必ず訪れる「実家どうする?」問題。売却や処分、賃貸の注意点をプロが解説

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必ず訪れる「実家どうする?」問題。売却や処分、賃貸の注意点をプロが解説写真

更新:2021.10.19

 
将来親から実家を相続するとき、保有し続けるか、売却するのか考えたことはありますか?
 
相続は何度も経験することではないので、どうしたらいいか分からず先延ばしにしてしまっている方も多いと思います。
 
しかし、相続したあとに実家が空き家状態になってしまうと、5つの問題とそれによる税負担が増えるリスクが潜んでいます。
 
そこで本記事では、空き家が抱えるリスクと、保有し続けるときと売却するとき、どのようなことに注意したらよいかについてお伝えします。空き家の将来的な問題を把握し、今のうちから対策を練ることができるように準備しておきましょう。
 
 
今回のポイントは以下の通りです。
 

・空き家には、倒壊、空き巣、浮浪者や動物の住み付き、放火、樹木等の越境放置の5つの問題がある。
 
・建物の管理状況が悪化すると、固定資産税の実質負担増加となる。
 
・保有継続には、自分や家族が住む、賃貸する、一時的に保有するなどがある。そのときは、火災保険、建物管理のレベル、相続税評価額の引き下げ対策などを確認する。
 
・売却時は、相続空き家の3,000万円控除、取得費加算の特例、低未利用土地等の特別控除などを知り、適用期限内の売却を検討する。

 
 

 空き家状態の実家におこる5つの問題

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実家が徒歩圏内にある、車で5分の距離にあるなど、定期的にいけるのであれば大きな問題となることは少ないでしょう。
 
しかし、電車や飛行機を乗り継いでいくような距離にあると問題が発生する可能性が高いです。なぜなら、遠方にあると定期的な実家の管理が難しくなり、放置してしまいがちだからです。
 
実家の管理を放置すると次のような問題が起きます。
 

 1.建物や壁、門扉などが倒壊する

普段から使っていないと建物などは急に老朽化が進みます。地震や強風で建物等が倒壊したり、屋根の瓦が飛んでいったりします。そのような事が起きて、建物の一部が人や物にぶつかり、怪我や最悪亡くなることもあり得ます。
 

 2.空き巣

家電や家具、金品類等を盗まれたり、部屋中を荒らされたりする可能性が高まります。もし先々賃貸や売却しようと考えているようでしたら、荒らされた箇所をリフォームするために費用負担することになります。また、犯罪などに利用されることもあるでしょう。
 

 3.浮浪者や動物の住み付き

浮浪者はもちろん、ハクビシンなどの動物が住み付くことで、フンや体臭による悪臭や病原菌をまき散らすことになります。追い出しや駆除には専門業者や法律家に頼むことになるので、ここでも費用負担が生じるでしょう。
 

 4.放火

空き家状態で放火され、延焼などにより他に被害が及んだ時は、火災保険の適用外となる可能性があります。実家が燃やされるだけでは終わらず、所有者責任があることは重々知っておくべきでしょう。
 

 5.樹木等の越境

庭がある空き家状態実家は、樹木の越境にも注意です。草木の成長は思っている以上に早く、気付くとお隣さんの敷地へ侵入しています(越境といいます)。お隣さんからも苦情があるでしょうし、枝葉の除去や除草等の費用も負担することになります。
 
このように空き家を放置すると色々な問題が降りかかってきます。
さらに、税金面でも負担増となる可能性があります。
 
 

 空き家を放置すると税金が上がる?

上昇やじるし
 
平成27年に『空家等対策の推進に関する特別措置法』が施行されました。
 
周辺環境へ悪影響があったり、倒壊の恐れがある等の空き家に対して、固定資産税の軽減特例を外す、つまり負担増とさせる法律です。
 
まず、区役所等がそのような空き家を『特定空家等』と認定し、管理状況を改善するように空き家の所有者に対して指導や助言、勧告がなされます。
 
それでも必要な措置を取らない場合は、固定資産税の住宅用地の特例が適用除外となり、固定資産税が増額することになります。
 
この住宅用地の特例を簡単に言うと、更地のときの固定資産税が12万円としたら、その更地に家を建てて住むと、固定資産税が6分の1、つまり2万円くらいになります。住んでいて多額の固定資産税を負担させるのは大変だからと、住宅用地は固定資産税が安くなるのです。
 
特定空家等と認定されても改善されなければ、この適用を除外する、つまり元の更地と同じ12万円に戻されるのです。
 
固定資産税を多く払わなくてもよいようにきちんと定期的に管理し続ける必要がありますね。
 
それができない場合には、単に解体すればよいのでしょうか。
 
いいえ、建物を解体したからといっても、結果として固定資産税が安くなるわけではありません。
 
建物を解体し更地状態で1月1日を迎えると、更地として固定資産税が課税されます。つまり、住宅用地の2万円ではなく12万円がかかります。
 
ですので、相続する実家について、建て替え等で保有するのか、駐車場等として貸して賃料収入を得るのか、売却するのかを決めておく必要があります。
 
 

 実家どうする!? 所有継続編

家屋
 
実家をリフォームしたり、建て替えたりして使うか、方針が決まらないから取り敢えず維持しておくなど、色々と考えることがあるでしょう。
 
自分や家族が住む、賃貸する、一時的に保有する場合についての注意点を解説します。
 

 自分や家族が住む

相続した人やその家族がそのまま住み続けること自体に何ら問題はありません。ただし、相続した実家が老朽化している場合は、リフォームしたり、建て替えるということもあるでしょう。
 
親が定期的に建物や設備のメンテナンスをしてきた記録があるかどうか、をまずは確認してください。このような記録があれば、必要なリフォームなどが分かりますから費用も抑えることができるでしょう。
 
記録がなければ、リフォーム会社等に建物や設備の状況調査を依頼し、必要なリフォーム等を検討しましょう。できれば1社ではなく2社から3社程度に見積もりをお願いすることをご推奨します。人が調査しますからどうしても見落としてしまうこともありますし、その結果、リフォーム内容の過不足があるからです。
 

 賃貸する

実家を有効活用し、賃貸収入を得るというとき、大きく2つパータンがあります。
 
1つは、建物を貸す。もう1つは、土地を貸すということです。
 

 建物を貸す

建物を貸すときは、賃貸計画をしっかりと立てることが重要です。
 

(1)貸すためのリフォームや建て替え費用
(2)賃貸マーケット調査と、賃料査定
(3)毎月かかる維持管理費と、突発的にかかる修理費などの支出

 
この3つの項目をまずは洗い出し、空室率や賃料減額の推測などを考慮して、キャッシュフロー表を作成します。もし、思ったようなシミュレートとならないからといって、賃料収入や支出を単にいじってはNGです。リフォーム内容の見直しや、賃料UPとなるような差別化など工夫しましょう。
 
実家を貸すときのポイントはこちらにまとめています。
空き家の実家、どう活用する?賃貸する前に確認しておきたい3つのポイント

 

 土地を貸す

次に、土地を月極駐車場やコインパーキングとして貸すときには次のことに気をつけましょう。
 

(1)建物を解体した場合:固定資産税がいくらになるのか確認する

更地になったときの固定資産税額を把握しておくと、コインパーキング等でいくら以上収入を得る必要があるのかわかります。駐車場収入−固定資産税額で、収入がプラスとなるようでしたら安心して実行できますね。
 
確認先は、お住まいの地域の区役所等の固定資産税課のご担当者です。『建物を解体し更地になると固定資産税が幾らになるか教えて欲しい』と聞いてみてください。その時は、毎年お手元に届く固定資産税納税通知書を必ず持参してくださいね。
 

(2)コインパーキングで貸す場合:複数の事業者に「いくらで借りてくれるか」を聞く

どうしても借りて欲しい好きなコインパーキング事業者さんがいるのであれば別ですが、事業者によって賃料や条件は結構変わりますので、しっかり比較検討することをお勧めします。
 

 一時的な保有

「相続したけど、今から半年間から1年後に売却しようと思う。火災保険契約を解約しても良いのかな」とよくご相談を受けます。このような一時的な保有の場合、火災保険や維持管理についての考え方についてお伝えします。
 

1.火災保険

火災保険契約を解約する前に、加入しているその保険が万が一のとき保険対象となるのかどうか、必ず保険会社へ確認するようにしてください。
 
空き家状態の実家に、もし本記事の5つの問題が起きた場合、火災保険がおりない可能性があります。“住んでいることが前提”であるため、住んでいない場合は、人にではなく物に対する施設賠償保険など違う保険となることがあります。火災保険がおりなかったでは済まされません。
 

2.維持管理

庭の手入れ、部屋の換気、水道や電気が付くかどうか、床のきしみ、カビや白アリ、戸締り、侵入者の有無、越境していないかどうかなど、維持管理一つとっても多岐にわたります。
 
近くに住んでいて時間的余裕を作れるのでしたら維持管理できると思います。しかし、遠方に住んでいて管理が難しい場合は、空き家の管理業者等に委託することになるでしょう。
 
費用はエリアや委託内容によって異なりますが、月一回の巡回管理+敷地と建物内のチェックで月額7,000円~10,000円というところが多いようです。またシルバー人材による空き家管理もあるようですから、併せて確認してみてはいかがでしょうか。
 
このように保有継続するときも、色々と気にしなければならないことがありますね。保有継続のことで迷ったときは、不動産のことを総合的に判断してくれる専門家に相談することをおすすめします。
 

 実家どうする!?売却編

住居

 
実家を売却するときのポイントは、まず売れる物件なのかどうかを確認することです。
 

 1.不動産マーケット、不動産査定

ニーズがあるのか、競合物件の条件などの周辺マーケットを調べます。競合が多ければ、条件や売り方を工夫する必要があるでしょう。これらを所有不動産の価格査定を基に組み立てます。
 
ニーズがなく、売れない場合のことはこのあと解説します。
 

 2.売却時期

相続した空家を売却するとき、譲渡税が安くなる2つの税制があります。
 

相続空き家の3,000万円控除”の特例

相続があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すると、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。簡単に言いますと、売った時の譲渡税が最大で600万円抑えられます。
  

取得費加算の特例

相続税を支払っている場合に使えるのですが、例えば、相続税が1,000万円とし、そのうち実家を相続するために支払った相続税が200万円とします。相続があった日の翌日から起算し、3年10ヶ月までに譲渡すると、この200万円を経費(取得費)として計上することができ、譲渡税を安くすることができます。
 
この2つは選択制で、どちらかしか適用できません。売却するなら相続の日から3年以内に売ると税金が安くなる可能性があると知っておきましょう。
 
なお、この2つこの特例は、他にもいくつも適用要件がありますので、必ず、税理士や最寄りの税務署に確認するようにしてください。
 

 3.売却方法

不動産の売却を不動産仲介会社に依頼する場合、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3つの契約形態があります。相続で売却する場合や、近隣の方に知られずに売りたいとき、面倒なことは任せたいなど、それら希望に合った媒介というものがあります。
 
詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
不動産の媒介契約とは?相続した不動産を売るときに最適な契約方法をプロが伝授!

 

売却がスムーズにいくときは、このような方法で進めていきます。しかし、売れない、貸せないという状況だったら?もしかしたら本記事冒頭の「空き家の実家の5つの問題」がおこるかもしれません。そうなったら困る状況になりますよね。
 
売れないような不動産がある場合、相続放棄という手段がありますが、特定の資産だけではなく全資産を放棄することになるので、よく考えて選択しなければなりません。
 
相続放棄の他には、引き取り事業者による有料引き取り、令和5年を目途に創設される相続土地の国庫帰属(有料)があります。この2つは、相続放棄と異なり、処分したい実家だけを引き取ってもらうことができます。
 
詳しくはこちら。
【2021年】相続した土地を放棄できる制度が創設。どうなる土地問題?
 
寄付という選択肢もあります。しかし、寄付先が地方公共団体の場合、財務的な余裕があることや、寄付する実家が公共施設として活用できるのかなどの視点でみられます。私の経験上、寄付を受け付けてくれるかどうかはかなり厳しいでしょう。
 

相続した空き家状態の実家が抱える問題と、保有継続と売却の2つの選択肢について解説してきました。それぞれのポイントを押さえて、空き家問題に直面した場合に後悔しない判断ができるようにしておきましょう。
 
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 まとめ

 

・空き家となった実家には、倒壊、空き巣、浮浪者や動物の住み付き、放火、樹木等の越境放置の5つの問題がある。
 
・建物の管理状況が悪化すると、固定資産税の実質負担増加となる。
 
・保有継続には、自分や家族が住む、賃貸する、一時的に保有するなどがある。そのときは、火災保険、建物管理のレベル、相続税評価額の引き下げ対策などを検討する。
 
・売却時は、相続空き家の3,000万円控除、取得費加算の特例、低未利用土地等の特別控除などを知り、適用期限内の売却を検討する。

 
 
実家をどうする問題は、お伝えしたとおり建物を解体したり、ずっと委託業者に管理させるだけでは解決しません。賃貸するのか売却するのか、今回の記事ではそれぞれ注意すべき点をお伝えしました。
 
ご家庭ごとに事情も異なるでしょうから、話をしっかり聞いてくれて、賃貸や売買の両方に精通し、相続も詳しい不動産の専門家にご相談することをご推奨します。
 
 
 

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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

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