家族信託ができる家族とできない家族。立ちはだかる2つの壁とは?

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2021.1.19

 

認知症になってしまうとお金や不動産の管理を家族だけで行うことが出来なくなってしまいます。
現金の引き出しや不動産の売却等が出来なくなってしまうのです。
 
そこで、親が認知症になったときにその対策として活用できるのが家族信託です。
 
親『体力的に財産管理がきつくなってきた』
子『親の負担を減らしてあげたいな』『認知症等で財産凍結されても困る』
 
このような思いから、家族信託を検討する方が年々増えてきています。
 
家族信託の契約は、親と子の2人(託す人と託される人)がいて、託す財産と内容が決まっていればできます。
 
しかし、「何とかしたい!」という思いがあっても家族信託の話が進まず断念する家庭もあれば、ちゃんと進む家庭もあります。その違いは何でしょうか?
 
本記事では、家族信託を考えるときにぶつかりがちな壁や、家族信託を進めるときに気を付けることをお伝えします。
 
 
今回のポイントは以下の通りです。
 

・家族信託を利用するには、家族皆の理解、親の託す覚悟、家族に託せる相手がいるということが大前提。
 
・家族信託を検討するときにハードルになるのは「家族各々の事情や考え方」と「費用」である。
 
・家族信託の見積り額だけみて組成しないと判断すると将来的に大きな損になることもある。その後の経済的な損失や負担にまで目を向ける必要がある。

 
 

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家族信託契約のハードル① 本人(親)や子どもの事情

階段
 
家族信託を検討するにあたってハードルの一つとなるのが『本人(親)や子どもの事情』です。
 

家族信託が進まないケースの代表例
≪本人(親)≫
・子どもに財産を託すことに不安がある。
・「大丈夫、子が困るようなことはない。」と思っている。問題点があったとしても聞く耳をもたない。
 
≪子ども≫
・仕事などで忙しいことを理由に消極的。
・「その時になったら考えればいい」と相続対策が優先順位として低い。

 
親か子どもどちらかがこのように思っていると家族信託は進みません。
 
 

事例紹介:家族信託を断念されたお客様
相談者:お母様(79歳)
家 族:長男(57歳)、次男(55歳)
財 産:自宅、現預金
背 景:お母様はご主人(4年前に他界)から財産を相続し、ひとり暮らし。
相 談:財産凍結による生活への影響が不安。家族信託を検討したい。

 
お母様は、テレビ番組で認知症になると不動産が売れなくなり、銀行口座は凍結されること、その対策方法として“家族信託”があることを知りました。
 
プロサーチ『財産の管理や処分を託せるご家族はいらっしゃいますか?』
 
ご相談者様『子どもは2人いるが財産管理を託すには不安があります。』
 

お母様の不安
・二人とも浪費家なので、託したお金を使い込まれたりしないか。
 
・子同士の仲が悪く、家族信託の話をして協力してくれるか。

 

プロサーチがお伝えしたこと
・家族信託した現預金はあくまでもお母様の財産なので、子は自分のために使えない。
 
・仲が悪くても、子二人から家族信託の理解を得られたらどちらか一人に託すことも出来る。
 
・財産を託した子の行動を監督する人(信託監督人)を置き、財産管理状況のチェック機能を付けることが可能。
 
・お母様が元気なうちはお母様が管理して、意思判断能力が喪失してから子に管理を任せることも可能(家族信託の効力発生のタイミングも自由に決められる)。

 
しかし、後日お母様から『子どものことを信じないわけではないけど、やっぱり託すことに不安があるわ。』と家族信託を断念する旨の連絡がありました。
 
このように、“本人(親)”“家族”の意思や状況によって、将来の不安はあるけど、託せる家族がいない、財産を託す決断ができず、家族信託を進められないといったことがあります。
 
もちろん家族信託が万能な相続対策方法ではありません。
 
事例のお母様は
⑴自宅を売却し
⑵その代金の一部を利用し老人ホームへ入所
⑶100歳まで20年分の生活費の確保(年金、売却後の残金など合計)して子に介護で資金的な迷惑をかけないようにと準備をしました。
 

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家族信託契約のハードル② 家族信託契約締結にかかる費用

矢印 崖っぷち
 
家族信託を進めるに際しての、もう一つのハードルは家族信託の『費用』です。
 
家族信託締結の費用は、およそ30万円~50万円です。 
※信託する自宅(評価額)と現預金の合計額が3,000万円とした場合の費用イメージです。
※登録免許税などの実費と、専門家のコンサルティングや契約書作成に係る報酬です。
※信託財産の評価合計額や、信託内容のレベルによって報酬額は変動します。
 
「けっこう高いなあ」と思いましたか?
 
しかし、家族信託の見積り額だけで、家族信託をするかしないかを判断するのは待ってください。
 
『家族信託をしなかったら、財産にどのくらい経済的損失が生じるのか』
『家族信託をしなかったら、家族にどのくらい経済的負担が生じるのか』

 
この経済的損失や負担の検証は、大まかにでも良いので必要です。
 
例:『将来自宅を売却してその代金で老人ホームに入所する』 
  ※自宅の相続税評価額:3,000万円とします。
 

家族信託をしていない場合
・家族が老人ホーム入所金や毎月の費用を負担することになる。
 
・法定後見制度で自宅売却。毎月後見人報酬の負担がある。(一般家庭3万/月程度)
 
つまり、ご本人がその後10年生存すると360万円の費用が発生します。(月3万円報酬×10年(120ヶ月))
また、法定後見制度において、被後見人の自宅売却をするには裁判所の許可が必要です。

 

家族信託した場合
・家族信託組成費用は50万円
※上記費用以外に財産を託した子などへの管理報酬(手間代)を設定することも可能です。

 
このように家族信託をした場合と、しなかった場合で、費用負担の総額に違いがあります。
 
本人(親)や家族の目的が、「親の意思判断能力が喪失しても、老人ホーム入所には親の自宅を売却した代金を使い、家族に資金的な負担をかけないようにしたい」であれば、家族信託の方が“自宅売却のための手段”として経済的負担も軽くなると判断できます。
 
これは、自宅だけではなくアパートを所有している方にも言えることです。
 
もし、アパートオーナーの意思判断能力が喪失すると、賃貸募集や賃貸借契約、リフォームといった契約行為ができなくなります。
 
そうなると、空室が増え賃料収入は減少し、建物の外観リフォームも出来ませんから見た目も悪くなる一方です。
 
アパートの売買価格は、簡単に言うと毎年いくら賃料収入を得られるかで決まります。
つまり、賃料収入が減ると価格が下がります。
 

例を見てみましょう。
 
年間収入480万円(月40万円)のアパートで、オーナーの意思判断能力喪失により賃貸経営ができず、空室増による賃料減収で年間収入420万円(月35万円)となった場合のアパート売買価格を比較してみます。
 
都内不動産で相場の投資利回りが5%とします。
 
計算式:年間収入 ÷ 利回り = 売買価格
 
年間収入480万円÷利回り5%=9,600万円
年間収入420万円÷利回り5%=8,400万円
               ▲1,200万円
 
年間収入が60万円違うだけで、売買価格に1,200万円もの差が出てしまう計算になります。
 
このように、オーナーの意思判断能力の喪失による経済的損失は相当な金額です。
 
もし、家族信託で対策を講じていたら、意思判断能力喪失を起因とするこの経済的損失はなかったでしょう。
 
家族信託を検討するときには、家族信託組成にかかる費用だけを見て判断するのではなく、その後の経済的な損失や負担にまで目を向ける必要があります。
 
 

まとめ

 

・家族信託を利用するには、家族皆の理解、親の託す覚悟、家族に託せる相手がいるということが大前提。
 
・家族信託を検討するときにハードルになるのは「家族各々の事情や考え方」と「費用」である。
 
・家族信託の見積り額だけみて組成しないと判断すると将来的に大きな損になることもある。その後の経済的な損失や負担にまで目を向ける必要がある。

 
家族信託の組成費用は決して安くありません。家族信託を検討する方は、まずは経済的な損失の検証をぜひおこなってください。理由は、“財産が減ること”が明確になっていた方が真剣に考えるからです。だれしも減らしたくはないですよね。
 
家族への説明の仕方や、財産の経済的な損失等の検証については、家族信託や相続と不動産にも詳しい専門家にご相談することを推奨します。
 
 

2021年2月25日(木)19:00 家族信託オンラインセミナー開催!


 
もしあなた(親)が認知症になってしまったら、現預金の引き出しや、実家を売却するなどの行為が自由にできなくなります。
例えば、親の預金口座での生活費の管理や老人ホームへの入所金を確保するため不動産を売却しようと思ってもできないなど、計画していた今後の生活に支障がでてしまうのです。
 
このような考えをお持ちの方は注意が必要です!
 
・親が元気なうちに財産の話を切り出すことができない
・我が家に限って揉めることなんて絶対にない。
・何もしなくても問題が起きてからその時対処すればいいのでは?
・親から預金通帳と銀行印、キャッシュカードを預かっているので問題ない
 
もし、このような考えをお持ちでしたら、今すぐその考えを見直してください。
 
何も対策をとらないで問題が生じてしまった人の相談を多数受ける度に、事前にその対策方法を教えてほしかったとのお客様の声を何度も聞いてきました。
 
認知症になっても、計画したとおり安心して財産管理ができ、そして子どもに資金面や財産管理などでの負担を軽くできる対策があります。
家族で財産を管理する「家族信託」という対策方法をこの機会にぜひ知ってほしいと思います。
 
<ぜひ聞いていただきたい方>
・本人(親)が70歳以上で、体調面に不安がある方
・自分や家族のために財産管理をしっかり行っていきたい方
・財産管理をそろそろ子どもに任せたい(任せて欲しい)と思っている方
・相続対策を安心して確実に進めたい方
 
<セミナー内容>
・相続を取り巻く環境
・家族信託とはなにか?制度と仕組みを丁寧に解説!
・後見制度との違い ~メリットや留意点~
・実家や空き家、アパートなどの実例から家族信託を知る
・家族信託で財産管理に成功する家族/失敗する家族

 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

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