必ず訪れる『空き家になった実家の処分、管理どうする?』問題で気を付ける3つのポイント

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2020.7.7

 
実家を誰も利用しなくなったときのことについて、親や子と話していますか?
 
恐らく多くの方は気になりながらも、今すぐの問題ではないから『何もしていない』のではないでしょうか。
 
  
今回の記事のポイントは下記のとおりです。 
 

・空き家の数は、団塊の世代の老人ホーム等入居や相続により増えており、増加傾向は続く。
・空き家の売却・賃貸のメリット、デメリットの他不動産にかかる税制や法律面や相続承継まで見据えて判断していくことが必要。
・空き家売却を検討する際には、『相続前(居住用財産)/相続後(相続空き家)』の3,000万円控除の適用可否を確認する。
・高齢の親が判断能力を喪失すると売却や賃貸ができなくなるリスクがあるため、家族信託の検討も一案。

 
今回の記事では、何も手を打たないままだとどうなるのか、その対策方法などをお伝えします。 
この記事を読むことで、実家の管理、承継方法の選択肢がわかるはずです。 
 

増加傾向にある空き家の現状

空き家となった実家はこれから益々社会問題化します。放置空き家に対する厳しい法的措置、不動産相続登記の義務化、そして皆さんの身近な問題とすると、親の意思判断能力が喪失することで起きる『貸せない、売れない』などでしょう。空き家というキーワードは認知され始めていますが、その対策を打てている方は少数です。
 
下図のとおり、団塊の世代と呼ばれる1947年から1949年までの第一次ベビーブームで出生した方々が3年間で計800万人以上います。現在の年間出生数が100万人を下回っていますから、その数の多さが分かります。
 
 
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核家族化が進んでいる日本において、子供たちは家庭を築き、持ち家である方がほとんどのため、今後は団塊の世代の方々が老人ホーム等に入居したり相続が発生したりすることによって、空き家が爆発的に増えるでしょう。 
 
下記の総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計結果の概要」によると、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%と過去最高となっており、この増加傾向は今後も続くものと見込まれています。


※平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計結果の概要より引用
△クリックで大きく表示 
 

空き家の処分で後手に回る対策

よくある相談は、『親が介護施設へ入所するので、実家を売却して入所金等に充てたい』というものですが、大半は親が既に認知症で売却が困難な状況となっています。このような事にならないために、元気なうちに家族信託などで対策を講じていれば、認知症になってもスムーズに実家を売却できます。 
 

実際は、この実家のことよりも、親(本人)の介護や生活費の問題などの不安が先で、先々の実家対策まで頭が回らない、又は、後でやればいいか、誰かがやってくれるだろうなど、後回しになっているのが現状ではないかと思います。
 
他には、そもそも対策手段を知らないということもあるでしょう。もし、理由が何であれ実家が空き家のまま何もできなくなると、固定資産税や火災保険料の負担、周辺に迷惑が掛からないよう美観維持の費用などをかけて保有し続けることになります。 
 

空き家となった実家を貸したら?売ったら?どうなるのか

これもよくある相談ですが、実家を売却や賃貸するとき、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
 

最初の確認ポイントは2つあります。 
 

1.売却する場合
『相続前(居住用財産)/相続後(相続空き家)』の3,000万円控除の適用可否
 
2.賃貸する場合
永続的に貸すのか、期限を区切って貸すのかどうか

 
※この他、時価把握や活用種類、遺産分割についてなど検討することは多数あります。 
※『相続空き家の3,000万円控除』の概要については下記の記事で詳しく解説していますので、下記をご参照ください。 
 

▼新たに創設される相続空き家の3,000万円特例控除とは!?▼

新たに創設される相続空き家の3,000万円特例控除とは!?


 
 

弊社で解決したお客様の事例

 
『昨年、ひとり暮らしの母親が老人ホームに入居したから、取り敢えず家(築45年)は他人に貸しておいて、相続が発生したら売却して兄弟(子)で現金で分けたい』というお客様。
 

メリット

 ・老人ホーム入居から相続発生まで賃貸収入を得られる
 ・賃貸継続すれば貸家の小規模宅地の特例を利用できる など
 

留意点

 ・賃借人付きとなるため収益物件となる。空き家よりも売却価格が下がる可能性がある
 ・空き家として売却する場合は、立ち退きの必要がある(時間とコストがかかる)
 ・相続後の売却は手取りが大きく減る(相続空き家の3,000万円控除が使えない)など
 

収入も得ながら相続後は売ってお金で分けるという、まず思い浮かぶ選択肢なのではないでしょうか。 
決してそれがダメだと言いたいわけではなく、『今すぐお金を得られる』などのメリットばかりに目が行き、相続承継後のことまで踏まえて実行している方は少ないのではないかと思います。
 
不動産や相続を取り巻く税制は毎年のように変わります。 
上記の相続空き家の3,000万円控除を使えるか使えないかで、600万円ほども売却手取り額が変わることもあります。
 

ご面談の結果

まずご兄弟に、『管理し続ける負担感』『どのような財産を引き継ぎたいか』そして『相続の目的』について話をじっくり聴きました。 
すると、 
・実家への想いはあるものの、古くなった家屋を修理しながら貸すのは大変、面倒。
・相続税節税になり、出来れば収入も得られる財産が良い。
・兄弟で揉めることがないようにしたい。(お母様は兄弟に任せるとのことでした)
このようなお考えを聞くことが出来ました。
 

兄弟の考えをもとに行ったこと

・家族信託の締結(→ご兄弟の意思判断で売却など資産管理ができる)
・実家の売却(居住用財産の3,000万円の特例適用)
・収益不動産を2戸購入(兄弟それぞれ好きな物件購入。賃貸収入は母の介護費用)
・相続税評価額を、大幅に圧縮(下記の簡易計算参照)

  
時価
評価
自宅
6,000万円 
5,000万円
区分マンション2戸
6,000万円
2,400万円

※ブログ上、諸経費や税金は考慮していません。
 
相続前/後、貸す/売るといった選択肢を、相続や税制などの多方面から検証し、ご兄弟共に納得のうえ実行してもらいました。もしも私が売買仲介専門の不動産会社であれば賃貸の話はしなかったでしょうし、ご兄弟の気持ちや考えをじっくり聞かないと思います。
 
 

売却や賃貸するには親の意思判断能力が必要

親御さんの介護や生活費のことも気になりますが、もう1点検討していただきたいポイントがあります。それは、所有者たる親の意思判断能力が喪失したときの対策です。 
 
前述していますが、親が認知症になってからのご相談が後を絶ちません。
 

・生活資金等のため、実家を売却や賃貸するかもしれない
・親の財産(実家など)を家族だけで管理したい
 
このようなことをしたくても、親の意思判断能力が喪失すると全て困難になります。 
親が元気なうちに、家族信託などの認知症対策することによって、親も子供も、お金や心身面の負担や心配が大きく減るでしょう。 

 
家族信託については、下記の記事で詳しく解説していますので参照してみてください。 
▼家族信託とは?▼

家族信託とは?


 
 

まとめ


◇空き家の数は、団塊の世代の老人ホーム等入居や相続により増えており増加傾向は続く
 
◇空き家の売却・賃貸のメリット、デメリットの他不動産にかかる税制や法律面や相続承継まで見据えて判断していくことが必要
 
◇空き家売却を検討する際には、『相続前(居住用財産)/相続後(相続空き家)』の3,000万円控除の適用可否を確認する
 
◇高齢の親が判断能力を喪失すると売却や賃貸ができなくなるリスクがあるため、家族信託の検討も一案

 
あとから『やっぱりやらなければ良かった!』とならないように、『実家をどうする?』を考えるときには、不動産にかかる税制や法律面や相続承継まで見据えて判断していくことが必要です。 
空き家については、法務・税務の他、不動産の処分、活用方法まで視野にいれた対策が必要です。 
空き家の活用や処分については相談する際は、法務、税務、不動産だけでなく、トータルで相談できる専門家に相談しながら対策をとっていってくださいね。
 
 

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