土地境界トラブルによる不動産取引への影響。改めて土地境界の大切さを考えよう!

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お隣さんとの『土地境界』。
日々生活する中で、さほど気にしていないという方も多いのではないでしょうか。
 
ご自身やお客様が土地境界の立会いをした経験がある方もいらっしゃると思いますが、自分の土地境界がきちんとあるのか、正確に把握されていますか?
 
今回のメルマガでは、境界トラブルが不動産取引へどう影響してくるのか、トラブルが起きそうなときにどう対応するのか、事例をもとにお伝えします。
 

そもそもなぜ境界立会いを行うのか?

普段意識することが少ない『土地の境界』。
なぜ不動産取引では、まず境界立会いを行う必要があるのでしょうか。
(すべての取引において境界立会いが必要というわけではありません。境界立会いが必要なケースにスポットを当てています)
 
 

【土地境界立会いが必要なケース】
・土地売却の条件で土地面積を確定する必要がある
・土地を分割し、分筆登記を行う
・境界点や境界標を確認する、復元する必要がある

 
などです。
 
 
今回取り上げる事例は、相続で空き家となった実家(以下「本物件」という)を、相続税の支払いのため売却するというものです。
本物件は土地面積が近隣相場帯より大きく一個人が買うのは困難なため、戸建て事業者へ売却をする(2宅地以上の分譲住宅、分筆には隣地との境界確定が必要)ということになりました。
ご相談をいただいてから売却活動(プロサーチオリジナル限定入札)を行い、売主である依頼者も納得感のある価格(購入者)を出すことができ、売買契約に向け話を進めることに。
 
土地を2分割以上にするのが戸建て事業者である買主の目的のため、以下の条件成就が契約書に盛り込まれます。

①隣地所有者から境界確認書の取得
②確定測量図の作成・交付


隣地の方と、「土地の境界はここだね!」と合意し、書面(境界確認書)を締結することが契約で求められたのです。
※後述しますが、土地分筆を管轄する法務局に対して境界確認書は絶対必要となるわけではありません。
 
不動産取引において、この境界確定作業について軽んじられていることが多いのですが、弊社では一番と言っていいほど神経を尖らせます。
その理由は、もし境界確定が出来なければ最悪の場合、契約解除となるからです。
 
 
本事例での出来事を先にお伝えしますと、「境界確認書に押印したくない!」という隣地の方がいたのです。これだと境界確認書が取得できませんので、条件を満たせずに売買契約が解除になります。
しかし、当社では事前にそのことも織り込んで契約書を作成していたので、無事に不動産決済をすることができました。
 

売却をそのまま進められた理由

ではなぜ、トラブルを予見できたのでしょうか。
 
ポイントは2つあります。

①空き家だったため、隣地から雑草を取れなどと言われていた。
②そのことを踏まえ、土地家屋調査士Sさんに隣地の方へ測量挨拶をしてもらった。


依頼者の方は、何気ない会話の中で「雑草取れって急に言ってきてね~」とサラッとお話をされていましたが、この時に、もしかしたら何かあるかもしれないぞ!?と推測します。
親同士がずっとお隣さんでも、次世代になった途端に態度が変わる方もいますので。
 
その推測を実証していくために、Sさんにご挨拶がてら感触を確かめに行ってもらいました。
するとSさんからは「山内さん、ちょっと癖のある方で、境界確定まで時間がかかるか、何か言ってくる可能性が高い」という情報を入手できました。
 
買主にもその旨を伝え、戦略を練り、契約書には『境界確認書が入手できない場合は100万円控除する。ただし土地分筆はできることとする』といった条文を織り込みました。この一文が無ければ、契約は解除です。
 
100万円減額で話が付くなら安いものだ!と思ったら大間違いなので気を付けてください。
これは、契約前に話を付けていたからできたことで、契約後に生じた問題であれば、足元を見られもっと大きい減額だったでしょう。さらに、もし契約解除となれば、隣地との境界紛争のある土地として買手がつかない又は、売買価格自体が相当落ちることになっていたでしょう。
いかに早期にリスクを顕在化させ、無事決済に導くかが大切なのです。
 

境界確認書の必要性について


さて、境界確認書に署名押印したくないと言った隣地所有者のBさんについて触れたいと思います。
 
Bさんは、「境界立会いには応じるが、境界確認書への押印は必要無いので一切行いたくない。分筆は出来るはずだ」とのこと。なぜそのようなことを主張するのでしょうか?Bさんは思い違いをしているのでしょうか?
 
正解は、Bさんが言っていることは間違っていません。
 

【現地の状況】
①境界標はきちんと埋まっている。
②境界標の位置も全て正確な場所にある。
 
境界確認書がなくても『その場所に紛争がない』ことについて、きちんと説明出来る場合には分筆登記や地積更正登記等を行うことが可能です。
(法務局管轄支局により見解が異なることも。都度確認を取ることが必要)
 
それであれば、そもそも境界確認書は不要だったのでは?ということにもなりますが、戸建て事業者の多くは境界確認書を求めてきます。
主たる理由は、『販売時に、境界に問題がないと境界確認書で明示したい』からで、境界に紛争がない根拠を提示できないと、販売時に苦労することがあるからだそうです。
 

【過去、境界確認時の出来事】
・自分には関係のないことだから応じたくない
・過去に嫌なことやトラブルがあったから立ち会いたくない
・お隣さんの土地から、自分の土地に水が入ってくる。大迷惑。だから何もしたくない
・自分の土地はここまでのはず!認めない!
・電話してもインターホンを押しても、手紙を出しても、一切反応がない人

 
など、過去に近隣と人間関係のトラブルがあったり、境界立会いをお願いする際の仕方によって問題が起きたり、相互の感情の縺れによってうまく行かないことがあるのです。
いまのところ、プロサーチではすべて解決できているのでその経験値はありますが、常に慎重に進めていく必要があります。
 

不動産のプロとして、境界トラブルの対応で求められること


普段お隣さんとの良い関係を保っていても、境界トラブルは何らかのタイミングで発生することがあり、もし揉めてしまった場合、どのようにその不動産を売却できる状態に持っていくか・価値を下げない状況にするかが、間に入る不動産会社や不動産コンサルタントとしての大きな役割と言えます。
 
最近も異業種から“不動産”業界への参入が多く見受けられますが、不動産によるトラブルは様々なケースがあり、状況にきちんと対応し、交渉力、折衝力、解決力を持ち合わせる必要があります。
 
今後、お客様から不動産売却や整備のご相談がありましたら、「土地境界は大切です!ご両親が元気な今のうちにやっておきましょう!」とお伝えください。
または、弊社までご連絡をいただければ、リスクを顕在化し、問題解決のうえ価値を上げる不動産調査をいたします。
 

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス

プロサーチでは、マンションや戸建て、畑や生産緑地、借地や底地、広大地など多種多様な不動産について、どのようなリスクが潜んでいるのか調査分析し、必要な対策の提案を行っております。
相続対策の一環として不動産の遺産分割や売却・有効活用等をする場合に、どういった手法が良いのか(売却であれば、最良な進め方など)など、不動産・遺産全体に関するアドバイスはこれまでもよくご相談をいただき、ご依頼くださったお客様からも喜びのお声を頂戴しております。
お気軽にご相談ください。(記:山内綾子)
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