売却価格よりも相続税のほうが高い!? 今すぐ提案したい、地方にある不要な負の不動産の相続対策とは?

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売却価格よりも相続税のほうが高い!? 今すぐ提案したい、地方にある不要な負の不動産の相続対策とは?写真
2022.2.28
更新 2024.1.31

 
・地方に不動産を親が所有しているが、相続しても使う予定がない。
・管理費や固定資産税の負担だけでも大変。
・遠いので管理が大変だし、そもそも売れるのか貸せるのかも分からない。

 
「どうやったら手放せますか。どうしたらよいでしょうか?」
 
このようなお客様からの相談を受けたことはありませんか。
 
バブル時代の不動産は資産価値が上がり続け、換価もしやすい不動産を相続できるのは喜びでしたから、このような悩みなんてなかったでしょう。
 
しかし、現在はそうではありません。
売却活動に時間をかけても、価格を安くしても売却できない不動産があります。
 
最近は、このように呼ばれています「負の不動産」。
 
相続後に使う予定がないのであれば、相続人(子ども等)が固定資産税や管理費などの維持管理の面で大変な負担を背負うことになりかねません。
 
バブル期に購入した別荘地や、山林、畑など、『不要となる負の不動産(以下、「負動産」という)』の次世代に継がせない相続対策は、必ずと言っていいほど必要になってきます。
 
本記事では、特に地方にある負動産について、相続発生後にどのようなことが問題となるのか、また、所有者の生前に行っておくべき対策についてお伝えいたします。
 
読み続けていただくと、負動産に悩むお客様に対してどのようにアドバイスをすればいいのかがわかります。
 
本記事のポイントはこちら。

・負動産とは、あくまでも『子が使わない』場合のみ。親にとっては不要でも子が必要とするケースもあるため、親だけでなく子の考えも聞く必要がある。
 
・負動産の3つの問題点。
①売却のハードル ②保有するリスク ③相続税の負担が重い
 
・親が元気なうちに、不動産の時価や問題点の有無などを調査、売却や賃貸の際の判断材料を用意し、いつでも行動に移せる準備をしておく。
 
・山林や畑などの負動産は、時価より相続税評価額の方が大きくなるケースがある。相続税を支払ってまで相続するのか、生前に処分したほうがいいのか、親が元気なうちに親子で一緒に判断することが重要。

 
 

 『負動産』とは何か?

負動産
 
負動産とは、『子どもは使う予定がないのに、売れない不動産』のことを言いますから、地方にもあるでしょうし、都市部にもあります。
 
今回は、負動産の中でも、地方にある山林や畑、空き家・空き地が目立っている地域の負動産について、お話いたします。
 
 
お客様や専門家の方から、処分や活用についてのご相談を受けることが多い不要不動産は、次のようなものです。
 

・遠方で荷物も片付けられないままになっている空き家状態の実家
・場所の特定すら難しい山林
・荒廃した畑
・更地状態の別荘地
・原野商法で購入してしまった土地
・過疎化したエリアの住宅やアパート等

 
ちょっと想像しただけでも、なんだか売りたくても売れにくそう。
そもそも買ってくれる人がいるのかもわからない・・・、そして維持管理も大変そう。と感じる不動産ですよね。
 
そのため、なんとしてでも手放したい!というご相談が後を絶ちません。
 
地方の負動産は、都内などと比較すると固定資産税等は安いものの、税金以外にも様々な負担が生じたり、問題を抱えたりすることがあります。
 
これから、その起こり得る問題のうちの3つをお伝えしますね。
 

 負動産の3つの問題点

では、負動産を所有している場合には、具体的にどのような問題が起こるのでしょうか?
 
アパートや店舗などの賃貸用不動産は、地方になればなるほど借り手が減ってきているので、一旦空き家になると埋まるまで時間がかかったりします。空き家のまま状態が長引くケースが多いということですね。
 
さらに遠方となるとオーナー自ら管理ができず、管理会社に任せるしかありませんから、管理委託費をかけざるを得ません。
 
この他、3つの問題点があります。
 
①売却のハードル
②保有するリスク
③相続税の負担が重い

 
これらの問題点について、詳しくお話いたします。
 

①売却のハードル

都心部の物件であれば、買い手も多いでしょうから、売却は大きなストレスなく進められるでしょう。
しかし、地方の負動産となるとそうはいきません。
 
売却のハードルには、次のようなものがあります。
 

・需要と供給のバランスが偏っている。すなわち買い手が少なく、売り物件が多いエリアである。
・所有者の希望価格で売れないことが多い。相続税評価額よりも低廉である。
・価格が低いため、売却を手伝ってくれる不動産会社が少ない。
・売却価格よりも、測量費や建物解体、仲介手数料などの売却コストの方が高くつく。

 
など、売却したくても直ぐには売れない、そもそも売れないなどの可能性があります。
そうなると、売却のために、売却価格以上に自分のお金を持ち出さなければならないということが多分にあるのです。
 
売却が困難な負動産を処分する方法を知りたい方は、以下の記事にて詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
 
■関連記事
【令和5年最新版 相続土地の国庫帰属制度】 相続の専門家なら知っておくべき、売れない貸せない負動産を処分したいときの2つの方法

 

②保有するリスク

空き家の場合でも、所有者として、管理義務や有事の際の責任があります。
 
放火による延焼や、外壁が倒れて通行人が怪我を負うなどすれば、例えその家を利用していなかったとしても所有者として賠償責任を取らなければなりません。
 
お客様の中には、空き家が心配で定期的に見に行っている方もいらっしゃいますが、遠方の場合には直ぐに駆けつけられないこともあり、何か起こった際に迅速な対処ができずに被害が大きくなることもあるのです。
 
遠方にある空き家は、管理するだけでも一苦労です。
 

③相続税の負担が重い

首都圏の不動産と比較すると土地面積が広い不動産も多く、その場合には、【相続税評価額>時価】の図式となりやすくなるため、相続税が予想以上に発生する場合があります。
 
時価が低いため、相続した不動産を売却しても相続税の支払いに足りず、相続人の資金から捻出が必要となってしまうことにもなりかねません。
 
 

 地方の不動産を相続させるか?
 相続するか?

相続
 
このように問題が山積の負動産。
 
しかし、本当に必要のない不動産なのか?
子に残したくない親の気持ちが優先しすぎてしまい、とにかく処分しなければと思いこんでしまっていることもあります。
 
ここからは、地方の不動産を相続させるか(相続するか)どうかを判断するためのポイントについてお伝えいたします。
 

 資産の現状分析

まず初めに、不動産を含めた資産全体の現状分析です。
全体の資産がどうなっているのか、表に纏めるなどして数字や問題点等を把握し、皆で認識できる状態にすることが大切です。
 
資産の現状分析が完了したら、下記のポイントをお客様にご確認ください。
 
①不動産調査をして問題点を把握する
②相続税評価額と時価を求める
③親と子の意識を確認する

 

①不動産調査をして問題点を把握する

実際に現地に行ってみると土地の高低差があったり、細かく確認しないと分からない越境があったり、価格に直接影響する問題が見つかるケースが多くあります。
 
不動産の現状を正しく把握するためには、現地や役所等での調査が重要です。
 
調査の内容としては、下記のような観点から行います。
 

・現地や管轄の役所で不動産調査を行い、問題があるかを確認する。
・売却や賃貸等の需要があるのか調べる。
・不動産がいくらで売れるのか、貸せるのか価格査定する。
・その他の活用方法も含め、収益改善出来る点が無いかマーケット調査を行う。

 
不動産を詳しく調査することで問題が抽出され、どのような対策が必要なのかのステップを踏むことが出来ます。
 

②相続税評価額と時価を求める

不動産の相続対策をするためには、不動産の時価以外に相続税評価額も計算する必要があります。
 
前述の通り、地方不動産では【相続税評価額>時価(売れる金額)】という図式になりやすく、相続税を支払うために不動産を売ろうとしても想定していた金額で売れないことがあるため、相続評価額と時価の把握、そしてその比較も行いましょう。
 
生前に売るべきか否かの判断材料になります。
 

③親と子の意識を確認する

対象の不動産について、親にとって必要か?子どもにとって必要か?
 
話し合いをしてみると、親は不(富)動産だと思っていたが、子どもは不(負)動産だと感じていたなど、親子間の考えが異なっている場合があります。
 
例えば、親も子どもも不要と感じている場合には、負動産として生前に売却して早めに対策することが可能になります。
 
親と子それぞれの意識を確認することが、対策へと進むための大切なステップとなるのです。
 
 

 事例:親から相続した、売却価格よりも
 相続税のほうが高い土地

相続税
 
相続した不動産について相談に乗って欲しいとのことでご紹介いただいた、お客様Aさん。(都内在住、ご実家は長崎県)
 
Aさんは、ご実家へ年数回帰省する際に、親が所有している不動産について詳しく話を聞く機会が無く、詳細が分からないままに相続が発生してしまいました。
相続の手続きを進めていくと、空き家、底地、貸家、畑、山林等、土地面積5,000㎡にも及ぶ複数の不動産が有ることが分かりました。
 
Aさんのご希望としては、「今後住む予定もなく管理も大変なので、不動産は早めに処分していきたい。売却の手伝いをして欲しい」とのことで、プロサーチにご依頼いただきました。
 
 
まずは、現状把握も含め不動産調査をスタートしました。
 
しかし、実際に現地まで行ってみると、貸家のはずが空き家になって荒れ果てていたり、借地人が住んでいるはずが建物はそのままでこちらも人気が無い状態になっていたりと、契約形態と実態が異なっていることが分かったのです。
その他にも、マーケット調査をしていくと過疎化が進んでおり、一般個人へは売りにくいエリアであること、越境がある、測量を行いたくても隣地と連絡が取れない等、不動産売却の時に価格が下がってしまう要件が複数ありました。
 
調査後に売却活動をスタートしましたが、土地が広い事や不動産の問題点が複数あることにより、購入見送りが相次ぎました。
 
Aさんがこの5,000㎡の土地を相続するためには相続税の支払いが必要でしたが、最終的に見つかった購入希望者の価格は、なんと50万円だったのです。
残念ながら、その価格はAさんが支払った相続税よりも低い金額となりました。
 
今回の事例では、生前に親子間で詳細を話し合い現状把握して、不動産の問題点の解消や対策を行っていれば、相続発生後も子どもが相続税を支払わずに済むなど、困り事なく引き継ぐことが出来た可能性があります。
 
 

 地方不動産を所有しているお客様へ、
 専門家として出来るアドバイス

アドバイス
 
地方不動産を相続したお客様の中には、この不動産を今後どうしていけばいいのか全く分からないと深刻なお悩みを抱えている方がいらっしゃいます。
そして、財産価値の低い不動産の相談に親身に相談を受けてくれるところも少ないでしょう。
 
相続後にお客様やそのご家族が困らないためにも、生前に詳細な不動産調査や分析が必要になるのです。
 
地方の不動産を所有されているお客様には、ぜひ「次世代が困らないために、改めて現状分析から始めてみませんか?」とアドバイスしてみてください。
 
所有者の生前に対策を行うことで、具体的に次世代へどう引き継がせたいのか、次世代がどう引き継ぎたいのか、それぞれのご希望を把握した上で対策へと移っていくことが可能となります。
 

 今すぐに対策を行うメリットと対策の進め方について

現状把握を行った上で、特に不要不動産については生前に対策を行うことが大切です。
 
売却以外にも、行政への寄付・相続放棄・国庫帰属法・有料で不動産を引き取ってもらうサービスなどの手段がありますが、『その不動産が売れやすいか』によって対策が異なってきますので、実行可能なのか、費用がいくら必要なのか、といった検証もしましょう。
 
相続土地の国庫帰属制度の概要はこちら
 
引き取り会社の事業内容はこちら
 
上記サイトは弊社のグループ会社のLandIssues株式会社のものです。
 
また、万が一親が認知症になってしまっては相続対策がスムーズにいかなくなるため、親世代の年齢や目的によっては、家族信託や後見制度の検討も併せて行っていただくよう、ご提案ください。
 
相続や不動産の対策は、時間を味方につけることで選択肢がより広がります。
そのために、まずはひとつひとつしっかり確認し、細かくスケジュールを立てて早めに実行していきましょう。
 
■関連記事
家族信託ってなに?概要や仕組みをわかりやすくイラスト解説!

 
 

 遺産相続コンシェルジュより

 
本記事のポイントはこちら。

・負動産とは、あくまでも『子が使わない』場合のみ。親にとっては不要でも子が必要とするケースもあるため、親だけでなく子の考えも聞く必要がある。
 
・負動産の3つの問題点。
①売却のハードル ②保有するリスク ③相続税の負担が重い
 
・不動産を所有する親が元気なうちに、不動産の時価や問題点の有無などを調査、売却や賃貸の際の判断材料を用意し、いつでも行動に移せる準備をしておく。
 
・山林や畑などの不要不動産は、時価より相続税評価額の方が大きくなるケースがある。相続税を支払ってまで相続するのか、生前に処分したほうがいいのか、親が元気なうちに親子で一緒に判断することが重要。

 


相続後に不動産のご相談を受けるケースでは、「親の地方不動産をとりあえず相続したが、住む予定はないし管理も大変。売りたくても売りにくい不動産を貰ってしまって困っている」といったご相談が多いです。
 
また、自分たちや次世代が困らないためにも早期の対策が必要ですが、
「地方不動産を次世代には引き継がせたくない・・・」
と考えながらもなかなか対策が進んでいない、どう進めればいいか悩んでいる、というお客様もたくさんいます。
 
専門家として、まず何から始めるのか、筋道立ててひとつずつ検証していく必要があります。
 
プロサーチでは全国の不動産についてのご相談をお受けしておりますので、皆様のお客様で地方不動産についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。(記:松尾企晴)

 

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