認知症になるとできなくなること。知っておきたい預金や実家の話

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2021.1.5

 
『もし1年前にあなた(親)が認知症になっていたら、今だれがどんなことに困っていますか』
 
超高齢化社会の日本では、厚労省統計で65歳以上の認知症発症者の数が2025年には5人に1人になるともいわれています。軽度の方も含めると、4人に1人だそうです。(2012年時点)
 
例えると、結婚している世帯の場合、夫妻の双方の両親合計4人のうち1人が認知症になる可能性があるということです。
 

しかし、自分事として向き合えているかというと、決してそうではないように感じています。
 
以前、セミナーに参加いただいた皆さんにこんな質問をしました。
 
「自分が認知症になると思う人!」 誰も手を挙げません。
「配偶者や友人、隣の人が認知症になると思う人!」そう訊くと、ほとんどの方が手を挙げます。
 
誰しも将来自分が認知症発症や相続を迎えることについて、元気で健康な時には、あまり考えたくないものだと思います。ですから、セミナーに参加しても何ら対策も講じずそのままその時を迎える方が多いのではないでしょうか。
 
本記事では、もし自分(親)が認知症になったらどのようなことに困るかをお伝えします。その対策について検討したり家族で話し合うきっかけとなればと思います。
 
今回のポイントは以下の通りです。
 

・認知症になると、その本人による契約行為ができない。つまり、物を買う、売る、直すなどが一切できなくなる。
 
・親が何も対策せず認知症になると、その配偶者や子の、費用や手続き等の負担が重くなることがある。
 
・すでに認知症の場合には法定後見制度を検討する。

 

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 認知症になるとできなくなること


 
認知症を発症し、“意思判断能力が喪失”した状態になると、契約行為について一切できなくなります。相続や資産に関連することを中心に、どのようなことが出来なくなるのか挙げてみます。
 
 

・金融機関での取引
→融資、引き出し、振り込み、定期口座契約/解約など
 
・不動産取引
 →売却、購入、貸す、借りる、土地測量、建替え、改修工事など
 
・生命保険
→契約締結、解約、変更など
 
・贈与
 →現金、住宅や教育などの資金贈与など
 
・金融商品取引
 →株や債券などの取引など
 
・相続関連
 →遺言を書く/修正、信託など

 
 
これらは一例ですが、身近なことから、資産を動かすときなど様々な場面で何もできなくなります。これを一般的に総称して“資産凍結”とも言われています。
 

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 認知症になってしまったらどのようなとき困るのか

家族
 
認知症等で意思判断能力が喪失すると出来なくなることについて、お分かりいただけたと思います。では具体的にどのような場面で困難が生じるのでしょうか。
 

 1. 衣食住の生活費を口座から引き出せなくなる

電気ガス水道などのライフラインや、賃貸住宅であれば賃料、食事、洋服などの生きていて必ずかかる費用、その他に老人ホームの月額利用料、介護ヘルパー、お薬など、お金がかかります。
 
金融機関で親が認知症で手続きができないという事実を伝えてしまうと、これらを支払うために親の口座から現金を引き出すこと、振り込みすることは一切できなくなる可能性があります。そして、意思判断能力がある家族が自らの口座から捻出することとなります。つまり、自分たちの生活費の他に、親の生活費の負担が生じるということです。
 

 2. 老人ホーム入所金を捻出するために実家売却ができない

親の介護について、介護施設を頼ることもあると思います。その場合、入所するための入所金や毎月の利用料等を支払う必要があり、家族は必要なお金を工面しなければなりません。弊社にも「介護費用に充てるため実家を売りたい」というご相談がありますが、所有者である親の意思判断能力が喪失していては売買契約を締結不可、つまり売却できません。もちろん貸すこともできません。
 
潤沢な資金があれば良いのですが、家を売れないために資金面に不安がある場合は、家族で介護することになったり、希望外の遠隔地の施設などと、家族の精神・肉体的な負担が生じることもあるのでしょう。
 

 3. 遺言書で揉めることも

認知症の疑いがあった親(被相続人)が遺した遺言書をめぐって、相続人間で争いが起こることも考えられます。
 
遺言書自体の効力については、最終的には裁判所の判断ですが、意思判断能力が低下/喪失した状態のとき書いたと客観的な証拠(医師の判断等)があるなどの場合、その遺言書は無効とされる可能性が高いです。
 
そして、遺言書が無効となると、相続人間での遺産分割協議をすることとなりますが、果たして揉めることなく話し合いができるかどうか、裁判所の判断を仰いでいる時点で、相続人間の関係は良好とは言えなさそうですね。
 
争族に発展し遺産分割協議が整わないと、相続税を安くできる各種特例を使えなくなったり、弁護士に頼めばその分の費用もかかります。相続人にとっては良い事がひとつもありません。
 

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 認知症になってしまった後に現金引き出しや不動産売却をできるようにする対策

通帳と紙幣
 
親の財産で介護や生活費の工面、実家を売却したいというとき、すでに認知症等で意思判断能力が喪失した状態ですと、それら全てできないとお伝えしてきました。
そのようなときどのような対策があるのでしょうか。
 

 1. 「法定後見人制度」を活用する

法定後見制度を活用することで、口座から現金を引き出すことや、不動産の売却などができるようになります。
ただし、家族以外の専門家などが後見人になることがあったり、その専門家への毎月の報酬支払い、途中で止められないなどの留意点もあります。法定後見制度を申請する前に老後と相続のことに詳しい司法書士や相続コンサルタントなどの専門家へ相談した方が良いでしょう。
 

 2. 金融機関の柔軟化

2020年3月頃、全国銀行協会が全国の各銀行に対して以下のことを促しました。
「認知症等で意思判断能力が低下、喪失している顧客の預金について、その家族が引き出せるようにする」というもので、家族関係の証明(戸籍抄本など)と老人ホームや病院など使途が明確(請求書など)であるという条件付きですが引き出せるようになったようです。
 
 

 まとめ

 

・認知症になると、その本人による契約行為ができない。つまり、物を買う、売る、直すなどが一切できなくなる。
 
・親が何も対策せず認知症になると、その配偶者や子の、費用や手続き等の負担が重くなることがある。
 
・すでに認知症等の場合には法定後見制度を検討する。

 
法定後見制度は現在22万4千人ほどの方が利用していますが、2020年の認知症有病者数(推計)は630万人ですから、利用者数は3.5%程度と少ないのが現状です。※厚労省統計
 
法定後見制度の利用者数が少ない現状について、お客様や司法書士等の専門家にその理由を聞いてみたところ、「家族以外の第三者が関与すること」「専門家への報酬支払い負担」「本人を守る制度のため財産の使い道に制限がかかる」など、どうやら使い勝手が良くないとも感じているようです。
 
本人を守る制度としては抜群の効果のある成年後見制度。
「よく分からないまま使う」「よく分からないから使わない」というのではなく、ちゃんと理解したうえで利用検討しましょう。
  
認知症等になる前の元気で健康な状態であれば、“任意後見制度”“家族信託”を利用し、財産凍結で困ることにならないよう未然に防ぐことができます。これらの制度の違いについては次回以降の記事で解説しますが、まずはどのようなものか知ること、そして、皆さんの家族にとってより良い財産管理の対策を講じていくことが大切でしょう。
 
私は認知症にならない!うちの家族は大丈夫!ではなく、本記事を読み直しながら「一年前に認知症になっていたとしたら、どんなことに困っているか」を考えてみてください。
 
 

 家族信託オンラインセミナー開催!


 
もしあなた(親)が認知症になってしまったら、現預金の引き出しや、実家を売却するなどの行為が自由にできなくなります。
例えば、親の預金口座での生活費の管理や老人ホームへの入所金を確保するため不動産を売却しようと思ってもできないなど、計画していた今後の生活に支障がでてしまうのです。
 
このような考えをお持ちの方は注意が必要です!
 
・親が元気なうちに財産の話を切り出すことができない
・我が家に限って揉めることなんて絶対にない。
・何もしなくても問題が起きてからその時対処すればいいのでは?
・親から預金通帳と銀行印、キャッシュカードを預かっているので問題ない
 
もし、このような考えをお持ちでしたら、今すぐその考えを見直してください。
 
何も対策をとらないで問題が生じてしまった人の相談を多数受ける度に、事前にその対策方法を教えてほしかったとのお客様の声を何度も聞いてきました。
 
認知症になっても、計画したとおり安心して財産管理ができ、そして子どもに資金面や財産管理などでの負担を軽くできる対策があります。
家族で財産を管理する「家族信託」という対策方法をこの機会にぜひ知ってほしいと思います。
 
<ぜひ聞いていただきたい方>
・本人(親)が70歳以上で、体調面に不安がある方
・自分や家族のために財産管理をしっかり行っていきたい方
・財産管理をそろそろ子どもに任せたい(任せて欲しい)と思っている方
・相続対策を安心して確実に進めたい方
 
<セミナー内容>
・相続を取り巻く環境
・家族信託とはなにか?制度と仕組みを丁寧に解説!
・後見制度との違い ~メリットや留意点~
・実家や空き家、アパートなどの実例から家族信託を知る
・家族信託で財産管理に成功する家族/失敗する家族

 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

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