相続の専門家が、相続対策の“効果”よりも優先するべきものとは?

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2021.9.30

 
「相続対策が必要だと思うお客様は?」
 
こう聞かれたら、相続の専門家の皆様はどのような方をイメージされますか?
 
『遺産額のうち半分以上が実家で、相続人が2名以上いて、遺産分割を考える必要がある方』
『遺産が現預金や有価証券ばかりで相続税が高く、相続税の引き下げが必要と感じている方』
などのお客様をイメージすることができますよね。
 
その中でも、自宅以外に不動産を多く抱える、いわゆる「地主さん」をイメージされる方は多いのではないでしょうか。
 
よくある地主さんの親世代からのご相談例で言いますと、「先祖代々から受け継いできた土地を自分の代で手放すわけにはいかない。相続税の納税や、遺産分割のことも気になるし、後継者がちゃんと土地を守っていけるのかも心配。相続対策について、どのように考えればいいのか?」といった内容です。
 
本記事では、悩み続けてきた地主さんの相続対策がうまく進んだ事例をご紹介し、専門家として重要視すべきポイントについてお伝えいたします。
 
本記事のポイントはこちら。

・どれだけ良い提案、得になる話を聞いても、親だけでは相続対策は進まない。子の気持ちを聞き、自分(親)の気持ちとの折り合いをつけることが必要である。
 
・相続の専門家として大切なことは、お客様の気持ちを聴いてそれを相続対策の提案に落とし込むことと、家族全員の気持ちの交通整理を行うこと。

 
 

 千葉県の地主さんの事例

地主
 
千葉県の地主で、土地約800坪を所有する地主のAさん。
800坪もの土地には、自宅や駐車場、アパート、Aさんが耕している畑があります。
 

 
Aさんとプロサーチは、生命保険の営業のBさんからのご紹介でお会いしました。
 
どうやら、3年ほど前に相続対策としてアパートを建築したものの、遺産分割や相続税納税、将来的な土地全体の有効活用等の対策については未着手だったようです。
そこでBさんからプロサーチに、それらの不動産相続の対策提案をして欲しいとご連絡があり、Aさんにお会いすることに。
 
Aさんからお聴きした内容は次の通りです。
 

<家族構成>
Aさん:78歳
奥様:75歳
長女:50歳 両親と同居中
次女:48歳 実家近くのアパートで一人暮らし

 

<Aさんの想い>
■相続税をできるだけ低くしたい
⇒相続税評価額が高い畑と月極駐車場を有効活用したほうがいいのか。
この二つの土地の固定資産税が高く家計を圧迫しているため、何とかしたい。
 
■不動産を活用して収入を増やしたい
⇒アパートは借入金の返済もあり手残りは少ない。今後の生活資金に少し不安があり、収入を増やして安心したい。
 
■子どもたちへの土地の残し方を考えたい
⇒子どものために、畑や駐車場部分も土地活用をしたほうがいいのか知りたい。

 
自宅やアパートなどの建物が建っている敷地は、小規模宅地の特例や貸家建付地などで相続税評価額を下げることができますが、畑や駐車場はそれらがほとんどありません。
 
Aさんは、この畑や駐車場を有効活用することで、相続税や収入面で大きな対策効果を得られるのでは?と考えていらっしゃいました。
 
私は、相続対策をするうえで土地の有効活用はもちろん資産の組み換えを行うこと(土地を売却し、不動産資産に対策すること)について、一般的な活用の効果を説明しながら、Aさんのお気持ちを聴いてみました。
 
Aさん
「この土地は戦後から持っている土地で、出来れば今後もこのまま持ち続けたい」
「畑で野菜を作るのが楽しみ。畑がなくなってしまうのは寂しい」
「不動産の管理運営は全て自分が行っているので、将来、家族が管理できるか不安だ」

 
地主さんで、土地をなるべく残したいという想いをお持ちの方は多いです。
Aさんもやはりそういったお考えでいらっしゃると知り、私は対策プランに頭を悩ませました。
 
 

 【対策プランのご提案】

Aさんのお話をもとに、次のような対策プランを作成しました。
提案したプランの一部をご紹介いたします。
 

プラン①:畑の土地活用(戸建て賃貸を3棟)

畑の一部分に戸建て賃貸を3棟建築する。
土地を残しながら、相続税対策に効果、収入のプラス、相続税の納税財源を確保するプラン。
 
・アパートより戸建ての方が賃貸需要を見込める地域であること。
・畑を一部残せること、先々は貸農園付の戸建て賃貸とすることも出来る。
・相続税の納税財源には、駐車場や戸建て賃貸を充てることが出来る。
 
 

プラン②:不動産の組み換え

畑の一部分と駐車場を売却し、投資用不動産に組み換える。
売却代金で投資用不動産に組み換えをすることで、借入返済の負担なく収入が得られ、相続税対策にもなるプラン。
 
・土地の多くを手放すことになるが、自宅やアパートの他、畑の一部を残せる。
・投資用不動産は小口化不動産を提案。小口化不動産であれば、管理や運用の手間がないため、不動産経営の経験のない娘さんたちでも安心して保有できる。
・相続税の納税財源には、一部残した畑を充てる。
 
 
■関連記事
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プラン③:保険による対策

土地には何も手を入れない。相続税の納税財源を確保するプラン。
借入金をするなどの土地の有効活用や売却に抵抗がある場合は、生命保険金を活用し、将来の相続税の納税や遺産分割で困らない対策を考える。
 
<詳細>
・子2人への先々の生活資金として、年金代わりに受け取れる生命保険信託も検討。
・遺産分割方針で子のどちらかに遺産額が傾くときは、代償金として生命保険の検討。
 
 
 
“土地を残したいという感情”を抜きにして考えると、最も相続対策効果が高いのは、プラン②の「畑の一部と駐車場を売却し、投資用不動産(小口化不動産)に組み換える」です。
 
税金のことだけを考えればプラン②を薦めますが、相続対策の提案で大切なことは、Aさんの「土地を残したい」というお気持ちと、ご家族のお考えをすり合わせていくことです。
 
 
まずはAさんに、相続対策プランを説明いたしました。
 
話を聞き終わったAさんは、「何パターンも提案してくれてありがとう。自分一人では思いつかない方法があるんだね。自分が土地を残したいという気持ちはあるけど、友重さんが言う通り、子どもたちがそれをしっかりと引き継いでやっていけるのか、直接話を聞かないと分からないね」と仰っていました。
 
Aさんからは、「家族には、自分ではなく友重さんから話してほしい。家族の考えを聞いてもらいたい」とのお願いがあったため、後日、ご家族の皆さんを交えてお話する機会をいただきました。
 
 

 親と子の思いを合わせる

親子
 
Aさんご家族とお会いし、同じように相続対策プランについて提案し、相続する土地等の資産や提案内容について、ご家族の率直なお気持ちを訊きました。
 
長女様
「アパートの経営は全く分からない」
「土地を残されても、正直どうしたらいいのか分からない」
「お父さんお母さんの生活と、先々の私たち姉妹の生活のお金のことまで考えられるなら、上手に資産を活用して欲しい」

 
次女様
「アパート1棟くらいなら管理会社に任せつつ、何とかできるかもしれない」
「お父さんが畑を続けたい気持ちがあるから、それを叶えられる提案なら何でもいい」

 
奥様
「主人が好きな畑仕事ができるくらい土地は残してほしい」
「主人にもし何かあったら、私が代わりに対策を検討したり実行するのは難しいので、資産を組み換える提案をして欲しいと思う」

 
ご家族の話をじっと聞いていたAさん。
初めてみんなの気持ちが聞けた気がする。具体的な提案があったからと思うけど、私が思っていた以上に、アパート経営や土地に対する不安があることが分かったよ。気持ちや考えを整理したいから、ちょっと時間をください」とお話しされました。
 
 
そして、ご家族への説明会から1ヶ月が経った頃、Aさんから、「決断したよ。土地を売却して組み換える!」とご連絡がありました。
 
お金の心配をせずに豊かに暮らしたいという奥さん。
出来れば違う資産で残してほしいというお子さんたち。
 
本当にこのまま土地を有効活用しながら残していくことが家族のためになるのかと考えた上でのご決断でした。
 
「正直、寂しい思いはあります。でも、家族の笑顔や残してほしいものを残すことが一番だと私は思いました。売却するのはOKだけど、畑はちょっと残してね!」
 
畑を一部残しつつ、納得して高く売却ができる弊社独自の限定入札を実行し、無事に売却。都心部にある小口化不動産に組み換え、遺言や納税のことなどもちゃんとケアをして、Aさんの相続対策は完了しました。
 
 

 気持ちの折り合いをつける

気持ち
 
手放した土地には、新築戸建てが建築されました。Aさんは、購入し移り住んできた方へ、畑で取れた野菜をプレゼントするなど交流があるようです。
そして、土地をどのように残すかなどの不安がなくなったことで、子どもたちとも話す機会が増え、元気に畑仕事に打ち込んでいるようでした。
 
今回のケースは、家族の相続や資産などの考えを聞いた上でAさんご自身が気持ちに折り合いをつけたため、結果として相続対策を進めることができました。
 
プロサーチの経験上、アパートの建築提案など、相続対策の効果があることはわかっているものであっても、自分(親)だけで考えているうちは、悩むばかりで一向に相続対策は進みません。
ご相談者様の多くは、「子どもがどのように思うか分からない」「子どもにとって良いものを残してあげたい」と仰いますが、実際にお子さんと資産や相続に関する具体的な話ができているご家族は少ないです。
 
その最たる理由は、「何をどのように伝えればいいのか分からない」「自分の考えも定まっていないのに話せない」というものです。
ですので、専門家からどれだけ素晴らしい提案を受けても、セミナーでどれだけ良い話を聞いても、結果的に行動には移せずにいるのです。
 
プロサーチではこれまでの経験から、お客様本人(親世代)のお気持ちのみならず、ご家族(子世代)のお気持ちも踏まえた相続対策の提案を、家族会議の場に同席してご家族の皆さんが分かりやすいような言葉でお伝えする、ということを丁寧に行っています。
 
相続の専門家として一番大切なことは、「対策の効果」ばかりに着眼することではなく、お客様の「気持ち」をしっかりと聴いて寄り添い、提案に落とし込むこと。
そして、それを踏まえた上で、ご家族全員のお気持ちの整理を行うことなのです。
 
 

 遺産相続コンシェルジュより

 
本記事のポイントはこちら。

・どれだけ良い提案、得になる話を聞いても、親だけでは相続対策は進まない。子の気持ちを聞き、自分(親)の気持ちとの折り合いをつけることが必要である。
 
・相続の専門家として大切なことは、お客様の気持ちを聴いてそれを相続対策の提案に落とし込むことと、家族全員の気持ちの交通整理を行うこと。

 


お客様は大抵の場合、私たち専門家の扱い方を知りません。目の前の専門家が、何をしてくれる人なのか、何を相談できる人なのか、お客様が見極めるのはなかなか困難です。
そして、専門家同士も普段付き合いがあるものの、相手にどこまで相談できるのか、意外と分かっていなかったりもします。
 
相続の手続きのスペシャリストはたくさんおりますが、これからは『家族の気持ちの交通整理』までしてくれる専門家が重宝されるでしょう。
専門家である自分自身がお客様に何を提供できるのかの洗い出しはもちろん、お付き合いしている相続の専門家が何をどこまでしてくれるのか、確認することは大切です。
 
その理由は本記事でお伝えした通り、お客様が「気持ちの折り合い」をつけるためには、私たち専門家が必要だからです。
もし皆様のお知り合いに、不動産相談+相続相談+家族間の交通整理までできる専門家がいらっしゃらないときは、ぜひプロサーチまでお問い合わせください。(記:友重孝一朗)

 
 

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