収益不動産の空室に悩むお客様の5つの共通点と、空室解消のための5つのチェックポイント
更新 2025.11.30
収益不動産オーナーの「空室による収入減」
お客様から、この悩みを相談された経験はないでしょうか。
賃貸経営を取り巻く環境は、人口減少・IoTの進化・住宅設備の高度化の影響を受け、かつてないほど変化が激しくなっています。
新型コロナウイルス以降は、住まい選びの価値基準も大きく揺れ動き、「利便性」から「環境から得られる価値」へとシフトしつつあります。
こうした中で、空室に悩むオーナーほど、
・とりあえず設備を入れ替える
・管理会社に言われるまま賃貸条件を下げる
という“場当たり的な対策”に走りがちです。
しかし、これからの賃貸経営では、もっと基本的な視点に立ち返る必要があります。
本稿では、空室に悩むオーナーに共通する5つのポイントと、
最新設備投資の前に専門家としてぜひ伝えてほしい
**「空室対策の5つのチェックポイント」**を解説します。
本記事のポイントはこちら。
①賃貸募集図面を見たことがない ②管理会社任せで放任 ③物件を1年以上見に行っていない ④情報は多いが行動していない ⑤入居者属性を把握していない
●空室対策の5つのチェックポイント
①募集図面の確認 ②選ばれてきた入居者の把握 ③物件のアピールポイントの整理 ④入居者目線での改善 ⑤募集条件の再検討
●ポイント
ターゲットを理解しないまま設備投資を行っても、
需要と供給がズレた「的外れな対策」になる可能性が高い。
空室に悩むオーナーに共通する5つの特徴
① 賃貸募集の図面を見たことがない
新築当時の全体図面は見ていても、部屋ごとの募集図面を見たことがないオーナーが非常に多く見られます。
管理会社任せの募集体制にありがちな状態です。
② 管理会社に任せっぱなし
空室対策・入居者対応・原状回復工事……。
管理会社に全て委ねて“放任”してしまうと、状況把握が遅れます。
賃貸経営において、放任は最も危険なスタイルです。
③ 物件に1年以上行っていない
管理報告書や写真だけでは状況はつかめません。
**「現地に行く・動画で確認する」**という基本行動が欠落しやすく、
状況悪化に気づけない典型例です。
④ 情報は豊富だが行動していない
本・セミナー・SNSで空室対策の情報は簡単に入ります。
しかし、
「この対策は実行して良いのか?」
の判断ができず、行動が止まってしまう人が大多数です。
⑤ 入居者の属性(誰が住んでいたか)を知らない
空室対策の最重要ポイントは、ターゲットを具体化できているか。
性別・年齢層・ライフスタイル・通勤手段などの属性情報を知らずに戦略を立てることはできません。
ご相談にいらっしゃるオーナーさんは、上記の5つのどれかに該当しています。
設備投資より先に見直すべき「5つのチェックポイント」

お客様が先ほどの共通点に当てはまっている不動産オーナーである場合、住んで得られる価値を伝えられていない、ターゲットを分析できていない、という状況です。
これでは闇雲に設備投資しても、需要と供給がマッチせず無駄な投資になる可能性があります。
設備投資にお金をかける前に、次の5つのステップをチェックしましょう。
①募集図面を確認する
募集図面は、物件の情報や魅力を伝える重要なツールです。不動産会社が作成した募集図面は、必ずオーナーも確認するようにアドバイスしましょう。
募集条件が正しく表示されているかはもちろんのこと、どんな表現を使っているかにも注目です。
例えば、よく「閑静な住宅街」と書かれている図面がありますが、「車の通りが少なく夜は静かです」と書かれている方が、読み手はイメージがしやすいです。
図面に使う写真も重要です。暗いものや、不鮮明な写真を使っていないかを確認しましょう。
また、中には管理会社が勝手に募集条件を加えているケースもあります。
②どのような人に選ばれるのかを調べる
新築当初から現在に至るまで、入居者の性別や家族構成、年齢層など、これまでどのような人に住んでもらってきたかを確認しましょう。
契約者本人や同居人などの情報は、賃貸借契約書や申込書で確認することができます。
お客様が所有されている物件はこれまでどんな人に選ばれたのかという情報をもとに、ターゲットを設定して戦略を練るのです。
もし女性の入居者が多かった場合は、思い切って女性専用の物件にするのもいいですね。
例えば『住むと綺麗になる部屋』をテーマにすれば、三面化粧台やナノイオンドライヤー、風呂釜を広くする、入浴剤を定期でプレゼントするなど、ターゲットである女性が喜ぶものを用意することができるのではないでしょうか。
③物件のアピールポイントを考える
その物件に住むことで、どんな生活を送ることができるかをお客様の目線で考えてみましょう。
例えば、「近くの大きな公園にはランニングコースがある」と書かれていれば、ランニングに興味がある人や健康志向の人は興味を持つかもしれません。
「○○な飲食店が近くに多くある」と書かれていれば、グルメな人に興味を持ってもらいやすいかもしれません。
このように、その物件に住むことによって得られる価値は何かを考え、伝えられるようにする必要があります。
④入居者目線で改善点を探す
募集図面や募集条件でせっかく興味をもってもらって内見まで漕ぎつけても、部屋に清潔感がなかったり、生活しづらそうな印象を与えてしまったりするとがっかりされ、選択肢から除外されます。
まずは、当たり前のことをするのです。
窓を開けて換気をする、物件の魅力ポイントを書いたカードを掲示する、スリッパやメジャーを用意する、共用部の清掃が行き届いているか確認する、など、オーナー自ら定期的に物件を訪問して内見者を気持ちよく迎えられるようにアドバイスしましょう。
⑤募集条件を再検討する
敷金や礼金は、周辺の類似物件と比較してどうでしょうか。
例えば礼金をゼロにすると、一時的な収入は得られませんが、なによりも優先すべきは入居者の確保です。
空室状態が長く続けば続くほど、その期間のその部屋の収入はゼロなのですから。
また、『入居者に長く住んでもらう』ということも、空室対策には必要な視点です。
長く住んでくれている入居者や滞納のない入居者には、更新料の免除やエアコンの交換などの特典をつけることで、更新のタイミングでの退去を阻止できる可能性があります。
それでは、これらのポイントを実行して慢性的な空室を解消したオーナーさんの実例をご紹介しましょう。
空室コンサルティング実例
資 産:賃貸マンション兼自宅(10階建)
相 談:
・全26戸中、6戸が常時空室状態。
・借入金返済が重くのしかかり、今後の建物改修費などを捻出できるか不安。
・家賃を相場以下に値下げするほかないと管理会社から言われているが、これまでも試してきたが決まらず、自分たちでは何をどのようにしたらいいのかわからない。
マンション管理の現状:
・地元の管理会社に入居者募集等を委託していて、連絡窓口はお父様が担っている。
・帳簿は娘Aさんがつけており、毎月収支がひっ迫していることに不安を抱えている。
対象不動産は東京都内にあり、JR線や他の私鉄も乗り入れしている最寄駅から徒歩4分。
アクセスには何ら申し分のない立地環境だったので、ご相談を受けた私は「6戸もの空室はちょっと多すぎるな」という印象を受けました。
収支改善コンサルティングのご依頼をいただき、いくつか気になったことがあったのでご家族に聞いてみました。
「募集図面を見たことはありますか」
「物件の魅力だなと思うところを教えてください」
「これまでどのような人たちが住んできましたか」
「賃料を下げる以外の賃貸条件変更はしましたか」
「内見対応はどのようにしていますか」
ご回答は、募集図面は新築の時以来見た記憶がなく、内見方法も知らない。管理会社からは賃料や敷金礼金の減額以外の条件変更の提案を受けたことがないとのこと。
物件の魅力については、病院や商業施設がすべて徒歩10分以内にある。大きな公園が近くにあって池もあるのでランニングすると気持ちがいい。バルコニー側が区立公園なので陽当たりが良い、などたくさんありました。
そして、こちらが実際の募集図面です。

Aさんに見せてみたところ、「えっ!?女性限定じゃないよ!」「家賃保証に入ることが条件だなんて知らない…」など、かなり驚いた様子でした。
これまで管理会社に任せきりにしていて、募集条件を把握していなかったのです。
まず私がお伝えしたのは、「現状の募集図面では、部屋を探している人に対して物件を全くアピールできていない」ということです。
物件をアピールし、興味を持たせ、内見してもらわない限り、空室が埋まるはずがありません。
賃貸募集においてまず大切なことは、探している人の《選択肢》に残ることです。
こちらは、効果的な募集図面の例です。

募集図面を比較してみて、皆様はどちらの図面の物件を内見したいと思いますか?
このように、募集図面を『住むことで得られる価値をイメージさせる』ものに変えたことで、物件イメージを掴みやすくなったため、お問い合わせが増えました。
内見も『お客様を迎え入れる』という考えを持ち、必要な内見グッズを揃えるなど環境を整え、できることはすぐ実行し、一歩一歩着実に進めることで成果を得ることができました。
その結果、約3ヶ月で空室だった6部屋全てが埋まったのです。
「ただ募集するのではなく、物件をしっかりアピールできているかなどに意識を向けることが大切だと分かりました」
「他人任せではダメですね。会社の経営と同じで、計画を立てて実行することが大事なんですね。これからは自分たちでも考える癖をつけていきます」
Aさんご家族からは、このようなお言葉をいただきました。
収益を上げるための意識や行動の改善ができたことで、Aさんご家族は数年たった今でも順調に賃貸経営ができています。
【事例のまとめ】
●確認して分かったこと
募集図面を見たことがない
現地の魅力を把握していない
管理会社の募集条件を把握していない
内見方法も不明
実際の図面を見せると、
「女性限定って書いてある!」
「家賃保証必須なんて初めて聞いた」
など、驚きの連続でした。
●改善内容
募集図面を“価値が伝わる”表現に刷新
魅力ポイント(公園・陽当たり・生活動線)を明確化
内見環境を整備し、来場者の印象を向上
できることから順番に実行
その結果——
約3ヶ月で空室6部屋すべて成約。
ご家族は今も安定的な賃貸経営を実現しています。
不動産のプロではなくてもできる、押さえるべきポイント
・直近5年分の収支(確定申告)をチェック
・過去入居者情報を整理し、ターゲットを可視化
どれも専門知識がなくてもできる取り組みですが、
空室対策の“軸”をつくる極めて重要なプロセスです。
ぜひ顧客面談の際に活用していただければと思います。
遺産相続コンシェルジュより
本記事のポイントはこちら。
・設備投資の前に、募集図面・ターゲット・現地確認・条件整理の4点を見直す
・住むことで得られる価値を伝えることが、入居率改善の鍵
・空室問題に強い危機感を持つのは“子世代”
・人口減少時代の賃貸経営には、“戦略的な管理”と“継続的な改善”が不可欠
専門家として、オーナーの資産を守るためにいまできる最善のアドバイスを届けていきましょう。
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20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から信頼を得ている。現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。





