家族信託をしただけで安心しないで!家族信託を組成する前に顧客に必ず確認するべき3つのこと

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2021.3.15

 
老後の財産管理の手法のひとつである、家族信託。
家族信託は、『お客様とそのご家族の希望を叶えるための手段』です。
 
せっかく家族信託を組成しても、資産を託されるご家族に“希望を叶えるために必要な準備”を事前にしっかり伝えられていないと、託された側が大変な思いをします。
例えば、「実家を売却して老人ホームの入所金等に充てる」ことが目的だったのに、それが叶えられなくなったり、お金の面でも苦労したりする可能性があります。
 
本記事では、家族信託で実家の管理を託される側(受託者)が、家族信託組成前にまず考えなければならないことにしぼって解説します。
家族信託を検討されているお客様がいる専門家の方は、ぜひご覧ください。
 
本記事のポイントはこちら

・家族信託は“親と子の伴走”であるから、ただ託して終わりではなく、『託す資産の詳細』を予め子に伝えておくことの重要性を理解する
 
・家族信託をする前に、『①不動産関連の書類のチェック②不動産の現状確認③親の私物をどうするか』について、親から子に伝えるように促す

 
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 家族信託は“親と子の伴走”

伴走
 
親の所有する資産について家族信託をしても、管理を託された子自身が資産のことを何も把握していない状態では、何をしたらいいのかが分からず、結果として何もしない…そんなお客様が多い。これではせっかく信託をしたのに意味がありません。
 
例え話ですが、皆さんは運動会のリレー競技に参加したことはありますか?走者がバトンを次走者に渡していく競技ですが、これは親が子に資産を渡していくことに似ています。
 

バトン
資産
走者
次走者
走り方
資産の管理や処分などの方法

 
もし、次走者が走り方を知らなかったら?
転ぶか、立ち止まったままか、バトンを落としてしまうのではないでしょうか。
 
競技の本番(相続)でしっかりバトンタッチできるよう、子がバトンを受け取りしっかりと走り切れるようにしてあげたいですよね。そのためには、練習(家族信託)で一緒に伴走しながら走り方を教えてあげることが必要です。
 
「とりあえず家族信託をしておけば、あとは何とかなる」
 
この考え方は、本番でバトンをいきなり渡すのと同じことです。
受託者(子)が、実家やその他の資産について何もしないでいると、いざ「資金確保のために不動産を売ろう」と思ったときになって、売却できないという問題が発覚することがあります。これでは、私たち専門家がお客様のお役に立てる機会を失うことにも繋がりかねません。
 
せっかく家族信託をするのですから、親と子が財産のことで話し合う機会を最大限活用して、『信託する不動産資料や問題点など資産の現状』そして『家族信託をする目的』をしっかり受託者に伝え、走り方を学んでもらいましょう。
 
家族信託をするときの目的が決まれば、“準備するべきこと”がわかります。
 

【目的】 親が安心して老人ホーム等の施設で生活できるようにする。
【方法】 資金を確保するために実家を売却する。

 
例えば、このように親が老人ホームに入所しても資金面で困らないよう安心して暮らすという目的と、この目的達成のための方法として、“実家を売却し資金を確保する”ことを決めたとします。
そうすると、いざ親が意思判断能力を失ってしまっても、子が判断に悩むことなく実家を売却することができます。
 
 

 家族信託をする前にお客様に
 必ず確認すべきポイント3つ

確認
 
では、実際に不動産(実家)を家族信託する前に、お客様へ何を確認すべきでしょうか。
 

家族信託をする前にお客様に必ず確認すべきポイント3つ
①不動産関連の書類の有無
②隣地との境界確認など不動産の現状
③親の私物について、“要るもの”と“要らないもの”

 
 

 ポイント① 不動産関連の書類の有無

【土地】
・登記簿謄本
・土地測量図
・境界確認書
 
【建物】
・登記簿謄本
・建築竣工図、間取り図
・確認済み証/検査済み証

 
土地境界確認書や建物竣工図など、公的機関で取得できる資料(登記簿謄本等)以外で所有者が保管している書類は、不動産取引において重要となるものばかりです。早めに所在を確認しましょう。
これら書類の有無を確認することで、“無い書類”を知ることができ、リスクヘッジが可能になります。
 
一例として、「土地境界確認書がない⇒土地境界測量の実施」などです。“無いこと”を知らなければ、実家を売却するときの潜在リスクとして残ります。
 

 ポイント② 隣地との境界確認など不動産の現状

例)
・地中埋設物、地中障害物
・土壌汚染やアスベスト
・隣地との境界点

 
不動産自体の現状と問題点の有無について調査しておきましょう。
 
地中埋設物の有り無しは土地を掘り起こしてみないと分かりませんが、例えば、『隣の家の給排水管が実家の土地を通っている』ということもあります。上下水道局で、配管図を入手することで確認できます。
また、隣地との境界点は不動産のよくあるトラブルに発展することがありますから、境界図や過去隣地トラブルの有無などをヒアリングしておくことも大切です。
これらは、問題があると売却価格に影響します。
 

 ポイント③ 親の、残す私物と不要な私物

思い出の品や親が大切にしていたものなど、処分してよいのかどうかは往々にして迷うものです。保管するにしても処分するにしても、時間も費用もかかりますので、親が元気なうちにやっておいて欲しいことです。詳しい理由は後述します。
 
 

 なぜ家族信託の組成前に確認することが
 大切なのか?

相談
 
土地測量や荷物整理などは実際に売却することが決まってからでも間に合うのでは?と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、不動産にはトラブルが多く潜んでいるものなのです。
 

・実は隣地の方と揉めていて、土地境界確認に応じてくれない。
 ⇒境界確認できないと土地面積が不確定、土地分筆が不可となり売却価格が下がることがあります。
 
・調査をしたら、現在の法令では再建築不可の土地だった。
 ⇒建物を建築できない土地は、土地利用が制限されるため大幅に価格が下がります。

 
これらは実際にあるトラブル事例です。皆さんは、隣地と揉めている、再建築ができない土地を買いたいでしょうか?
よほど価格が安くても、購入を躊躇される方が多いでしょう。
 
土地境界確認は通常2、3ヶ月間ほどで完了するものですが、隣地とトラブルに発展すると完了まで1年以上の時間を要したり、完了せず不調に終わったりすることもあります。
 
つまり、家族信託前に予め親から聞いていて、信託組成後すぐに不動産の問題解消へ取り掛かることができていたら、不動産の価格下落リスクを解消できていたかもしれません。
 
 

また、皆さんご自身の実家を思い浮かべてみてください。
 
家族が長く過ごした分、家具や日用品だけではなく思い出の品も多いことでしょう。
不動産を買ったときの契約書や保険に関するものなどの重要書類、通帳や印鑑もあるはずですが、親が管理しているそれらが、一体どこにあるかわかりますか?
親がこれからも残しておきたいと願うものと、処分してもいいものの判断がすぐにつきますか?
情報や想いを親と共有しておかなければ、即断していくのは難しいと思いませんか。すでに実家を出て親と生活を共にしていない状態であるなら尚更です。
 
しかし、不動産の売却が決まると、早くて1ヶ月で物件を買主へ引き渡すことになります。この1ヶ月の間に、室内の荷物の撤去処分をしなければなりません。
さて、お仕事や育児などで日頃お忙しいお客様が、その合間に1ヶ月ですべて撤去処分できるでしょうか?
 
昔と違い、捨てるにもごみの分別が大変です。
多くの方が手に負えずに産廃業者に依頼するのですが、家屋の面積が100㎡(4LDKくらい)で80万~100万円もかかるケースもありました。非常に大きな出費ですよね。
ご自身で撤去処分ができれば、費用も安く抑えることができます。
もし、親が元気なうちに情報を共有しておくことができ、家族信託契約をしてからすぐに取り掛かれていれば、いざ実家を売却するときにも困ることはないでしょう。
 
家族信託は、親の意志判断能力があるときに契約を締結し、意志判断能力がなくなった後も、子が実家など不動産の管理で困らないようにするための手段のひとつです。
親が元気なうちにできる対策である家族信託をしようと考えるお客様は、親世代の老後や相続について、危機感を持っている方だと言えるでしょう。
だからこそ私たち専門家は、そのようなお客様やご家族が確実に希望を叶えられるよう、『家族信託を組成する前=まだ親が元気なとき』に、上記の3つのポイントを必ず確認しましょうと促すことが大切なのです。
 
 

 遺産相続コンシェルジュより

 
今回は、家族信託で実家の管理を任される子が、家族信託組成前にやるべきことをお伝えしました。
 
本記事のポイントはこちら

・家族信託は“親と子の伴走”であるから、ただ託して終わりではなく、『託す資産の詳細』を予め子に伝えておくことの重要性を理解する
 
・家族信託をする前に、「①不動産関連の書類のチェック②不動産の現状確認③親の私物をどうするか」について、親から子に伝えるように促す

 
家族信託は、『お客様とそのご家族の希望を叶えるための手段』に過ぎません。
 
今回は実家の売却の時の準備についてお伝えしましたが、賃貸や建て替えでも同じようなことが求められます。
親が元気なうちから目的にあった準備を進めることで、不動産の価値を維持することができ、いざというとき、親の希望(事例では老人ホームに入所する資金の確保)をスムーズに叶えることができるでしょう。
 
家族信託は、契約を締結することがゴールではありません。受託者は、その後も管理を続けていくのです。そして、お客様にとって一番大切なのは目的を達成することです。
そのために、私たち専門家には『家族信託を組成する前の準備』のみならず、『家族信託を組成した後のサポート』も求められます。
 
例え不動産が専門外であっても、不動産と家族信託に精通した専門家と連携して、お客様の望む相続対策を叶えていきましょう。(記:松尾企晴)
 
 

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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から信頼を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

 

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