Vol.2 処分に困る土地に朗報!令和5年スタートの「相続土地の国庫帰属制度」とは

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Vol.2 処分に困る土地に朗報!令和5年スタートの「相続土地の国庫帰属制度」とは写真

前回の記事(Vol.1 知らないでは済まされない!売れない負の不動産が抱える問題)で、負の不動産がかかえる、税負担や責任などの問題についてお伝えしました。
 
これまで、負の不動産は相続放棄(プラスも含めて遺産のすべてを相続しない)を選択すれば手放すことができました。
しかし、プラスの財産が多いなどの理由で選択できないお客様は、代々引き継いでいくしかありません。
 
そこに救いの制度が創設されました。
『相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下、「相続土地の国庫帰属制度」といいます)』で、一言でいうと、【相続した土地を、お金を支払って国に引き取ってもらう】です。
 
本メルマガでは、相続土地の国庫帰属制度で押さえておきたい3つの要件をお伝えします。
 
この記事を読むと、当制度を検討する際にまず押さえておきたい情報を得ることができます。
 

 相続土地の国庫帰属制度とは


 
現在、日本には所有者不明の土地が九州本島の面積以上も存在するとも言われています。
所有者不明による問題を防ぐために、相続で取得した土地を国が引き取るという『相続土地の国庫帰属制度』が創設されました。
 

【所有者不明の土地の問題】
・固定資産税を徴収できない
・土地活用したいときや、災害発生時に、所有者に連絡が取れない
・土地所有者を探すコストがかさむことにより財政が圧迫される
・管理されず荒れ果ててしまうと周辺の土地に悪影響がでる など

 
相続土地の国庫帰属制度は、相続した財産のうち、要らない土地だけを国に引き取ってもらうことができます。
相続放棄のように土地以外の他の財産まで手放す必要はないのです。
 
画期的な制度として専門家の間でも注目されています。
 

  当制度の申請手続き

法務省から、申請から負担金納付までの手続フローが開示されています。
 

ステップ⑴ 申請

申請者が、申請する土地が所在する法務局・地方法務局(本局)に対して、申請書と必要な書類を添付して申請します。このとき、審査手数料14,000円/筆(土地の数)を納めます。
 

ステップ⑵ 要件審査、承認

法務局担当官が、書面と現地の調査をおこないます。たとえば、関係官庁に(山林計画図等)書面提出の協力を求めたり、申請地に立ち入りし申請内容と合っているかなどを確認します。
審査等の結果、当制度の要件を満たしていたら法務大臣が承認します。
※不承認等となった場合は、審査手数料の返還はありません
 

ステップ⑶ 国庫帰属

承認後に負担金を納付すると、国庫帰属されます。このとき、土地の所有権移転登記は職権でおこなうとのことです。
 
審査フローは以下のとおり。
 

 
※相続土地国庫帰属制度の概要より抜粋
 

申請する前に法務局に相談ができます。

 
土地が所在する、もしくはお近くの法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門にて相談することができますので、「自分の土地は国庫帰属してもらえるのか?」と具体的な質問ができるようなので、ぜひ活用したいですね。
 
本人以外でも、ご家族、ご親族も相談することができ、法務局ホームページから相談受付しています。
 
相談票や相談したい土地の状況チェックシートは必要で、登記簿謄本や土地測量図などの申請地に関する情報をできるかぎり用意しておくと具体的な相談ができるでしょう。
 

 3つの要件


 
相続土地の国庫帰属制度にはヒト・モノ・カネの3つの要件があり、これらすべてを満たさないと国庫帰属されません。
 
なんでも国が引き取ってくれる!と期待している方もいるかもしれませんが、誰でも、どのような土地でもいいわけではありません。
 

1)ヒトの要件

相続や相続人に対する遺贈で取得した人(相続人)が申請できます。売買や生前贈与で取得していたら使えませんので注意が必要です。
 
また、土地を共有している場合は、共有者の中に相続等で取得した人が1人でもいたら、共有者全員で申請することができます。
 
一例を挙げると、父と母の共有名義にて売買で土地を購入し、その後、父に相続が発生しその子が相続で取得。母は売買、子は相続でそれぞれ取得しているようなケースは、母と子が一緒に申請することで利用可能です。子だけ、母だけといった申請はできません。
 
当制度スタート前に相続等で取得していた場合も利用できます。
 

2)モノの要件

土地のみで、建物がある場合は取り壊す必要があります。
 
国は、引き取らない土地として次の10条件を挙げています。
 

 
※法務省資料を基に弊社作成。
 
皆さんの土地も、条件1~10のいずれかに当てはまるというケースがほとんどなのではないでしょうか。
 
もし一つでも当てはまっていれば、『申請できる状態』まで土地を整備する必要があります。
このモノの要件については次回のメルマガで詳しくお伝えします。
 

3)おカネの要件

国が土地を引き取ってくれる制度と言っても、無料というわけではありません。
申請時に支払う申請費14,000円/筆と、承認された後に負担金を支払うことで国庫帰属されます。
 
法務省ホームページに負担金の計算式が載っていますのでまずはそちらをご覧ください。
 

 

 
※参照 法務省ホームページ
 
基本的な負担金は20万円で、市街化区域内の宅地や農用地区域内の農地、山林などは20万円ではなく計算式に当てはめて計算する必要があります。
 
法務省ホームページに自動計算シート(Excel)があり、面積を入れるだけで算出してくれますので一度使ってみてはいかがでしょうか。
 
負担金計算例
引き取り時の負担金について、例を挙げて計算してみましょう。
 
【市街化地域内にある宅地 土地面積300㎡】
負担金は、200㎡超400㎡以下ですから、(300㎡×2,250円/㎡)+343,000円の計算式を当てはめます。計算すると、1,018,000円です。
 
【山林 土地面積2000㎡】
負担金は、1500㎡超3000㎡以下ですから、(2000㎡×17円/㎡)+248,000円の計算式を当てはめます。計算すると、282,000円です。
 
また、この他に審査手数料(現時点未発表)、建物があれば解体費用等もかかります。
 
以上が、相続土地の国庫帰属制度で押さえておきたい3つの要件です。
 
もう少し分かりやすくイラストを使って説明しています。
ぜひあわせて下記URLをご覧ください。
https://land-issue.com/national-treasury-attribution-law/
 
 

 まとめ

 
相続土地の国庫帰属制度は、売れない貸せない不動産を持っていて悩んでいる方の救世主となり得る制度であること。しかし、制度利用にヒト・モノ・おカネの3つの条件をクリアする必要がある。
 
本制度を利用する前に、法務局に相談したり、当制度に詳しい専門家にご相談したりしましょう。
なお、弊社でもご相談や専門家の紹介ができますのでお問い合わせください。
 
次回は、「相続土地国庫帰属制度を利用するときの注意点」についてお伝えします。
 
〈執筆者〉プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)
 
 

監修者
公認会計士・税理士 石倉英樹
【相続税専門】石倉公認会計士事務所
ホームページ https://ishikura-cpa.jp/
 
相続税専門の公認会計士/税理士 兼 社会人落語家。
有限責任監査法人トーマツにて上場企業の監査業務に従事したあと、コンサルティング会社においてベンチャー企業の上場支援を担当。
2013年に独立し、現在は相続専門の石倉公認会計士事務所を運営する傍ら、警察署・金融機関・大手不動産会社からの依頼に基づき社会人落語家「参遊亭英遊」として「落語でわかる相続セミナー」などの講演活動を日本全国で行っている。
講演実績は300回を超え、テレビ・新聞・ラジオでも話題に。
近著に『知識ゼロでもわかるように 相続についてざっくり教えてください
』(総合法令出版)。『税金のことが全然わかっていないド素人ですが、相続税って結局どうすればいいのか教えてください! 』(すばる舎)がある。
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