隣地の越境物で売買契約解除!?相続した不動産をトラブルなく売却するために提案すべきこと

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2021.6.15

 
「相続税の納税期限までに不動産売却ができず、延滞税を支払うことになった…」
 
皆様のお客様が、このようなトラブルに発展したことはありませんか?
不動産売却の目的には納税資金、住み替えなどがありますが、購入側にも目的がありますよね。その目的には大抵、“いつまでに”という期日があります。
もしその期日内に取り引きができなければ、売買契約の違約解除や白紙解約、売買代金の減額などになってしまいます。
 
これまで1,200件超の不動産取り引きに携わってまいりましたが、一つとして楽観視できる取り引きはありません。そんな経験から、皆様に不動産売買の掟をひとつお伝えします。
 
それは『不動産売買契約を終えても売買代金を収受するまでは安心してはならない』ということです。
 
不動産売買にあまり詳しくないお客様の中には、売買契約をしたら“取り引きは終わったようなもの”と安心しきってしまう方がいます。
しかし、不動産売買には売主も気付いていない問題が潜んでいるのです。
 
不動産売買は大きな金額が動くだけあって、その売却目的も重要なものだったりします。もし売買契約が不調に終わったら、対策の再構築が迫られるでしょう。
 
そうならないために、今はまだ不動産を売る予定がないお客様であっても、今からしっかり備えることが重要です。
 
本記事では、数多くある不動産問題のうち、「よくある越境物によるトラブル」を取り上げます。
お読みいただくことで、皆様のお客様が大きなトラブルに発展しないための事前対策について知ることができます。
 
本記事のポイントはこちら。

・問題の火種である越境物は“日常”に隠れていて、その問題を放置すると不動産価値が下がる
 
・地上の越境物は目視もしくは土地境界測量で発見、地中の越境物は埋設管図面で予測する
 
・越境物の他にも、土地境界や私道を巡って関係者と揉める、地中埋設物や違法建築物があるなどの影響から不動産価値が下がることもある
 
・売却予定がなくても、越境物の有無の確認、隣地との協議、必要があれば覚書の締結など、解決方法を早めに検証しておく

 
 

 不動産には“越境物がある”ものと考える

ボーダー
 
不動産取り引きでは、家屋の一部や、ブロック塀、樹木の枝葉、旧排水管やガス管などの所有物が隣地に入ることを「越境」、逆に、隣地から自分の土地にそれらが入ってきている状態を「被越境」と言います。
そして、越境している物を「越境物」 「被越境物」と呼びます。
 
越境物は、目視ですぐ分かることもあれば、土地境界測量や土地を掘るなどしてから初めて分かる場合もあります。
建築や購入した直後であれば不動産会社からされた説明を覚えているのでお客様も把握していると思いますが、数十年前に購入したり、相続で取得したりしたような場合は、忘れていたり、把握していなかったりすることが大半です。
 
仮に越境物があったとしても、隣地の方から何も言われなければ生活するうえで全く困らないので、問題解決しなければならないという意識はありません。
実際、お客様に「越境物ってありますか?」と聞くと、大半の方は「知らない」と答えます。
 
問題が顕在化する瞬間は、【越境物の解消が条件】とした売買や建て替えのときでしょう。
『今すぐ解決したい本人』
『別に急いで解決する必要のない隣人』

当事者間にもこのような意識の差があるので、強引に解決しようとするとトラブルに発展します。
 
 

 深刻な問題にも発展する越境物

越境
 
では、家屋の一部や樹木の枝葉などが越境していても、不動産を売却できるのでしょうか?
 
答えは、【買主がOKすれば売却できる】です。
 
しかし、「越境物による建築や利用に支障がないこと」が売買条件になると話は別で、売買価格の減額や売買契約解除なんてこともあり得ます。
 
実例をもとに詳しくお伝えします。
 
 

 <実例> 20㎝の越境物で契約解除!?

 

売主 個人(A)
買主 不動産会社(B)
売却理由 実家を相続したが使う予定がない
契約内容 売買契約締結日から引渡し日までの期間は3ヶ月
隣地との土地境界を確定させる(土地を分筆し2宅地にすることが目的)
建築に支障がでる重大な被越境物があるときは解消すること

 
上記の内容で売買契約を締結したあと、目視では確認することが難しい場所に20㎝程度の隣地の屋根や雨樋が被越境していると土地境界確定作業で判明しました。
この事実は売主Aさんも隣地所有者さんも知らなかったことで、売主Aさんは「隣地の家の屋根が越境してきているけど大丈夫ですよね」と仰っていました。
 
しかしながら、これは『大丈夫』ではありません。
 
この隣地の屋根の一部が売買対象地にかかっていることで、その被越境部分(隣地屋根)には建築ができなくなるため、“建築面積に算入できない土地“、つまり有効に使えない土地が生じることとなります。
 
案の定、状況を知った買主Bからは「被越境している屋根部分を撤去できないと、売買契約解除又は売買価格を減額することになります」との話が。
 
たかが20㎝で!?と言いたくなりますよね。
では、この“たった20㎝”がどの程度、売買価格に影響するのでしょうか。
 

【条件】
・売却する土地の長さが15mだったため、3㎡(20㎝×15m)も土地面積が減る
・1㎡あたりの単価が50万円

 
この前提条件ですと150万円(3㎡×50万円)も価格が下がります。
また、土地形状によって建築プランの変更にまでになった場合、事業収支に影響が出てそのマイナス分まで価格が減額されることもあります。
 
このように越境物によって“有効に使えない土地”が生じることで土地の価値が下がり、売買代金の減額になるのです。
 
実例では、被越境している部分(3㎡)をその隣地所有者が購入され、越境問題は解決。売主Aさんと買主Bとの売買も無事に終わりました。
 
しかし、もし次のような事態になったら、どうなっていたでしょう?
 

①隣地の方に『購入しない』、『屋根を壊す事に同意できない』と言われたとき
 →越境物解消不調のため、売買契約の白紙解約か、売買価格減額
 
②隣地の方と越境物のことで揉め、土地境界立会いができないとき
 →土地境界確定不調のため、売買契約の白紙解約(土地が分筆できないため)
 
③越境物の解消が引渡し日までに間に合わなかった
 →原則、売買契約の白紙解約(実務上は、引渡し日延長で対応することが多い)

 
売主Aさんが「大丈夫だろう」と“気にも留めていなかった”越境物によって、売買契約解除や価格減額はもちろん、問題解決するまで売却できなくなることもあり得ます。
このような問題に発展する越境物は屋根だけではなく、ブロック塀など日頃から見ている物だったりします。
 
もし売却理由が、相続税納税のための資金捻出だったら?
納税期限内に何が何でも越境物の解消と境界確定をしなければなりませんから、『相手の希望を何でもいいから飲む』ことになるでしょう。
 
 

 事前にできるトラブル回避のポイント

測量
 
越境物の他にも、所有者が売るまで気付かない問題で、不動産価格が下がるものの代表例を抜粋して紹介します。
 

【隣地者等との問題】
・土地境界点の位置を巡って隣地と揉める
・ブロック塀や樹木や家屋などの越境物の解消を巡って隣地と揉める
・私道所有者から、私道の通行や掘削の承諾をもらえず建替えが困難になる

 

【不動産自体の問題】
・廃材などの地中埋設物が発見され、撤去費用等を請求される
・建築基準法を無視した増築で違法建築物扱いとなり価格が下がる

 
 
売買契約をした日から不動産を引き渡す日まで、一般的には1~3ヶ月かかります。
売買を進めた後では、これらの問題を解決するための時間が足りないことがあります。そうなると、せっかくの契約も白紙に戻ってしまいかねません。
 

【お客様に、今から行っていただくこと】
①土地境界確定測量や埋設管図面を取得し、地上/地中の越境物の有無を確認する
 
②越境物がある場合は、解消に向けて対象となる隣地と協議する
・今すぐ解消できる越境物なのか、建て替え時に解消するものなのかを確認する
例:今すぐ解消可能⇒樹木の枝葉など軽微なもの
  将来的に解消⇒ブロック塀など重大なもの
※買主が家を建替えるときに合わせて越境物を解体し解消することが多い
 
③将来撤去とする場合は、『覚書を締結』しておく

 
お客様が現時点では売却を考えていなくても、今のうちから問題を明らかにし、その問題解決方法を検証しておくことが大切です。
 
 

 遺産相続コンシェルジュより

 
本記事のポイントはこちら。

・問題の火種である越境物は“日常”に隠れていて、その問題を放置すると不動産価値が下がる
 
・地上の越境物は目視もしくは土地境界測量で発見、地中の越境物は埋設管図面で予測する
 
・越境物の他にも、土地境界や私道を巡って関係者と揉める、地中埋設物や違法建築物があるなどの影響から不動産価値が下がることもある
 
・売却予定がなくても、越境物の有無の確認、隣地との協議、必要があれば覚書の締結など、解決方法を早めに検証しておく

 
不動産の問題は、お金で解決できればまだいいほうで、心情面が絡んできたときがとても厄介です。
隣地の方など相談先との問題解消のボタンを掛け違えば問題の泥沼化もあり得ますから、根気強く関係者への真摯な説明と丁重な姿勢を続けなければなりません。
 
弊社では、皆様のお客様の不動産売却目的に沿って、期日内に完了できるようしっかりとサポートを行わせていただきます。いつでもお気軽にご相談ください。(記:松尾企晴)


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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。
会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から信頼を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

 

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