どうする?相続した負の不動産の行方‐放置せずに「処分の選択肢」を考える

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どうする?相続した負の不動産の行方‐放置せずに「処分の選択肢」を考える写真

2024.12.20
更新 2025.12.20

 
 
親や祖父母の大切な土地を相続したものの、
 
「遠方で管理が大変…」

 
「売れないからどうしたらいいかわからない…」

 
「固定資産税や管理費が負担…」

 
といった悩みを抱えていませんか?

 
こうした、売れず・貸せず・使えない不動産のことを、最近では「負動産(ふどうさん)」とも呼びます。
 
放置したままにしておくと、固定資産税がかかり続けるだけでなく、将来トラブルの原因にもなります。
 
そこで今回は、令和5年(2023年)からスタートした新しい制度と、他の選択肢についてわかりやすくお伝えします。

 
 
今回のポイントは以下の通りです。
 

・不要な土地を手放せる『相続土地の国庫帰属制度』が始まっています。
 
・この制度には、「条件や費用があり、全ての土地が対象ではありません。
 
・国の制度だけでなく、他の処分方法も知っておくことが大切です。

 
■関連記事
その不動産、子にとっては不要かも!?相続か処分かの判断方法と今からできる対策!

 
 

 『相続土地の国庫帰属制度』とは

土地
 
「相続土地の国庫帰属制度」は、相続や遺贈(遺言で渡された場合)で取得した土地を、国に引き取ってもらえる仕組みです。
つまり、自分で売ったり貸したりできない土地を、国に“手放す”ことができる制度です。


 
この制度のポイントは次のとおりです:
 

制度の開始: 令和5年4月27日からスタートしています。
利用できる人: 相続や遺贈で土地を取得した方に限られます。
※買って取得した人は使えません。

 
対象となる土地: 土地のみが対象で、建物は含まれません。

 
費用がかかる: 審査手数料や土地管理費相当額が必要です。

 
全ての土地が対象ではない: 境界が不明な土地や、引き取りが難しい土地は対象外です。
 
 
相続土地国庫帰属制度の概略説明はこちら(LandIssues株式会社作成)
 
所有者不明土地があることによって、下記のような問題が起こります。
 

・所有者が不明のため、固定資産税が徴収できない
・土地を有効活用したいが所有者に連絡が取れない
・土地所有者を探すコストがかさむことによって財政が圧迫される

 
この制度は、すべての財産を放棄しなければならない相続放棄制度とは異なり、処分したい土地だけを国に引き取ってもらえます。
つまり、相続した他の資産まで手放す必要はないのです。
 

 制度の概要

本制度の主な概要は次の通りです。
 

施行日
令和5年4月27日
対象不動産
・土地のみ
・建物は引き取らない
・施行前に相続した土地も引き取り対象
申請ができる人
・相続や遺贈で取得した相続人
・相続等で取得した共有者全員で申請する
・相続等で取得した人と売買等で取得した人とが
 混在していてもその全員で申請すれば可能
費用
・審査手数料14,000円(土地1筆あたり)
・土地管理費相当額の費用(20万円から※本記事で後述)
引き取れない土地
土地境界が不明な土地など

 

 国が引き取れない土地

国が引き取らない土地として次の10条件を挙げています。
 

※法務省資料を基に弊社作成。
 

※上記資料は「相続土地国庫帰属法施行令について(法務省)」などから一部抜粋しています。
 
上記の他に、NG項目などが追加されています。
別荘地で管理費の支払いがある土地はNG、山林や崖地、私道や接道がない土地には厳しい条件があります。
国が管理するに際して通行や使用の妨げがある、他人の身体や財産などに対して損害を与える可能性があるような土地は原則引き取らないと考えてよいでしょう。
 
国に引き取ってもらうためには、建物がある場合は解体して更地にし、境界が明らかではないときは土地測量をするなどで、土地境界がどこなのか調査しなければなりません。
 
条件を満たすための整備にかかる費用の一例をお伝えします。
 
建物解体と残置物処理費:約180万円〜(木造3LDK、90㎡の場合)
測量費:約30万円〜(立地・面積による)
申請代行料:30万円~(弁護士、司法書士、行政書士へ依頼)
審査手数料:1筆14,000円
国に支払う負担金:約60万円〜100万円(面積・地域で異なる)

【例】市街化区域の宅地300㎡の場合:負担金は約101万円

このように、「制度はあるが整備には手間とお金がかかる」というのが実情です。

 
なお、山林などは、広大であり土地境界を見つけるのも大変。測量費は100万円以上かかることが多いです。
 
 
当該制度を使うにしても、土地整備だけで相当費用がかかることがわかります。
 

 引き取る手続きと負担金

 

手続き

法務省から、申請から負担金納付までのフローが開示されています。
 

 
審査フローは以下をご参照ください。
 

 

 
法務省 相続土地国庫帰属制度ホームページより抜粋
 
申請から承認までに要する時間は、
書類や現地調査を行い結果通知まで半年から1年はかかると言われています。
 
 

負担金

国が土地を引き取ってくれる制度と言っても、『無料』というわけではありません。
 

 

 
※上記資料は「相続土地国庫帰属法施行令について(法務省)」などから一部抜粋しています。
※負担金額の自動計算シート(Excelファイル)はこちら(法務省作成、誰でもダウンロードできます)
 

負担金計算例

国に支払う負担金の例を挙げます。
 
【市街化地域にある宅地 土地面積300㎡】
負担金は、200㎡超400㎡以下ですから、(300㎡×2,250円/㎡)+343,000円の計算式を当てはめます。
計算すると、1,018,000円です。
 
【山林 土地面積2,000㎡】
負担金は、1,500㎡超3,000㎡以下ですから、(2,000㎡×17円/㎡)+248,000円の計算式を当てはめます。
計算すると、588,000円です。
 
国に対して支払う負担金は、土地の種別等(登記上の地目ではなく現況で判断)によって変わるため、不動産会社など不動産プロや、管轄自治体の都市計画課や農業委員会等に問い合わせて確認しましょう。
 
また、この他に審査手数料、さらに前述した土地境界確定費用や、建物があれば解体費用もかかります。
 
 

 『相続土地の国庫帰属制度』を利用するために


承認要件を見る限り、「実際に引き取ってくれる土地なんてあるのか?」と思うくらい相当厳しいのが実際のところでしょう。
 
専門家の間でも「条件を整備するための費用や時間がかかりすぎる」という声があります。
 
制度スタート時の法務局への相談件数は15,000件で、2年経った令和7年10月末の申請総数は4,566件ですから、申請自体、断念している方も多くいます。
(承認件数2,145件と、申請数に対して約50%と比較的高い割合ですね。承認された土地種別で見ると田畑と宅地の合計で73%ですから、平地であることや、これまで管理されてきた実績のある土地は承認される可能性が高いと言えそうです)
 
売れない貸せない土地は、前述の引き取ってもらえない条件①~⑩に当てはまっていることが多く、将来的に制度の利用検討する方は、今のうちから、『相続土地の国庫帰属を申請できる状態』まで土地を整備しましょう。
 

 今から整備しておくこと

そのためには、どのようなことをしなければならないのでしょうか。
 

1) 建物や構築物の解体(居宅や倉庫などすべての構築物)
2) 土地境界に関する資料を収集する、測量しておく
3) 賃貸を止める(資材置き場や駐車場など)
4) 土壌汚染や地中埋設物の有無を調査する(地歴などの情報収集)
5) 隣地との揉め事を解決

 
この他にも、隣地との紛争がない状態ということから、樹木の枝葉やブロック塀などの(被)越境物の解消なども必要でしょう。
 
また、引き取り条件の土地境界を明らかにするという項目について、宅地なら測りようがありますが、山林となると土地面積は広大ですし、その労力や費用は大変なものです。
 
国は、まっさらで綺麗な土地にしなければ引き取ってくれません。
整備には相当な時間や労力を要しますから、今から準備を始めておく必要があります。
 
 

 不要な不動産の処分方法


「自分も使わない」「売れない・貸せない」「相続もしたくない」という不要な不動産は、これまで説明してきた『相続土地の国庫帰属制度』以外に、主に次の2つの対応策があります。
(なお、地方自治体や財団などへの寄付という方法もありますが、とくに地方自治体が不動産の寄付を受け付けることが殆どないため、本記事では割愛します)
 

 
期限
かかる費用
留意点
相続放棄
相続開始3ヶ月以内
印紙等3,000円
遺産すべて放棄
事業者による引き取り
いつでも
引取料15万円~
信ぴょう性、有料

 
以下に詳しく解説いたします。
 

 相続放棄

親の遺産を相続したくないとき、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に裁判所に相続の放棄の申述をする必要があります。
この手続きをしない限り、放棄することはできません。
 
参考:相続の放棄の申述(裁判所HP)
 
 

主な留意点
・特定の財産のみを相続放棄できない
・相続放棄者は最初から相続人ではなかったとして、他の相続人間で遺産分割協議する

 
被相続人の財産を相続時に放棄できる制度ですが、不要な不動産を含む被相続人全ての財産を放棄することとなります。
 
不要な不動産以外にどのような財産があるのかしっかり調査した上で、この制度を利用するのかを慎重に判断しましょう。
 

 事業者による不要不動産の引き取り

不動産会社などが、不要な土地・建物を有料で引き取るサービスを提供しています。
国の制度と違って、「建物があってもOK」「測量不要」など柔軟な対応が特徴です。
 
 

引き取り料金
土地1筆15万円、同エリアの場合は2筆以降5万円
建物が使える場合は50万円/棟
引き取れる不動産
全国の土地、建物、共有持分も可能
引き取れない不動産
農業のみの利用に制限された土地(農地転用不可)、抵当権付き
土地の境界明示
不要
費用の支払い時期
所有権移転登記後

《参考》
引き取り会社 LandIssues株式会社ホームページ
事業説明 https://land-issue.com/unwanted-real-estate/

 
このほか、固定資産税や別荘管理費等がある場合は、20年分超がかかるなどの条件があります。
 
「詳しく話が聞きたい」、「見積もりを作ってほしい」などのご希望や、「相続土地の国庫帰属制度とどちらがいいのか知りたい」というご質問がございましたら、プロサーチ株式会社までご連絡ください。(メールstaff@pro-search.jp)
 
 
【引き取り会社等を装った詐欺に注意!】
売れない・貸せないと悩んでいる高齢の不動産所有者を狙った詐欺犯罪が起こっています。
 
不動産ブローカーなどと名乗る者から、
「買い手がいるから、調査料をください」
「この土地を欲しい人が測量をしたいと言っているので、測量費をください」

といった連絡が来て、先にお金を支払ったら最後、そのまま連絡が取れなくなることがあります。
 
不動産の所有者に先にお金を要求してくる業者の場合は、売れなくて困っている方の弱みに付け込んだ詐欺である可能性が高いので、くれぐれもご注意ください。
 
先払いは詐欺払い。です。
 
「こういう業者から先に費用を支払えという連絡があったけどどうしたらいいのか分からない…」といったご不安やお悩みがある場合は、すぐにプロサーチもしくは信頼できる弁護士などの専門家にご連絡ください。
 
 

 無料相談受付中

 
本記事をお読みいただいた方へ、プロサーチ株式会社では、売れない・貸せないといった土地の調査、価格査定、売買、処分の方法の検討から実行までサポートをすることが可能です。
 
『相続土地の国庫帰属制度』に関するご相談、引き取りサービス事業者の紹介なども承っておりますので、無料相談をしたい方はぜひお問い合わせください。
 

 

 

 まとめ

 
今回のポイントは以下の通りです。
 

・不要な土地を手放せる『相続土地の国庫帰属制度』が始まっています。
 
・この制度には、「条件や費用があり、全ての土地が対象ではありません。
 
・国の制度だけでなく、他の処分方法も知っておくことが大切です。

 
本記事では、『相続土地の国庫帰属制度』や、不要な不動産(負動産)の引き取りサービスなどのことをお伝えしました。
 
ご家族にとって一番よい選択肢を選べるように、たとえ不要な不動産であっても放置したままにするのではなく、ちゃんと整備して処分の選択肢を増やしていきましょう。
 
そのためには、相続にも詳しい不動産の専門家にご相談されることをおすすめします。
 

 
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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)
 
・公社)全日本不動産協会東京都本部千代田支部教育研修等の副委員長
・国土交通省・公社)不動産流通推進センター 良質な不動産コンサルティングの普及・定着に向けた検討委員会(2025年~)実務委員着任
・不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士の資格講師等を歴任
・司法書士会、税理士事務所、不動産会社、相続診断士会各支部、金融機関等での講師等
 

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナー(年100回)などで情報を発信している。

 

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