも相続登記の義務があることです。
違反すると10万円以下の過料が課せられます。
 
皆さまが思っている以上に、遺産分割には時間がかかります。
 
財産の棚卸し、相続税の計算、他資産の価値(時価)などから相続人が納得する遺産分割を話し合いしていくので、時間も労力もかかるのです。
 
3年以内に話し合いを終わらせ、出来るだけ共有を避けるとなると、親が元気なうちから山林の資産の引き継ぎ先、処分方法などについて話し合いをしておいたほうがいいでしょう。
 
相続登記の義務化については、参考記事:相続登記の義務化はいつから?怠ると10万円以下の過料?!施行までに備えておきたいポイント | 遺産相続コンシェルジュ公式ブログ (pro-search.jp)で、今のうちから準備しておくべきことなどを詳しく解説しています。
 
 
プロサーチ株式会社では、老後や相続を理由とした不動産売却、処分に困っている不動産について、賢く売却する方法や引き取り方法の無料診断が可能です。
空き家の売却など処分活用方法についてもプロの目で診断しています。
 
どんな対策が必要か、何ができるのか気になる方は、ぜひこちらから無料診断をお試しください。
なお、ご相談者様に対して弊社からしつこい営業はしませんのでご安心ください。
 

 

 
 

 まとめ

本記事のポイントは以下の通りです。
 

・山林を次世代へ残すときの税金や、管理責任の負担を把握しておくことが重要。
 
・山林の主な処分方法は5つある。
 ①近隣の山林所有者への売却
 ②林業事業者への売却
 ③森林組合に売却先をあっせんしてもらう
 ④相続土地の国庫帰属制度を利用する
 ⑤引き取りサービスを利用する
 
・買い手がいない場合は、事業者による引き取りサービスを検討する。
 
・2023年4月27日に施行された「相続土地の国庫帰属制度」も選択肢の一つ。
 
・遺産分割で兄弟等の共有とすると、後々の処分に困ることになる。
 
・相続登記の義務化により、いらない不動産でも費用を支払って登記することになる。

 
山林の処分には、時間も労力もかかります。
本人(親)が元気な今のうちから取り組み、相続前に処分できるように検討していくことをおすすめいたします。
 
山林の処分については、相続土地の国庫帰属制度や引き取り会社にも精通した不動産会社などにご相談するようにしてください。
 
 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

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