簡単に売れると思ったのに… 見落とされがちな不動産の問題点。越境物がもたらす影響とは?

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2020.6.30

 
今年2020年2月に配信したメルマガでは、不動産取引において土地境界を確定しておくことの大切さをお伝え致しました。 
しかし、土地境界が確定しただけでは安心ではありません。不動産の問題はまだまだ出てきます。 
  
今回は、私たちが経験した「越境物によるトラブル」についてお伝えします。 
私たちは不動産のプロとして、境界確認時に発覚した越境問題についてどのようにお客様をサポートしたのでしょうか。 
 
  
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「土地境界トラブルによる不動産取引への影響。改めて土地境界の大切さを考えよう!」
 

土地境界トラブルによる不動産取引への影響。改めて土地境界の大切さを考えよう!


  

そもそも越境とは?

不動産取引において「越境」とは、家屋の一部や、ブロック塀、樹木の枝葉などの所有物が隣地へ侵入してしまっていることを言い、逆に、隣地から自分の土地に侵入してきている場合は「被越境」と言います。上記の他に、地下の給排水管や電線が越境しているなんてこともよく見かけます。 
 
越境物の有無については、目視で分かる部分や、正確な計測や土地の試掘などをしなければわからないケースまで様々です。さらに、所有者や隣地所有者も認識していないケースが殆どで、売買や建て替えのときになって越境が発覚するため『今すぐ解決したい売主本人』と『別に急いで解決する必要のない隣人』との間でトラブルに発展することがあります。 
  
さて、本題に入る前に
越境していても売却できるのでしょうか?
 
「越境している状態でも、不動産は特に問題なく売却できる」と思っている方が殆どです。たしかに売却することもできますが、その不動産を購入し「越境による支障がない」場合に限ります。【支障がない】ということがポイントです。 
  

事例:相続した実家の土地測量で発見された重大な越境物

今回取り上げる事例は、広い敷地の実家を相続し、先々も住む予定もないので売却したいとご相談があったA様です。 
 
お客様の希望を確認したうえ、一般個人が購入するには広すぎる敷地だったため、戸建て事業者さんへ売却することになり、売却活動を経て、一番購入条件の良い買主B社と進めることになりました。購入条件には、土地境界確認、重大な越境物がないことというものがあったため、測量と越境物の有無確認を進めていきました。 
 
事前の調査では隣地からブロック塀が被越境していることは確認取れていました。
しかし、境界調査を進めて行くと、なんと隣地から、目視では難しい位置に20㎝程の屋根や雨樋の越境物が発見されたのです。
もちろん、お客様も隣地所有者もご存知ありませんでした。 
お客様に報告すると、「屋根なら仕方ないわよね、大丈夫ですよね」と仰られましたが、 
この【屋根等の越境】は売買契約を白紙解除にさせるほどの影響を持っていたのです。 
 
なぜならば、今回の売買購入条件である【重大な越境物がない】状況ではなくなり、買主が新築する建物の建築面積に越境部分(隣地の屋根等)も含められ、越境部分の面積分、つまり建築可能な面積が減ってしまうからです。
 
また、仮に多少の越境物だからと気にせず建築を進めたとしても、建築物完成後の【完了検査】を受ける際に越境を解消するように指摘され、解消するまで完了済みというお墨付きをもらうことが出来なくなります。そうなると銀行融資等に影響が生じます。
そのため、買主は越境物解消を求めてくるのです。 
 
 

不動産決済には越境解消が必須

さすがに越境をしているからと言って、隣地の屋根等を勝手に壊したりも出来ません。訴えられてしまいますね。
また、隣地所有者に対して、何の脈絡もなく突然に「屋根の部分がこっちに越境しているから今すぐ削ってください!」と伝えても、「少し屋根が出ているだけなのに何で解消しなきゃいけないの?昔からずっとなんだからいいでしょ!」と二つ返事でOKとはいかないでしょう。
 
 

越境が確認された場合に行うこと
(1)情報確認
越境物について、隣地地権者同士の覚書等の書類が残っていないを確認。
 
(2)解消方法等について協議
誰が誰の費用負担でどのように越境物を解消するのか、解消できないものは将来撤去するなどの旨の覚書を締結するかどうかなどを売主と買主で協議する。
 
(3)越境状態の説明と解消の依頼
越境部分の正確な場所や状態について、所有者と隣地所有者とで確認し合う。
また、上記(2)で決めた事を基に隣地所有者へお願いする。

 
今回のお客様A様は、(1)の情報は一切なく、(2)については買主側が覚書対応を拒否し、越境物の撤去が売買契約締結の条件でした。
そのため、私たちは③越境解消方法についていくつかのパターンやシミュレーションをご用意して、隣地の方へお願いしに伺いました。 
 

解決方法のご提案パターン
パターン(1) 越境している屋根部分の切断工事を行う
パターン(2) 越境部分に相当する土地部分のみを隣地地権者の方に購入いただく

 
誰が費用負担をするかも含め各シミュレーションを行った上で隣地地権者へご相談にあがった結果、最終的にはパターン(2)の越境部分に相当する土地購入いただくことで越境問題を解決しました。
 
越境部分の土地+越境部分の除く土地の合計額は、当初の売買価格と同じに合わせることができました。しかし、土地を分筆する費用等の負担が生じたため売却後の手取りは数十万円減ってしまいました。
お客様には感謝していただけましたが、この越境物問題を簡単に考えてはいけないと痛感しました。
 
 

越境問題への対応ポイント


越境問題で気を付けたいことは、越境している方が悪いと決めつけて無理に意見を通そうとすることです。
揉めるケースの多くは、過去の越境に関する経緯を考慮していないとか、相手への伝え方や感情のもつれだからです。
経緯や状況、心情面などの解決の手掛かりを注意深く確認して行うことが大切です。
 
今回は解決できましたが、売買において越境問題を解決できなかったらどうなるでしょうか。
 

・売却価格の下落、又は契約解除
・売りたくても、売れない状況が続いてしまう。
・売却困難な不動産を所有し続けなければならず、固定資産税等の負担も継続となる。

 
特に、相続税納税のためなど特定の理由がある方はとても困る状況になると思います。
 
 
では、このような越境物の確認はいつ行えばいいのでしょうか。
 
答えは、『今すぐ』です。
 
不動産売買の現場では、境界確定や越境物等の問題の確認をしている方はほとんどいません。
理由は『いま売るつもりはないから、その必要性を感じない』『誰もこのことを教えてくれない』からです。
 
本当にそれでよいのでしょうか。将来困りませんか?
 
今回のケースのように、相続発生後に不動産売却する場合、相続人たる子どもたちが境界や越境物などの確認を行います。不動産の詳しい事情は知らず、隣地所有者の主張が正しいものか、間違っているかの判断がつかないことがあります。
そのため、その不動産をよく知っている所有者が元気な生前のうちから、境界について確認しておくのがベターでしょう(すでに関係悪い場合はあえて相続発生後に行うケースもあります)。
 
昔のように、お隣さんと交流している方は少ないのではないでしょうか。関係性が希薄になればなるほど、昔世話になったからなどの義理や人情は通じなくなります。本人が元気なうちに、いざ売るときや建て替えするとき、そして将来子どもたちが相続したときに困らないように、測量や越境物などの問題点を抽出しておくことが必要でしょう。
 
そのために『不動産の現状把握』をいまから始めてみてください。
 
 

遺産相続コンシェルジュより

不動産取引の現場では、楽に進む案件はほとんどありません。すべての問題をお金で解決できれば『数字の問題』で済みますが、不動産は心情面も絡んできますからとても厄介です。単に不動産の知識だけでなく、お客様はもちろん、相手の立場にも立ったコンサルティング力が現場では求められます。ボタンを掛け違えば問題の泥沼化もあり得ますから、情報収集、関係者への丁寧な説明と姿勢を続けなければなりません。プロサーチでは不動産のプロとして問題点の抽出には特に力を入れています。皆さまも、まずご自身の不動産などの資産について現状把握をしてみてはいかがでしょうか。なにから始めてよいかわからない、ご不安な方は弊社の無料メール診断をぜひご利用ください。(記:山内綾子)
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