マイナンバーが不動産取引に与える影響とは

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マイナンバーが不動産取引に与える影響とは

ついにマイナンバーの発送が順次始まり、平成28年1月1日から制度が始動する。

制度自体についての説明は色々なところで耳にしていると思うので、ここでは賃貸や売買等の不動産取引にとって、マイナンバー制度が今後どのように影響するのか?というポイントでご紹介したい。

 

平成28年以降にマイナンバーが関係する不動産業務

◆マイナンバーの情報提供が必要な人

自分の所有している不動産を、「法人」や「不動産業者」等に売る人または貸す人

 

 ◆マイナンバーの情報提供が必要な不動産取引条件

100万円ルール(主に不動産売買に適用)

売買・譲渡・交換等で同一の売主等に対する平成28年中の支払い価格の合計が100万円を超える場合

15万円ルール(主に不動産賃貸に適用)

家賃・地代・権利金・更新料・礼金・承諾料・名義書換料、あっせん手数料(仲介手数料等)で同一の貸主等に対する平成28年中の支払い金額の合計が15万円を超える場合

 不動産取引とマイナンバー

 

※注意

・法人に支払う不動産の使用料等については、権利金・更新料等のみが対象

・契約書の貸主は大家さんだが、実際の賃料は不動産管理会社が受け取っている場合、不動産管理会社は代行しているだけにすぎないため、マイナンバーの情報提供が必要となるのは大家さんのみ。(摘要欄に不動産管理会社へ家賃を支払っている旨を記載する必要がある。)

 

つまりこういうことである。

例えば、不動産の売買で、地主さん(個人)から不動産会社(法人)へ土地等の不動産が譲渡され、その金額が100万円を超える場合、法人は「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を作成する。

そしてそこにはお金を支払った相手方の氏名とマイナンバーを記載することが必要となるので地主さん(個人)は売却先の不動産会社(法人)にマイナンバー情報を提供しなくてはならなくなる。

 

また賃貸で言うと、年額15万円以上の家賃や地代を法人が支払う場合に「不動産の使用料等の支払調書」を作成するため、ここでもやはり個人の地主さんや家主さんは借主の法人にマイナンバー情報を提供する必要が出てくるのだ。

 

実務的な面

こうしたことから、不動産の買主や借主になる不動産会社等の法人や、その仲介をする不動産業者は、金銭を受け取る人のマイナンバーを把握することになるため、マイナンバーの管理義務が発生するのである。

 

しかしながらマイナンバー制度が着々と国民に浸透していく中で、悪用されるという懸念もあるのが実態ではないだろうか。

 

ちなみにマイナンバー制度のような国民番号制度は、日本以外の先進国の間では、かなり前から取り入れられているが、アメリカでは、この国民番号を使ってのなりすまし犯罪が多発している。実際、クレジットカードや銀行口座を本人になりすまして作って売る、というのがポピュラーな悪用方法のようだ。

 

こんな話を聞くと、不動産オーナーさんの中には、マイナンバー情報の提供がいくら義務とは言っても、そんなに簡単には提供したくないと考える人も少なくないだろう。

 

買主や借主となる不動産会社の立場としては、マイナンバーを提供する必要性を取引時にちゃんと説明することは勿論のこと、日頃からの信頼関係も大きく関係すると同時に、より厳格で管理の行き届いた企業体制が求められることになる。

 

もしも、地主さんや大家さんなどの個人不動産オーナーさんから信頼を得られなかった場合は、不動産取引がスムーズに行かないことも往々にして出てくるだろう。

 

また、不動産仲介業者としては買主や借主となる不動産会社等の法人が、オーナーさんのマイナンバーを悪用する可能性もある事を忘れてはいけない。これまでの作業とは別に、不動産会社等の法人がどの様にマイナンバーを管理しているのかを事前に確認するといった作業も増えそうだ。

 

マイナンバーが今後の不動産業界に与える影響

現在、日本では不動産取引報告が義務化されておらず、また「レインズ」の制度も一般のお客様からみれば、不動産業界の不透明さを助長させているように感じる。

 

今回のマインナンバーが広く普及し始めると、不動産一つ一つに所有者のマイナンバーが紐づけられ、マイナンバーで過去の不動産取引が全てデータベース化されることも考えられる。そうなると、過去の不動産売買取引事例等の情報を誰もが自由に閲覧でき、不動産業界の価格の不透明さが無くなる日が来るかもしれない。

 

その一方で、マイナンバーによって個人情報が流出し、マイナンバーの悪用による被害が出てくることも考えられる。

 

従って地主さんや家主さんのマイナンバー対策としては、今後は不動産会社を含めた あらゆる民間企業に対し、情報の提供目的が制度上正しいか、提供したマイナンバーを適切に管理しているかというのをチェックする必要が出てくる。

 

こうした利便性と危険性の両輪を併せもつマイナンバー制度、まだまだ情報は少ないがわたしたち専門家がしっかりと勉強をして、地主さんや家主さんが安心して不動産取引が行えるように、今まで以上にしっかりとしたサポート体制を築いていくことが必要となるだろう。

 

 

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス

今回は不動産業者の目線からお伝えしたが、一番不安になるのは、マイナンバーを渡す側の立場のお客様だろう。

業者としては、お客様の不安要素を取り除く事が最重要事項になってくる。国が始めたことだが、責任は民間にあるので、軽視せず、慎重にこの制度と向き合っていく必要があるし、各担当者レベルでもふんどしを締めなおして取り組んでいかなければならない感じた。(記:中田千太郎)

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