家族信託された不動産の売買方法とは?不動産を信託した場合のメリットとデメリットも解説

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更新:2021.11.16

 

認知症になったら不動産が売却できないということを、みなさんは知っていましたか。
 
将来、親が所有する不動産を売却して老人ホームの入所費用に充てたい、ほかの資産に組み替えて相続税を節税したいと考えている人に、一度は検討してほしい制度があります。
 
それは家族信託です。
 
なぜなら、家族信託は認知症等で意思判断能力が喪失しても、不動産を売却できる方法だからです。
 
本記事では、まず家族信託の基本を解説したうえで、不動産を家族信託するメリット・デメリット、信託された不動産を売却する方法についてお伝えします。
 
 
今回のポイントはこちら。
 

・家族信託をすると、親の自宅や現預金などの資産について、親から託された子が、その資産を管理や売買することができる。
 
・自身の財産を誰に引き継ぐか、遺言では次の人にしか指定できないが、家族信託ではそのような縛りはなく柔軟に資産承継の道筋をきめることができる。
 
・不動産を家族信託すると、親が認知症になっても不動産の利用・活用・管理ができたり、不動産の共有問題の防止ができるというメリットがある。
 
・不動産を家族信託するデメリットは、費用がかかる、受託者が委託者の希望する財産管理をしない可能性があるなどが挙げられる。

 
 

 家族信託とは

家族
 
『不動産の家族信託』についてお伝えする前に、そもそも家族信託とは何か、どのようなことが出来るのかを簡単にお伝えします。
 

 本人が元気な時に家族に資産の管理を託す仕組み

家族信託
 

家族信託をすると、親の自宅や現預金などの資産について、親から託された子が、その資産を管理や売買することができます。
 
親がすでに認知症等で意思判断能力が喪失していると、家族信託をすることができません。親が元気なうちに、家族信託の契約を締結しておく必要があります。
 
「軽度の認知症で、要介護認定1の父がいます。家族信託は難しいでしょうか?」とご相談を受けることがあります。
 
「家族信託をして、ご自身の資産の管理を子に託す」ということが理解できれば大丈夫でしょう。ただし、そのことを理解できているかどうかを判断するのは、弁護士や司法書士、公証人といった家族信託を扱う専門家です。
 
認知症や要介護認定など医師の診察を受けているからと諦めないでください。まずはすぐに家族信託の専門家に相談しましょう。
 
 

 親の認知症対策として有効

家族信託の大きな特徴は、「親が認知症になっても、子がその親の資産を管理や売買等できる」ことです。
 
どういうことか、不動産を売却するケースで見てみましょう。
 
不動産の売買では、買主や司法書士から所有者である親に対して本人確認を必ず求められます。このとき、親が「よく分からない」と曖昧な返事をしたり、他の話をしだすなどで回答ができないと、その不動産を売却することが出来なくなります。
 
買主や司法書士に、意思確認ができなかったと判断されてしまうからです。
 
そこで家族信託をしておくと親が認知症になったとしても不動産を売却できます。
その理由は、買主や司法書士が本人確認をする相手は、親ではなく、親から資産の管理や売買を託された子だからです。
 
不動産を例に挙げましたが、現預金の入出金も可能です。
 
生命保険や有価証券のようなほかの資産も家族信託することは可能ですが、いまは少し難しいです。それは、家族信託に対応している生命保険会社や証券会社がまだまだ少ないからです。
 
親が加入している生命保険会社や証券会社は対応してくれるのか、いまのうちから確認しておいたほうがよいでしょう。
 
 

 資産の承継先を決めることができる

先祖や親が築き上げた資産は自分の子や孫といった直系親族に渡していきたいなど、特定の人に資産を承継していきたいと考える方は多いのではないでしょうか。
 
資産を残す先を伝える方法として、遺言と家族信託を比較してみましょう。
 
たとえば、本人が次のような資産の流れを作りたいとします。
 
本人(親) ⇒ 子:長男 ⇒ 長男の配偶者 ⇒ 次男の子(親からみて孫)
家系図

 

・遺言は、長男までしか資産の行き先を指定できません。
・家族信託は、次男の子(孫)まで資産の行き先を指定できます。

 
遺言は次の人までしか決められません。その先はその次の人が決めるという考え方です。
家族信託はそのような縛りはなく、柔軟に資産承継の道筋を立てることができます。
 
なお、このことを「後継ぎ遺贈型受益者連続型信託」と呼びます。要件や気を付けることがありますから、検討したい方は家族信託に詳しい専門家にご相談ください。
 
家族信託についてもっと知りたい方はこちら。
家族信託ってなに?概要や仕組みをわかりやすくイラスト解説!

 
 

 不動産を家族信託する2つのメリット

メリット
 
不動産を家族信託することで得られるメリットは2つあります。
 
 

 親が認知症になっても、不動産の利用、活用、管理ができる

・空き家となった実家(戸建て)を売却して、分譲マンションに組み換えたい
・駐車場にアパートを建築して相続税を少しでも安くしたい
・現預金で投資用不動産を購入して、賃料収入を得たり、相続税を安くしたい
・親のアパートの賃貸募集や管理、大規模修繕などをちゃんとしていきたい

 
親が認知症になってしまうと、このようなことが一切できなくなってしまいます。
 
相続対策等を考えているご家族にとっては、不動産の所有者が認知症になると相続税を安くすることもできず、アパートの空室募集もできなくなりますから、家族にとって大打撃ですよね。
 
このようにならないためには、家族信託をしておくことです!
 
認知症によって困ることなく、不動産を使った相続対策や物件管理ができますから、安心して取り組むことができますね。
 
 

 不動産の共有問題の防止ができる

「不動産の共有はしない方がいい」とよく聞きますが、なぜ共有がダメなのでしょうか?
それは、『共有者間で不動産に関する合意を取るのが大変』だからです。
 
不動産を共有しているときは、共有者の合意がないと売ることも貸すことも出来ません。
 
そして、相続の度に所有者が増え、同意を得るのがとても大変になります。不動産を共有していると、このように何もできない不動産(塩漬け状態と呼んだりします)になってしまう可能性が高くなります。
 
家族信託でこの共有問題を防止できるということが2つ目のメリットです。
 
 
たとえば親と子ABの3人で共有している不動産があるとします。
 
共有者のうち子Aに、親と子Bの共有持ち分を託して管理等をお願いします。
 
こうすることによって、子Aは、親と子Bから管理などの行為について同意を得なくても、子A一人の意思判断で管理等を行えます。
 
もちろん親や子ABは貸したときは賃貸収入を、売却したときは売却代金を得ることができます。
 
 
このように、家族信託をつかって一人に権限等を集約させることで、不動産の共有問題を防ぐことができます。
 
 

 不動産を家族信託するデメリット

デメリット
 
家族信託も万能ではなく、注意すべきところもあります。代表的なデメリットをお伝えします。
 

 不動産の節税対策そのものにはならない

不動産を家族信託したからといって、相続税が安くなるなど節税効果などは一切ありません。
信託された不動産を他の資産に組み換えることで節税対策の効果がでます。
 

 登録免許税や信託報酬がかかる

不動産を家族信託するときの費用は、大きく分けて2つあります。
 

登録免許税

家族信託をしたら、法務局で信託登記することになります。
 

 

 

これは不動産登記簿を抜粋したものです。
 
・山田父郎(青色、緑色)さんから、山田子太郎(黄色)さんに託した
・赤丸部分の「信託」と信託目録の抜粋から、家族信託した
ということが分かります。
 
不動産登記簿の名義を、父郎さんから子太郎さんに変更するときに「登録免許税」がかかります。
 
登録免許税は、土地と建物で税率が変わります。
土地の固定資産税評価額×0.3% 
建物の固定資産税評価額×0.4%
 
固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税納税通知書に綴られている課税明細書で確認することができます。
 
 

専門家への信託報酬

家族信託を締結すると司法書士等の専門家に報酬を支払います。
 
信託報酬は、不動産の評価額や数、信託する内容の難易度によって変わります。
だいたいの報酬の目安についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
 
家族信託の費用は本当に高い?家族信託した人としなかった人の費用を徹底比較

 
家族信託にかかる費用だけをみて、「高いなあ」とやめてしまう方がいます。
 
もし家族信託をせずに親が認知症になったとき、法定後見制度にかかる費用や、不動産の売却のタイミング次第では最大600万円もの税優遇の特例が受けられなくなることまで検証して判断することがとても重要です。
 
 

 受託者によって不本意な財産管理ができてしまう

家族信託は、託された子自らの判断で資産を管理や売買できる大きな権限が与えられます。そのため親の想いに反して管理をしなかったり、売却して欲しくない不動産を売却してしまう、現金を使い込んでしまう等の可能性があります。
 
これを「受託者の暴走」と呼んでいます。
 
これを防ぐためには、
・託す相手である子がしっかり管理などできるかどうかを見極める
・権限を明確にする
・権限行為に制限をつける

といったことが有効です。
 
例えば「不動産の管理のみを託し、売却の場合は管理者(他の兄弟など)の同意を得る」という契約内容にすれば、理論上は暴走を未然に防ぐことができます。
 
しかし、子の管理などの権限に制約をつけると「家族に任せたい」という本来の主旨と離れることにもなりますので、十分な話し合いが必要ですね。
 
 

 家族信託した不動産の赤字は、他の所得と損益通算できない

損益通算とは、黒字の所得から赤字の所得を差し引くことです。
 
家族信託した不動産について、損益通算できるかどうかよく確認する必要があります。
 
家族信託した不動産のプラスは、他の資産と損益通算できます。
家族信託した不動産のマイナスは、他の資産と損益通算できません。
 
このマイナス部分は無かったものとして扱われてしまうということになり、家族信託をしたことで損益通算できず税金の負担が増えることになってしまいます。
 
1つの家族信託の契約で2つ不動産を託しているときは、上記によらずその2つは損益通算できます。ちょっとややこしいですが、赤字の不動産があるときは、他の黒字の不動産とどのように家族信託を組む方が良いかよく検証する必要があります。
 
 

 家族信託に詳しい不動産会社が少ない

「家族信託」の歴史はここ10年くらいと浅く、実務として行っている司法書士や税理士解いった専門家が少なく、相談できる先が少ないのが現実です。
 
先日こんなご相談がありました。
 
家族信託をしている親の不動産を売却しようと思って、受託者であるご相談者様(息子さん)が不動産会社に売却の相談に行ったそうです。
 
家族信託登記をされた登記簿を見た瞬間に、その不動産会社の営業の方は「うちでは信託された不動産の取扱はできません。」と一言。お客様自身もどこの不動産会社に相談をしていいのかわからず、家族信託契約をお願いした司法書士さんに相談したところ、弊社を紹介頂き、ご相談に来られました。
 
このように不動産会社で実務として家族信託を扱っているところが少ないことがデメリットと言えるでしょう。
 
 

 家族信託した不動産を売却する方法


 
ここからは家族信託した不動産の売買について解説していきます。
 
【前提条件】
・親が子に資産を託し、売却代金は親が得るという家族信託の内容とします。
・『信託不動産(=家族信託した不動産)』=所有不動産とします。
 
 

 受託者(子)と買主だけで不動産売買取引ができる

家族信託の契約条項に、信託した不動産の「売買」が含まれていれば、子が売主として信託不動産を売却することができます。もちろん、親が認知症等で意思判断能力が喪失していても売却することができます。
 
つまり、子が信託不動産の買主さんと直接取引することができます。実務的には、売主が子となるだけで、一般の不動産売買と変わりません。
 

 
 

 信託した不動産の売却代金は親(受益者)のものとなる

家族信託した不動産を売却したときの売却代金は、家族信託契約に受益者(利益を得る人)を親と設定していれば親のものです。
 
家族信託した不動産を売却して現金化すると、家族信託した現預金として、そのまま子(受託者)が管理等することとなります。
 
また、不動産を売却した時にかかる譲渡所得税は、信託した不動産から利益を享受する「親:受益者」が納税する義務を負うこととなります。
 
 

 信託した金銭は子(受託者)が管理する信託用金銭管理口座で管理する

信託した不動産の売却代金は、買主から親の口座に振込みするのではなく、家族信託用の金銭管理口座に振込みしてもらいます。
 
子は、この売却代金である現預金を、他の資産に組み換えるときの資金として活用することもできます。
 
 

 家族信託契約の条項に売買の項目がないと不動産を売却できない

家族信託の契約条項に、信託不動産の「売買」が含まれていないときは、子に権限がありませんから、信託不動産を売却することができません。
 
しかし、家族信託を契約はしたものの、当初と状況や気持ちが変わり、“やっぱり売却したい!”というケースもあると思います。
 
例えば、次のような方法(一例)であれば売買が可能です。
 

1. 家族信託契約書の条項を変更する(信託契約で定めた合意等が必要)
2. 当事者間で家族信託を終了させ、親自身で不動産を売却する
 
※どちらも、本来の不動産所有者ご本人の売却意思確認ができることが大前提です。
※すでに意思判断能力がない場合は、信託契約が終了となる事由(委託者の死亡等)が発生するまでは売買はできません。

 
家族信託を解除してしまえば、信託不動産は現物の不動産に戻りますので、その後の売買は一般の不動産取引となります。
 

 

プロサーチ株式会社では、家族信託の組成や、家族信託された不動産についての無料診断が可能です。
 
私の家族は、家族信託が必要なのか、見積りが欲しい、家族信託を使ってどのような不動産対策ができるのか。気になる方はぜひこちらから無料診断をお試しください。
 

 

 
 

 まとめ

 
今回のポイントはこちら。
 

・家族信託をすると、親の自宅や現預金などの資産について、親から託された子が、その資産を管理や売買することができる。
 
・自身の財産を誰に引き継ぐか、遺言では次の人にしか指定できないが、家族信託ではそのような縛りはなく柔軟に資産承継の道筋をきめることができる。
 
・不動産を家族信託すると、親が認知症になっても不動産の利用・活用・管理ができたり、不動産の共有問題の防止ができるというメリットがある。
 
・不動産を家族信託するデメリットは、費用がかかる、受託者が委託者の希望する財産管理をしない可能性があるなどが挙げられる。

 
 
繰り返しとなりますが、不動産のプロでも、まだまだ『家族信託』を扱えるところが少ないのが実態です。
 
家族信託に詳しい弁護士や司法書士や税理士でも、不動産のことは専門外ですから分からない方も多くいます。不動産の家族信託をするときには、家族信託に詳しい不動産会社とも連携して進めていくことが必要でしょう。
 
専門家にご相談される際は、家族信託に詳しい不動産会社のお付き合いがありますか?と聞くことをおすすめします。
 
 

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もし本人(親)が認知症になってしまったら、現預金の引き出しや、実家を売却するなどの行為が自由にできなくなるのはご存知でしたか?
 
例えば、親の預金口座での生活費の管理ができない、老人ホームへの入所金を確保するため 不動産を売却しようと思ってもできないなど、計画していた今後の生活に支障がでてしまうのです。
 
しかし、認知症になっても計画したとおり安心して財産管理ができ、そして子どもに資金面や財産管理などでの負担を軽くできる対策があります。
 
それが、「家族信託」です。
 
家族で財産を管理する「家族信託」という対策方法をこの機会にぜひ知ってほしいと思います。
 

< お伝えする内容 >
・家族信託とは何か?制度と仕組みを丁寧に解説!
・後見制度との違い ~メリットや留意点~
・実家や空き家、アパートなどの実例から家族信託を知る
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< ぜひ聞いていただきたい方 >
・本人(親)が70歳以上で、体調面に不安がある方
・自分や家族のために財産管理をしっかり行っていきたい方
・財産管理をそろそろ子どもに任せたい(任せて欲しい)と思っている方
・相続対策を安心して確実に進めたい方
 

 
 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

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