家族信託は『組成さえすれば安心』なのか?受託者が本当に必要としていることとは

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日々注目度が増す家族信託

セミナーで「家族信託を知っている人!」と聞くと、以前に比べて専門家も一般の方も多くの方が手を上げるようになり、認知度が非常に上がってきたように感じます。
皆さんはどのように感じていますか?
 
家族信託に関するアンケート(※)によると、2019年の家族信託の相談件数は2017年に比べて約3.52倍。信託組成数は2017年に比べて約3.42倍と確実に増加しているので、注目度は継続して高まってきていると言えるでしょう。
(※一般社団法人 家族信託普及協会による同会員向けアンケート結果より。見込数含む)
 
今回のメルマガは、アパートを家族信託組成した後の受託者へのサポートについてです。
プロサーチはどのような取り組みをしたのか、そして受託者が喜んだこととは何だったのか、そのポイントをお伝えします。
 

意思決定は、日頃のコミュニケーションから

資産税に強いY税理士から、顧問先のお客様に家族信託が必要なのではないか、使えるかどうか、というご相談がありました。
ご家族や資産の背景などを伺うと、確かに財産管理の対策が必要な方でしたので、直接お会いすることになりました。
 

<ご相談者様概要>
母:80代
子ども:3人(長男、長女、次女)、全員50代 
信託財産:母の自宅兼アパート(渋谷)、アパートA・Bの計2棟(杉並と調布)
相談者:次女
相談内容:母は足腰が悪く、アパートの管理や銀行の手続きのため移動することが困難に。
     色々と解決したいことがあるが、母の体調が心配。何か対策はないか。

 
ご家族からお話を伺うと…

【母】
・アパートの管理が面倒になってきた、任せる不安もあるが管理出来ないのは仕方ない。
・自分が築いて守ってきた資産を、次の代になっても守っていってほしい。
・今後も三人で仲良くやってもらえればいい。それ以外は子どもたちに任せる。
【子ども】
・母の体調が心配、早めに管理を手伝った方がいいのではないだろうか。
・認知症になった場合のリスクが怖い。早めに進めていきたい。
・兄弟の役割分担を決めていきたい。

と、具体的な想いや考えが出てきました。
 
家族全員での二度にわたる話し合いの末、自宅の問題解決とアパートの管理を子に託すということが決まり、家族信託を組成することになりました。
方向性を決定することができた大きなポイントは、『日頃のコミュニケーション』があったからです。
特に相続の話をしていたわけではなく、お母さんの身の回りのサポートや「大丈夫?」といった連絡をし合っていたくらい(今回の事例では次女さんが中心にサポート)だそうですが、お母さんからすると、託すという意思決定がしやすい状況だったのだと思います。
 

受託者が抱える課題

このご相談者のご家族の家族信託契約は下記のように2つ締結しました。
 

委託者 兼 受益者
信託財産と受託者 ①自宅兼アパート+アパートA→次女
②アパートB→長男

※長女は忙しくて受託者としての責任を果たせないとして辞退しました。
 
受託者の次女さんがアパートを家族信託組成後に行ったことの一例はこちらです。(たくさんありすぎて書ききれませんので、一部をご紹介いたします)
 ①入居者  ・貸主及び口座変更通知
 ②管理会社 ・貸主及び口座変更通知 ・入居者への通知依頼 ・契約名義変更
       ・連絡体系の整備(書面通知からメール等電磁機器への変更など)
 ③ライフライン等 ・契約者変更通知
 ④書類整備 ・各関係者連絡先 ・物件書類等 ・賃貸借契約書等
 ⑤修繕   ・過去の履歴 ・原状回復費用 ・修繕計画

※その他、毎月の帳簿もつけておく必要があります。
 
火災保険の名義も変更しないといけませんし、実務上すべきことは他にも山のようにあります。家族信託を組成するだけでは、アパートの管理運営を知らない受託者は何をしてよいか分からなくなります。
 
 
上記のような各種手続きを行ったあと、次女さんには受託者として大きな仕事が待っていました。それは自宅兼アパートが抱える問題の解決です。
 

問題:築50年の自宅兼アパートは赤色で示した旗竿地(敷地延長)で、間口は約0.8mのため再建築できず、車すら置けない状態であること。この土地を再建築できるようにしたい。

(建築基準法で、建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならないという定めあり)

 
次女さんと、税理士、プロサーチで解決に向けたプランを練りました。
・隣地Dの所有者は1年ほど前に相続が発生し、その子Eが窓口になっている。
・過去の経緯(※)から隣地Dの土地から間口1.5m分の買い取りを打診してみよう、相場価格の確認。
・境界未確定のため、土地分筆に必要な測量費用等はこちらで負担する検討。
・隣地Cにも打診の準備をしておく。

(※かなり昔にお母さんと隣地Dの所有者との間で、将来的に土地の一部を譲ってもらえるという話になっていた。書面なし)
 
予算や打診内容などを詰め、隣地Dの子Eさんへ連絡を取り、プロサーチも同席のうえ面談をすることに。
Eさんは、不動産屋と名乗るブローカーと一緒にお越しになりました(宅建業の登録なし、宅建士でもない)。そして早速、こちらの事情と土地を譲っていただきたい旨を伝えました。
 

Eさんからの返答(というよりブローカーから)
・第三者に売却することが決定している。譲ることも検討できるが間口1.2ⅿ分が限界かな。
・過去のその話は知らないが、先ほど言った通り(1.2m分くらい)検討する余地はなくはない。
・今すぐに、境界立会いをしてくれればこちらも助かるので、まず境界確認しましょう。
 
さて、どうやら【先に境界確認をしてくれれば、土地を譲ってもいい】とのお話です。1.2m譲ってもらえれば、間口が2mになるため再建築できる土地になります。
次女さんは「ありがたい、ぜひ!」という感じでしたが、私から「いえ、お譲りいただく土地部分の売買契約締結が先です。その後に境界確認と土地の分筆申請を行いましょう」とお伝えしました。非常に渋られましたが、なんとか先に売買契約締結をすることになりました。
 
そのブローカーの話がどうにも信用できなかったこともありますが、隣地Dの売却先が決まっているということは、境界確認さえ取れれば第三者と決済できてしまう可能性があり、私たちの口約束に過ぎない【譲ってもらう話】は無視されてしまうかもしれません。
その後は、確実に土地を譲っていただくために、売買契約締結だけではなく隣地Dの土地家屋調査士や購入予定の不動産会社Fにも連絡を取り、『隣地Dは土地の一部を譲ることになっていて、そのために売買契約も測量もした』ということを周知させていきました。
 
そして最初の面談から4カ月後には、無事に引渡しを受けることができました。しかも間口は約0.8mから2.5mへ!隣地Dからは約束通り1.2mで、なんと隣地Cからも0.5mを譲っていただけました。(隣地Cとのお話、ご興味あれば山内まで!)
 
 
次女さんからは、「本当にありがとうございました。ブローカーとの話は私には分からないことばかりで、憤るときもありました。さすがプロですね。演じるのも上手いし、結果としてこちらの要望を相手にすべて飲ませたのはすごいと思いました。家族皆、本当に感謝しています」とありがたいお言葉を頂戴いたしました。
さらには「家族信託をして私もとりあえずホッとしていましたが、受託者ってやることがたくさんあるのですね。もうビックリです。万一の認知症のときの『本人確認』には対応できますが、実際はこういった実務で困ることが多いのでしょうね。私はプロサーチさんに実務のサポートをしてもらえたので、本当に助かりました」とも仰っていただけました。
 
家族信託のご相談は年々増え、扱う専門家も増えてきました。家族信託における専門家の役割を考えたとき、『お客様の希望を聞きとる役目(コンサルタント等)』と『その希望を契約書に反映させる役目(司法書士等)』ばかりが注目されていますが、今回のメルマガの事例のように、お客様が本当に求めていて必要としているところまで行き届いていないのではないかと思います。
 

お客様が期待する家族信託は1社では完結できない


プロサーチにお越しになるお客様から、「専門家に家族信託について相談したが、組成したほうがいいのか結局よくわからない」という内容のご相談をいただくことがあります。どうやら、自分の家族が家族信託する目的(相続対策など)が達成できるか、具体的にどのようなことをすればよいのかなど、家族信託の組成時に不確かなままにされることが多いと感じられているようです。
つまり、認知症に対する当たり前のリスクヘッジの話だけではだめだということです。
 
これまでは、お客様が家族信託を目新しく感じているため、『家族信託』というキーワードのみでビジネス上のフックとして活用できていたのかもしれません。
家族信託は受託者も大変ですが、サポートをする専門家も様々な知識や経験が問われる場面があります。そのためこれからは、専門外だからと切り捨てずに業界の枠を超えて他社・他者と協業する能力がより一層求められてくるのではないでしょうか。
 
また、ご家族ごとに、悩みも必要とするサポートもそれぞれ異なります。家族信託の組成からその後のフォローまで行うためには、日頃のお客様との信頼関係やコミュニケーションも大切になってくるのです。
 

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス

家族信託が増える中で、信託契約を締結することが目的ではなく、その後もお客様の理想を叶える相続対策として家族信託をどう活用していくのか、その内容を提案できる専門家が求められています。
当時の契約内容だけにとらわれず、今現在お客様の周りで何が起こっているのか、他に必要なことはないか、常にアンテナを張り続けていれば把握することができます。
 
プロサーチが提供する家族信託コーディネートとは、『受託者がスムーズに管理運営できる体制』までサポートし、その家族の大切な資産を、より価値のあるものにして次世代に紡ぐことです。そのためにこれからも変わらず力を尽くしてまいります。(記:山内綾子)
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