2021年不動産市況の振り返りと、2022年の【不動産天気予報】

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2021年不動産市況の振り返りと、2022年の【不動産天気予報】写真
2021.12.27

 
2021年もいよいよ残すところあと数日。今年は皆様にとってどのような一年でしたか?
 
昨年から続く『新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)』の影響。
度重なる発令で、どこか慣れてしまった緊急事態宣言。
厳戒態勢のなか行われた東京オリンピック、パラリンピックの開催。
テレワークの普及など、オンラインでの繋がりが生活に浸透。
 
今年も新型コロナの話題は然り、それによって大きく変わったライフスタイルも、皆様の普段の生活の中に馴染んできたと言えるのではないでしょうか。
 
不動産の市況を見ると、2020年当初は先行き不安による影響で取引の動きは鈍化していましたが、財産防衛の観点から、徐々に『不動産が安定安全財産として注目される』ようになりました。
 
2021年は、特定のエリアでバブル期にも引けを取らないくらい不動産価格が高騰し、不動産を購入したくても買えないという状態は現在でも続いています。
最近では、プロサーチにも「不動産は一体いつまで高騰し続けるのか?2022年は売り時なのか、買い時なのかを教えてほしい」という、お客様や税理士など専門家からのお問い合わせが増えてまいりました。
 
今回は、不動産市況について2021年の振り返りと、2022年の予測をお伝えいたします。
 
 
本記事のポイントはこちら。

・中心市街地等を筆頭に不動産の価格が上昇し続けている。今後は二極化が一層進む。
 
・2022年は生産緑地の指定解除による住宅地供給増の影響や、投資用不動産の売却物件が増えることで価格下落リスクもある。
 
・【不動産天気予報】
投資用不動産は『晴れのち曇り』だが傘を持ち歩くこと。データだけではなく、不動産事業者の動きに注視してお客様へ情報提供することが大切。

 
 

 2021年の不動産市況の振り返り

不動産
 
「オリンピック開催後には不動産価格が下落する!?」
 
開催前にはそんな噂が囁かれていましたが、新型コロナの影響による落ち込みもあったものの、中心市街地の不動産は新築・中古住宅、投資用不動産は総じて不動産価格が上昇しました。
 
購入者がそのまま住む実需タイプの不動産と、投資用の不動産のこの一年の傾向を見てみましょう。
 

 実需タイプの不動産

実需不動産には、大きく分けて、分譲マンションと一戸建ての2つのタイプがあります。
それぞれ見てまいりましょう。
 

分譲マンション

新築の分譲マンションの平均販売価格は6,565万円と、バブル期を超えたともいわれています。
 
新築の分譲マンションが売れていて、価格も上昇しているという状態が続いていますが、ある分譲マンション事業者(以下、「デベロッパー」という)の担当者から話を聞き、「なるほど」と思うことがありました。
 
どうやら、新築物件の売り出す戸数を相当絞ったと言うのです。
例えば新築物件が全部で100戸あるとすると、本当は一度に100戸売りに出したいところを、販売戸数を30戸や40戸に絞る。
そうすると「第一期完売御礼」「第二期完売御礼」といったように広告に記載することができるため、売れ筋のマンションであることをアピールして、購入検討者の消費マインドをさらに高めたい意図があるようです。
 

 
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 不動産市場動向データ集(2021年4月)より抜粋
 
 
極端な例えですが、不動産の価格もスーパーで売っている野菜などと同じで、需要と供給によって決まります。
豊作のときはスーパーに並ぶ野菜の価格は安くなり、不作になって供給数が減ると価格が高くなりますよね。
 
分譲マンションは野菜の取れ高のように天候には左右されませんが、デベロッパーも需要と供給を意識していることがわかります。
 
 
続いて中古の分譲マンションですが、中心市街地や、市街地までの交通の利便性が高い物件の価格高騰が止まりません。
私どもが2021年の半ば頃に、相続による不動産売却のお手伝いをしたケースでも驚くような結果が出ました。
 
東京都港区の中古マンションで、築20年、専有面積45㎡程、新築当時の価格が4,000万円の不動産。
この不動産が、なんと8,000万円以上の価格で売却できたのです。実に2倍の価格です。
 
しかも、購入したのは個人ではなく、不動産事業者でした。
購入後は、相当な費用をかけてフルリフォームし、個人向けに売却することになるのですが、どうやら1億円以上で売り出すようです。
 
この事例のケースは限定入札方式で、不動産事業者5社~10社にご検討いただいたのですが、一番高額だったのが8,000万円で、2位以下は6,000万円半ばくらいの価格でした。
中古マンションの不動産事業者が購入する平均価格帯は6,000万円から6,500万円で、1億円以下で個人向けに再販するというのが相場だったのかもしれません。
 
このように実際に成約する価格がプロの目から見ても難しくなっています。
不動産売買のポータルサイトに掲載する前に、不動産会社の査定だけではなく、限定入札などで実際に売れる価格を把握することが大切でしょう。
 
 
実際に、成約単価と成約件数のデータにも反映されていました。
2021年における首都圏の中古マンション動向を見てみます。
 

・成約㎡単価は、増加傾向(11月の成約状況では、前年比+7.1%)
・成約件数は、減少傾向(11月の成約状況では、前年比▲5.6%)

 
また、新規販売件数や現在募集中件数もマイナスが続いています。
※参照:2021年11月レインズ月刊マーケットウォッチより
 

一戸建て

続いては一戸建てです。
 
先程の分譲マンションと同じく、中心市街地等の価格が高騰していますが、成約件数は減少しています。
 

 

 
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 不動産市場動向データ集(2021年4月)より抜粋
 
 
上記は新築一戸建てのデータですが、中古の一戸建ても同じような数値となっています。
 
プロサーチでは相続等の理由で一戸建て(実家)を売却するお客様のお手伝いもしていますが、中心市街地などの物件の価格は上がっていました。
 
実際に不動産の現場にいて感じたことは、実需の不動産は、分譲マンションも一戸建ても価格が上昇し続けた。そしてそのような不動産市況であることを、個人のお客様もよくご存じだったということです。
 
最近では、首都圏にお住まいの方が高騰しているマーケットで売却して、東京郊外や熱海などの温泉リゾート地域に住み替えたいというご相談が増えました。
 

 投資用不動産

投資用不動産についても、中心市街地の物件については価格が高騰しています。
 

 
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 不動産市場動向データ集(2021年4月)より抜粋
 
 
2020年に開催予定だった東京オリンピックに向けて投資用不動産の価格は上がっていき、このときは、売りたい人も多く、買いたい人はちゃんと購入できているという印象でした。
 
しかし、2020年半ばから2021年の現在までの投資用不動産の現場は、2020年以前とは少し様子が異なります。
 

・1億円前後の投資用不動産の売却物件数が少ない。
・買いたい人がいても、売却物件数自体が少ないため購入できない。

 
このような状況です。
 
そして、先ほどの需要と供給の観点などから中心市街地の物件の高騰が止まらず、転売しても儲かるため、投機的に投資用不動産の売買を繰り返し、売却益を得ている投資家や不動産会社が増えています。
 
さらには安定した利回りを期待できる日本の不動産に国内外の投資マネーが流れており、上場不動産投資信託(REIT)や私募ファンドを含めた資産額は2021年6月末で44兆円を超え、過去最高を更新したようです。
 
 
不動産事業者へ現在の環境下でも売買をする理由を聞いてみました。
 
「今の不動産価格は高いが、事業を続けるためにはそれでも買い続けなければない」
「売り上げを立てないと、融資を受ける際の金融機関からの評価が下がるかもしれない」
「購入検討できる物件は減っているのに、ライバルとなる不動産事業者が増えているように感じる。高値を付けないと購入できないから、高いと思っても買うしかない」

 
実需や投資用の不動産に共通していたことは、『売却物件数は少ない/価格が上がっている』ということでした。
 

 中心市街地以外や、いわゆる地方にある不動産

プロサーチでは日本全国の不動産の相談を受けていますが、そこで感じることは、人口減少が進んでいる地域や、交通利便性が低い立地など、住み替えの対象となりにくい不動産は価格下落基調であるということです。
 
近畿地方にある不動産売却をお手伝いした際にも、実需用の土地で、20年前の価格は4,000万円であったものが、現在は2,500万円にも届きませんでした。
その理由は、高齢化で施設に入居する方が増えたり、相続によって周辺に空き家や空き地が増えているのにそこに住む人が減っていたりするからです。
 

・営業している店舗が少ない商店街、いわゆるシャッター通り商店街
・空き家や空き地が目立っている地域
・バブル期前後に土地開発された地域で、築年数の古い家屋ばかりが立ち並んでいる
・中心市街地までの所要時間が1時間以上かかり、一日の乗降客数が減っている地域

 
プロサーチでは、お客様から売却のご相談を受けたとき、需要と供給のバランスを知るために上記のような点について確認しています。
このようなエリアの不動産は、データだけでは判断できない要素がたくさんあるからです。
 
そう考えると、東京や神奈川といった首都圏や、大阪や福岡などの中心市街地だから安心というわけではありません。
中心市街地の物件価格が上昇しているそばで、売りたくても売れない不動産が増えてきているのです。
 
 

 2022年の不動産市況

2022
 
2022年は、不動産の価格が横ばいか、下がる物件も出てくると考えています。
 

 生産緑地の指定解除による供給数増

2022年は、「生産緑地の2022年問題」と言われている年です。
 
1992年に生産緑地法が改正されたときに指定を受けた生産緑地が、相続等の理由によらなくても、30年を経過する2022年に指定解除できるようになります。
 
これまでは畑だった土地が、生産緑地の指定を解除することで、宅地とすることができます。
そうなると、市場に宅地が大量に供給され、周辺の土地価格が下がるのではと予測されています。
 

・売却する土地が増える⇒周辺の売却土地の価格に影響する
・土地を有効活用しアパート等を建築する⇒周辺の賃貸市場に影響する

 
『需要<供給』という関係になるので、価格や賃料が下がるのはイメージできますよね。
 
 

<参考>
柏市の生産緑地保有者を対象としたアンケート調査(平成30年~平成31年実施)
 
・主たる農業従事者の約5割が70歳以上と高齢である
・農業を引き継ぐ人が少ない(回答者の約5割が回答)

 
生産緑地を継続したくても、農家の高齢化や人材不足から断念される方が一定数いるでしょう。
 
その一方で、生産緑地10年延長の特定生産緑地制度を申請した数は、全体の7~8割程との結果が出ており、固定資産税や相続税の納税猶予等の税優遇も含めて、継続希望をされた人が多かったと考えられます。
 
要するに、2割から3割は生産緑地の指定を解除するということです。
以下は東京都全域の生産緑地の件数や面積です。
 
なお、1ヘクタール=10,000㎡=3,025坪です。
 

 
東京都都市整備局ホームページから一部抜粋。
 
以下は極端な計算ですが、どのくらい供給が増えるのか予測を見てみましょう。
 

練馬区にある生産緑地面積は、175.54ヘクタール=531,000坪。
仮にこのうち25%が生産緑地の指定解除をすると、132,750坪。
一戸建ての土地面積を30坪/戸とすると、4,425戸供給されることになる。
(2003年度の練馬区の新築戸建て供給戸数は約9,800戸です)

 
つまり、一年間に供給される新築戸建ての数に+50%上乗せされることになるかもしれません。
 

 住宅ローン控除の見直し

今年12月に発表された令和4年度税制改正大綱では、住宅ローンの借入をした際に所得税や住民税が還付される住宅ローン控除について、1%⇒0.7%への控除率縮小や、所得の要件が3,000万円以下⇒2,000万円以下に引き下げられました。
 
現状の住宅ローン利用者の78.1%が金利1%未満での借り入れをしており、毎年のローン金利負担額を上回る住宅ローン控除を受けている「逆ざや」状態になっているのではと政府からの指摘があるようです。
 
また、既存住宅の要件として「築年数の要件廃止と共に、新耐震基準に適合していることが要件」というものがありました。
 
このまま住宅ローン控除の改正がされた場合には、新耐震基準かどうかも購入者が検討する際のポイントとなりそうです。
 
売却を考えているお客様には、所有している不動産が「新耐震基準」を満たした建物なのかを確認しておくとよいでしょう。その事実を販売活動に活かすことができますね。
 

 2022年の『不動産天気予報』
 (中心市街地)

 

分譲マンション:晴れのち曇り
分譲マンション市場は引き続き活発な取引があるでしょう。
住み替えや売却を考えている方は2022年の前半がチャンスかもしれません。

 

一戸建て:晴れ
一戸建てへのニーズは固く、2022年も上昇または横ばいでしょう。
売却する方は、今のうちから少しでも高く売るための準備(測量の実施、不動産調査して問題点の解消)をしましょう。

 

投資用不動産:晴れのち曇り、傘の準備を
中心市街地の更に中心エリア(例:東京都の中央区や港区など)は晴れ間が続くでしょう。
しかし、その周辺のエリアは傘の準備が必要です。売却検討される方はなるべく急ぎましょう。

 
2022年は、経済の回復にも期待したいところですよね。
不動産についてはあまりにも価格が高騰しすぎたため、不動産事業者が買い控えや保有物件の売り払いを進めると不動産市場に物件が溢れますから、一気に曇りや雨の様相となります。
 
不動産は『雰囲気』で市況が変わったりするものです。データだけではなく、常日頃から不動産に関する情報をキャッチアップし、お客様へ提供することが必要でしょう。
 
 

 遺産相続コンシェルジュより

 
本記事のポイントはこちら。

・中心市街地等を筆頭に不動産の価格が上昇し続けている。今後は二極化が一層進む。
 
・2022年は生産緑地の指定解除による住宅地供給増の影響や、投資用不動産の売却物件が増えることで価格下落リスクもある。
 
・【不動産天気予報】
投資用不動産は『晴れのち曇り』だが傘を持ち歩くこと。データだけではなく、不動産事業者の動きに注視してお客様へ情報提供することが大切。

 


今回は、2021年、そして2022年の不動産市況についてお伝えいたしました。
今後も不動産市況に影響する税制改正が増えてくるのではと感じています。
 
お客様の希望を叶えるために何をアドバイスしていくのか?最新の情報をキャッチアップしていくことが、今以上に求められるようになります。
 
また、プロサーチでは、相続に関わる専門家のためのコミュニティ『プロサーチ遺産相続実務俱楽部」を今年6月からスタートしています。
当俱楽部では、実務に伴った不動産・相続の勉強会や、お客様へのアドバイスツールの提供等を行っています。
 

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来年も皆様とお会いできますことを楽しみにしております。
良いお年をお迎えください。(記:山内綾子)

 
 

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