家族信託契約でアパート管理させる前に知っておきたい親子の資産承継方法

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家族信託契約でアパート管理させる前に知っておきたい親子の資産承継方法写真

2020.12.1

 
先日の記事では「家族信託」の仕組みをイラスト付きで解説しました。
 
家族信託ってなに?概要や仕組みをわかりやすくイラスト解説!
 
相続対策として有効な家族信託ですが、「とりあえず家族信託を組成しておけば、万が一、親が意思判断能力を喪失しても大丈夫」と、家族信託することを目的にした提案をする専門家もいます。
 
しかし実は「家族信託をしてさえおけば安心」ではありません。
万が一の場合に向けて、親から子へ情報を繋いでいくことが、円満資産承継に必要な鍵なのです。
 
今回のポイントは下記の通りです。
 

・家族信託がどの場合にも有効であるとは限らない。
 
・家族信託は、事前の準備次第で子ども(受託者)の負担が大きく変わる。
 
・バトンタッチではなく、親は子どもに伴走しながら財産管理を学ばせる。

 

あなたに家族信託は本当に必要なのか


始めに、あなたが家族信託をする目的について考えてみましょう。
 
『認知症になる前に財産凍結されないようにしておきたい!』と不安になり、家族信託を考えたいというご相談をよく受けます。
 
たしかに家族信託の契約さえすれば、その財産凍結の不安は減るのだと思います。
 
しかし、「財産凍結しなくなっただけ」で、本人(親)は「自分の財産を活用して何をしたいのか?」が明確ではないことが多いです。
 
例えば「自宅を将来子どもに残してあげたいから維持管理したい。」が目的だとします。
 
子自身の現預金や、認知症等になる前に子へ現金贈与することによって、子が現預金を十分に持っていれば、親が認知症になって財産凍結されても、家族信託契約をせずとも維持管理は出来てしまいます。
 
しかし、「老人ホームの入居金等で子供に迷惑かけないように、子どもが実家を売って資金確保できるようにする」「アパートの収入を減らさず、綺麗な状態で子供に引き継がせたい」などが目的であれば、家族信託をする意味があります。
 
つまり、家族信託は目的を果たすための手段でしかないのです。
ですので「家族信託を利用して何を叶えたいのか」をあらかじめ考えることが大切です。
 
 
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家族信託は契約してからが本番


 
それでは家族信託を活用するにあたり大切なことは何かを考えてみたいと思います。
 
例えばこんな家族がいたとします。
 

家族構成と資産状況
・家族構成 父70歳(ご相談者)、母68歳、子38歳(会社員)
・築古アパートを東京都23区内に3棟所有している
・アパート管理は父だけで行っている

 

相談内容
・自分たちの家族の場合でも家族信託を使えるのか。
・いつ認知症や病気で意思判断できない状況等になるかわからない。そのとき財産のことで家族に迷惑をかけたくない。
・アパートの管理を徐々に子供に任せたい。

 

父「家族信託を使うことで、アパート管理はどのようなことができるのですか?」
 
A 「信託で定める内容にもよりますが、基本的には賃貸契約やリフォーム、建て替え、売却など、アパートの運営管理に関わるすべてを、お父さんの意思判断能力が喪失してもお子さん(受託者)が代わりに行うことができます。」
 
父「それなら、私に万一があっても子どもが継続してアパートの管理ができるんだね」
 
子「今までアパートの管理をやったことがないから不安もあるけど、将来、何もできなくなるのは避けたいし、自分たちの意思判断で継続して管理ができるのはいいね」
 
こうした話の中で、将来の万一に備えられるならと家族全員が納得し、家族信託契約に進むことになりました。
 
ではこの家族の場合、もしも将来お父さんの判断能力が喪失してしまったとき、受託者である子はアパートの管理運営をしっかりと行えるのでしょうか?
 
アパートの運営管理では、賃貸の募集条件設定、空室対策、管理会社への対応、更新対応、家賃督促、苦情対応、各種発注/支払い、リフォーム、税金支払い、確定申告対応、関係者対応など、挙げだしたらきりがないほど多岐にわたりやるべきことがあります。
 
ところが受託者である子は今まで一度もアパートの運営管理に携わったことがありません。
もしも家族信託の契約を締結しただけで、お父さんが今まで行ってきたアパート管理のノウハウなどを受け継いでいなかった場合、受託者である子は手探りで一から始めなければなりません。そして本業の仕事もある子は、アパート管理に相当な負担を強いられることになると容易に想像できます。
 
これでは「財産管理、特にアパート管理のことで家族に迷惑をかけたくない」というお父さんの希望は、家族信託契約を締結しただけでは叶えられたとは言えませんよね。
 
自分に何かあったときを考え、できる限り具体的に受託者となる人に財産管理のことを教えないと本来の家族信託の目的の達成のために受託者がとても苦労してしまう結果にもなりかねません。
 
ですから家族信託の契約を結ぶだけでなく、お父さんが元気なうちに子どもと一緒に管理を行うことが重要なのです。そして、我々専門家は、親と子で行う財産管理がよりスムーズに進むように継続的なサポートをしていくべきなのだと思います。
 
 

まとめ

今回のポイント
 

・家族信託がどの場合にも有効であるとは限らない。
 
・家族信託は、事前の準備次第で子ども(受託者)の負担が大きく変わる。
 
・バトンタッチではなく、親は子どもに伴走しながら財産管理を学ばせる。

 
世の中では家族信託がもたらす効果ばかりが謳われていますが、家族信託契約を締結すること自体はゴールではありません。そこからスタートです。財産のバトンタッチではなく、親が子どもに伴走しながら教えていく、これが家族信託の理想の形だと考えています。
 
不動産の財産管理の仕方と言っても、どのように子どもに伝えていけばよいか、親から何を聞けば情報が引き出せるのか、などの不安に思うことがありましたら、不動産と家族信託に詳しい専門家にご相談されることをお勧めします。
 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

 

 

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